奥村愛の固定ファンはもちろん、クラシック初心者にも好感されやすいCD。ジャンルを問わず、気軽に聞き流したい向きには良い。J−クラシックアイドルの役割は果たしているだろう(三十路間近、4歳の子持ちでアイドル扱いは憐れだが)。ただ、3000円の価値があるのかどうか。
奥村のいう「どクラシック」の曲は、抜粋曲を含め多く見積もっても3曲しかない。ソリストとして活動し、CDを6枚も出しながらコンチェルト(全楽章)の録音がないのは変わっている。ベスト盤でもないのに抜粋というのも珍しい。
指揮者はクラシックの指揮者というより、ゲームのサウンドトラックなどを手がける「マルチ」な人物。クラシックから幅を広げ、クラシックらしきモノに落ち着くパターン――奥村と釣り合いが取れているが、クラシックCDとして3000円の価値はない。また、奏者の自負する“クラシック畑”のフィドルは中途半端で、クラシックらしきモノだから3000円で良いというわけでもなかろう。
一方、ピアニストで作曲家の加古隆の参加は心強い。
「ポエジー」をグリーンスリーヴスの編曲と書いているレビュアーがいるが、正確にはそうではない。この曲は中間部のピアノと弦楽合奏が印象的で、奥村のヴァイオリンはむしろ脇役かも知れない。「黄昏のワルツ」はコンピレーションCD「image」等にも収録されているが、雑音が多い。この点は今回改善されている。ただし、新たな編曲が加えられ、今までの曲とは違う点には注意が要るだろう(個人的には原曲が良い。初めてこの編曲版を聴いたとき、編曲部を真面目に雑音かと思った)。「明日への遺言」は、オリジナルサウンドトラックにもオマケとして収録されている。
ボーナストラックの「愛のあいさつ」は、音源の違いによる音の違いが顕著。この曲は奥村周辺では代名詞的に使われているが、やめてもらいたい。
それにしても、「プライベートも充実して」などという宣伝文句は初めて見た。革新的なJ−クラ文句である。
Disc1
1.ポエジー(加古 隆)
2.リバーダンス(B.ウィーラン/石坂慶彦 編曲) キャスリーン伯爵夫人/妖精の女たち
3.リバーダンス(B.ウィーラン/石坂慶彦 編曲) 太陽を巡るリール
4.シェトランド・エア(スコットランド民謡/石坂慶彦 編曲)
5.バンジョーとフィドル(W.クロール/啼鵬 編曲)
6.ヴァイオリン協奏曲第1番:第2楽章(M.ブルッフ)
7.ガブリエルのオーボエ(E.モリコーネ/長生淳 編曲)
8.タンティ・アンニ・プリマ(A.ピアソラ/鷹羽弘晃 編曲)
9.明日への遺言(加古 隆)
10.黄昏のワルツ(加古 隆)
11.愛のあいさつ(E.エルガー)