カスタマーレビュー
最も静かな愛と反戦の映画かも知れない 母べえ 通常版 [DVD] 吉永小百合
本作品の主人公たちは皆、誰かを深く愛し、そして深く愛されていた。だから、戦争がなかったら、母べえはこの世で愛する父べえと一緒に幸せな人生を送れたはずだ。そしてまた、チャコちゃんも、ヤマちゃんも、みんな一緒に笑って過ごせたはずだ。
最近の山田作品では、特に最後の数分間に「愛」に関するメッセージがものすごく込められているように思う。本作品のメッセージは、親は子をちゃんと愛しているか、ということであり、同時に、子は親の深い愛を感じているか、ということだ。エンドロールで流れる、朝起きて出勤するまでの母べえの動きを観ながら、そして父べえのナレーションを聞きながら、そんなことをしみじみ考えた。
原作者が、また山田監督が意識したかどうかはわからないが、戦争・死のような極限状態を背景として使わなければ、現代人は愛の重みに気づくことができない、つまり、現代人の心、って、それだけ荒んだ状態になっているんだよ、ということを突き付けられているような気がする。戦争、という背景がなかったら、上述したエンドロールの重みは理解できなかったであろうと思う。
なお、吉永小百合さんは、凛として楚々として、素晴らしい存在感であった。でも、檀れいさんや浅野忠信さん(二人とも中々いい感じ)との絡みに、さすがに年齢的にちょっと違和感が漂っているように思えてしまったことも否定できない。
母の愛情を思い出させてくれる映画です。 母べえ 通常版 [DVD] 吉永小百合
山田洋次監督と吉永小百合さんという取り合わせは期待してしまいます。「男はつらいよ」のマドンナ役で吉永さんが出演された時は、シリーズの中でもとりわけ楽しい作品だったように思います。そういう期待を込めて見させていただいて、最初はちょっと違和感を覚えました。吉永さんの存在感が際立っているといいますか、山田監督の「いかにも」というディティールにこだわったホントらしい演出と上手くマッチしていないのじゃないかと感じたりしました。共演の坂東三津五郎さん、浅野忠信さん、壇れいさんなどそれは山田監督の演出らしい画面に溶け込むような感じを受けました。しかし、吉永さんだけは画面から少し浮き上がっているような印象をもちました。ところが、作品を見終わった後になって吉永さんの姿が頭にこびりつくといいますか、「母」の姿が瞼に浮かんできます。もしや、と考えたのは、山田監督はこういう演出をしたのではないか、と思います。吉永さんが演じた「母」は映画の中だけの母ではなく、観客全員の母なのだと思います。朝早くおきて、子供を心配し、家庭を守って、夫の死も悲しめず、近所づきあいを笑顔でこなし、何時休んでいるんだろう。夜目が覚めたとき、母親だけは縫い物をしていました。そういう母親の姿を山田監督は彫刻刀で刻むように観客の瞼に残すことを狙ったのではないかと思いました。山田監督は終戦を満州で迎えた引揚者だとお聞きしています。山田さんの心にある母の姿が吉永さんに乗り移ったのではないでしょうか。そして、静かな反戦映画です。大砲も爆音も登場しませんが、戦争というもので軍隊が凶暴になり市民を蹂躙してゆく様子が描かれています。
山田監督が伝えたかったことっていったい・・・・・・・・・? 母べえ 通常版 [DVD] 吉永小百合
とうに還暦を過ぎている吉永さんですが、幼子たちの母親を演じてもほとんど違和感を感じなかったし、
浅野忠信さんをはじめとするキャスティングもけっこうはまっていてなかなかよかったし、
どなたかが仰るような”監督の思いいれが空回り”しているような感じも受けなかったのですが…。
最後まで見終えても結局のところ、山田監督はこの映画で何を伝えたかったのが、
どうもよくわかりませんでした。罪もない市井の人々をも翻弄する戦争というものの理不尽さ、醜さなのか、
逆境にあっても強く生きる母親という生き物の(あるいは夫を信じ愛する妻の、あるいは女の)逞しさなのか、
はたまた意表をついて「敬愛・思慕と惚れた腫れたの情愛の相似性」なんてものなのか…?。
そんなわけで、ラストの母べえ臨終のシーンでは忌まわの際で「父べえにあの世でなんか会いたくない」みたいな
台詞もどう感動していいのかとまどっているうちにエンドロールが流れ出し、当惑するばかりの私でした。
フィクションです 母べえ 通常版 [DVD] 吉永小百合
原作・野上照代とあり、野上滋という父が出てくるから、誰だって実話だと思う。しかし実際は父はドイツ文学者、社会主義者の野上巌、筆名・新島繁で、思想犯として逮捕はされているが獄死はしていない。戦後1957年に56歳で死んでいる。虚構を実話だと思わせるのは感心しない。
そのことを差っ引いても、何と一本調子な映画だろう。現代の日本で、大東亜戦争は悪いことになっている。そんな中でこんな、「正義=思想犯」と「悪=戦争」の単純な対比で映画を撮るのは、実に安易なことだと言うほかない。そしてその安易さは、事実めかした虚構を原作にしたことと、無関係ではないのである。
父べえ、母べえ、鶴べえ 母べえ 通常版 [DVD] 吉永小百合
黒澤明作品のスクリプターとして有名な野上照代の自伝的小説『父へのレクイエム』を映画化。日中戦争から日米英開戦へ。日本の暗い時代を描いた反戦映画であることはまちがいないのだが、父べい(板東三津五郎)がいなくなった家を一人で支える母べえ(吉永小百合)のひたむきな姿を通じて間接的に反戦を描いた本作品は、万人に受け入れられやすい山田洋次ならではの演出が光っている。
思想犯としてとらえられた父べえをはじめ、人生=金という哲学をつらぬく奔放な叔父さん(鶴瓶)、絵の勉強をあきらめヒロシマに帰って被爆する妹(壇れい)、母べえをひそかに慕う堅物の書生・山ちゃん(浅野忠信)。一家と親しい間柄の人々がたどる悲しい運命を目撃した観客は、戦争に対する悲しみと憤りを吉永小百合演じる母べえと静かに共有できる仕組になっている。
新藤兼人のようにけっして声高に叫ぶことはないのだが、日常生活風景の中にさりげなく反戦メッセージをしのばせた演出は秀逸。“非合理的な事実に無関心でなくてはいけない嫌な時代”とは、もしかしたら現代日本にもあてはまる形容なのかもしれないが、この映画を見てそんな押し付けがましいメタファーを感じる必要はないだろう。
泳ぎの達者な吉永小百合のクロールシーンや合唱(ハモり)シーンなど、サユリストにはたまらないオマケまでも用意されたこの映画は、ジャパニーズ・スタンダードな作品がお好みの方にはもちろん、昭和のノスタルジーに浸ってみたい人、そして戦争について深く考えたい人にもおすすめできる、裾野の広さが魅力の1本だ。
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