カスタマーレビュー
こんな大作を94分に収めた手腕に敬意を表して 仁義の墓場 [DVD] 渡哲也
冒頭のナレーションが終わると戦後の闇市のシーンが展開されるが、この画面のスケールに先ず圧倒されるだろう。
この後で石川力夫(渡哲也)の行動が元で組同士一触即発でにらみ合うシーンがあるがここでもスケールの大きな画面が見られる。
それから終盤、四面楚歌となって、警察からも全てのやくざ組織からも追われて篭城し、発砲しながら突っ込むシーンも凄い迫力だ。
一代記で尚且つ主人公がアウトローというかほとんど狂人っていうことで役所広司の『シャブ極道』やスケールの大きなやくざ映画ってことではスコセッシの『ギャング・オブ・ニューヨーク』なんかも思い出したりするけれども、このストーリーで普通に撮れば2時間30分を超えるのが当然だと思う。
しかしながらこの映画では1時間34分で収めちゃってる。
どう言うことが起きるかってっていると、とんでもなくクールでドライな作品になってしまった。
笑えるシーンは皆無だし、主人公は狂人だ。
多岐川裕美との奇妙な関係は説明が一切無いので、お互いにどのようにも思っていたのかは不明だし、同じく後半行動を共にするジャンキーの田中邦衛との関係も謎だ。
渡哲也の演技はサングラスも影響してると思うが、口数が数なく次の行動が全く読めないという意味で凄く恐ろしい人間に見える。
評価は最高にしておくが、とは言いながらも、全く不満が無いわけではない。
バイオレンスシーンが妙にぬるく感じる。
これは最近のタランティーノやジョン・ウーそして北野武の映画を観てしまったから言えるのかも知れないが、美しく描くでもなくさりとてリアルでもない暴力表現は、当時の映倫の関連もあるかもしれないが、凄く惜しいと思う。
深作版「(秘)色情めす市場」、現代やくざ映画の極北 仁義の墓場 [DVD] 渡哲也
現代やくざ映画は『仁義の墓場』で来るところまで来てしまった。この先にはもう何もない。『仁義なき戦い』シリーズの基盤には親分・子分、兄弟関係などの信頼関係を重要視する見方がまだあった。けれども、渡哲也演ずる石川力夫には仁義も兄弟も親子も信頼すべき人間関係というものが何も無いのだ。深作監督は本作で現代やくざ映画を葬ってしまったのだ。
敵だけでなく、味方も殺してしまう狂犬には、もはや誰も情けをかけるものはいない。石川力夫はどんどん廃人化していく。“狂気の廃人”、これほど救いのない主人公はいないだろう。共感することのできないヒーローを描いて、『仁義の墓場』は神話的傑作となった。
深作欣二監督はこの作品に入る前に田中登監督の『(秘)色情めす市場』に衝撃を受けている。そして、ほとんど白黒(ほんの一部パートカラー)で釜ケ埼のドキュメントのような『色情めす市場』の世界を、カラー作品で超えようとした。『(秘)色情めす市場』が積極的に堕ちていく女の映画だとすれば、『仁義の墓場』は堕ちていく男の映画であった。これが、『(秘)色情めす市場』に対する深作監督独自のアンサーだったのだ。
任侠道もヘッタクレもないやくざのアナーキーで無軌道な一生。傑作! 仁義の墓場 [DVD] 渡哲也
世界をマーケットとし、BD化への移行と昨今の経済不況も影響してか、アメリカ映画のDVD廉価化が進む一方で、一向にその動きが見えてこない日本映画のソフトの低価格化。その中で、東映が定期的に自社商品をお値打ちにしてくれているのは、取り合えず喜ばしい。今回も、深作欣二の屈指の傑作たちがラインナップされているのは、映画ファンには見逃せない処だ。
特に、今作は、言わずと知れた深作映画の金字塔的作品。「仁義なき戦い」シリーズを表の代表作とするならば、裏の代表作と評すべき傑作だ。
戦後混乱期の闇市、敵対組織や三国人たちとの抗争から、恩義のある実の親分にも兄弟分にも容赦なく手をかける。"やくざ社会からもはみ出してしまった"実在した鉄砲玉狂犬やくざ石川力夫。「大笑い、30年の馬鹿騒ぎ」と自らを詠んだアナーキーここに極まれりのひたすら堕ちていく極道人生を、猥雑なエネルギーを発散させながら描く。
何故に、そこまで破滅的で反逆者なのか、映画では最後まで語られないし、今見直しても、暗くて陰惨な生涯なのだが、その無軌道ぶりの陰に、瞬時に流れる切なさと哀れみが痛い。
多岐川裕美が可憐、安藤昇、成田三樹夫が場面をさらうが、シャブ中の芹明香がワン・シーンながら強烈な印象を残す。
渡哲也が、一世一代の狂気の名演。"焼き場の骨を拾い、それを喰らう"、映画史に残る名シーンだ。
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