カスタマーレビュー
”豪奢”を「知り過ぎる」ことは「幸福」とは言い切れぬもの 甘い生活 デジタルリマスター版 [DVD] マルチェロ・マストロヤンニ
ヘリで空輸されるキリストの像。「信仰」までもはや「物」と同様に扱う意味しか無くなったことの象徴のようです。
目も眩むような華やかで絢爛なローマを舞台に、アメリカ女優や、大富豪や、妖しげな人物達と、ゴシップ記者の主人公マルチェロが交わりつつがまるで酔いどれ船のように翻弄されていくというのが大筋です。
華やでありながら何処か腐敗臭の漂うような「退廃的な危うさ」を孕んだパーティーシーンや乱痴気騒ぎは、所々に東洋的なエッセンスが効果的に散りばめられ、日常の倦怠から逸脱するような妖しげな輝きを放ち、観ていて何故か恐いくらいに現実感がありません。
その後豪奢と退廃にまみれたマルチェロの前に「理想の指針」となるような堅実で非の打ち所のないような、古くからの友人が登場しますが、その友人は、自身の家庭の「完璧な平和」を自らそれを崩壊させてしまうかのように、家族を巻き込んだ衝撃的な自殺を遂げます。
絶望を絶望で塗りたくって全てを消しさるような乱痴気騒ぎで夜を明かし、マルチェロは朦朧とした意識のまま夜明けの浜辺に彷徨い出て、自らが幾度も味わい、浸り続けた「腐敗と崩壊の象徴」でもあるかのような、巨大なおぞましい「エイの死骸」を引き揚げます。
海岸でかつて出会った少女が、マルチェロにに語りかける意味は何なのでしょうか。マルチェロは、少女の言葉を聞き取ることもままならぬまま仲間と去ってしまいます。そしてそれを見送る少女の微笑みの一点の濁り気も無い無垢な美しさ・・・・。
結局人は、何かを「知り過ぎる」ことは「幸福」とは言い切れぬものであり、その「知り過ぎる」代償によって受ける心身の腐敗は、第三者から見た「甘い生活」などとは程遠い「凄惨なもの」であり、我々を蝕むだけのものでしかないと言っているような気がしてなりません。
観終わった後、「エイの死骸」と「少女の微笑」が目の裏側で幾度も幾度も交錯し、呆然としてしまいました。
恐ろしい作品です。
見所満載!! 甘い生活 デジタルリマスター版 [DVD] マルチェロ・マストロヤンニ
【ネタばれ注意】
冒頭の、宙吊りにされてヘリで運ばれる
巨大なキリスト像、そしてそのヘリから
洗濯物を屋上で干している女性をナンパする
マルチェロ・マストロヤンニ!!
有名なトレビの泉のシーンなどなど・・・・
数々の印象的なシーンが満載の、
すばらしい映画。
作品は文句なし 甘い生活 デジタルリマスター版 [DVD] マルチェロ・マストロヤンニ
デジタルリマスター版という言葉に期待をこめて購入しました。
東北新社のものと比較すると確かに映像の質は幾分高いです。
フィルムの傷は軽減され、色調も黒がマイルドになっています。
しかし気になった部分として、パッケージ裏に
本編167min ん? 174分じゃない?
どうやらPAL盤のNTSC変換のようです。
確かにいわれてみれば少しせわしないような気もしました。
次にもとのマスターが原因なのかもしれませんが、
カットの切り替わりの時に一瞬すごい量の傷が発生して画面に雨が降ります。
古い作品ということも考慮すれば仕方ないんでしょうが。
81/2への習作 甘い生活 デジタルリマスター版 [DVD] マルチェロ・マストロヤンニ
この作品を作った時点で、フェリーニは恐らく既に苦悩していたのだろう。作りながら、この物語をどこへもっていったらいいのかはっきりわかっていなかったのではないだろうか。封切り当初はそのスキャンダラスな内容と、ニーノ・ロータの音楽で欧米では大評判になった作品であるが、そのスキャンダル性を失った今、この作品は凡庸なばかりか、退屈である。
むしろ、この作品は名作81/2への習作と考えると興味深い。81/2こそが、名匠フェリーニの最高傑作であり、映画史上、芸術史上、語り継がれるであろう名作であるからである。
映画史の流れを変えました 甘い生活 デジタルリマスター版 [DVD] マルチェロ・マストロヤンニ
“甘い生活”はやはりフェリーニ一世一代の傑作であり、その後の映画の地平を大きく斬り拓いた画期的な作品だったと思います。 この映画のスタイルを模倣した作品はその後無数に作られ、現在でも作られ続けていますが、そのアイデアの革新性とテーマの大きさにおいてこれを凌駕する作品は未だにないと思います。
まずこの作品には起承転結のストーリーというものがありません。 それよりも同じ登場人物たちが繰り広げる複数のエピソードを繋ぎ合わせて、そこから一歩距離を置いて見ると作品全体のテーマがパッチワークのようにして見えてくる−という構成になっています。 こういう手法は前例がないわけではありませんが、はっきりとそれを意識して映画を作っていった監督としてフェリーニの右に出る人はまずいないでしょう。 彼がそのパッチワークで描いてみせたテーマはズバリ、大量消費社会に生きる私たち人間の姿−その不安、滑稽さ、不可思議さそのものだったのだと思います。 作家志望なのにゴシップ記事を書いてそれなりに甘い生活を楽しんでいる主人公。 演技力ゼロのグラマーなスターに群がるパパラッチの群れ。 身を焦がす愛に生きたくてもそうなれない宙ぶらりんなセックスライフ。 成功しているように見える登場人物の原因不明の自殺。 心は空虚でも街に出るとそこは夜毎のドンチャン騒ぎ。 宗教ももはやエンターテイメントの一種。 この内容を1960年という時点で映像化して見せたというのはまさに天才のひらめきだったと思います。
ラスト、海辺にうちあげられた醜悪な怪魚を見つめる主人公に、天使のような少女が向こう側から何か一生懸命語りかけます。 しかし彼には彼女が何を言っているのか聞き取れません。 もはや天使の声は人間には届かないということなのでしょうかー。 映画の楽しみ方は人それぞれですし、古典的作品を見なければならない、などと言うつもりもないのですが、まだ未見の方がいましたら−これを見逃す手はありませんよ。
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