エディターレビュー
アメリカが大不況に陥っていた1930年代、ヒッチハイクや貨物列車のただ乗りで旅を続ける歌手の青年ウディ・ガスリー(デヴィッド・キャラダイン)は、ラジオ出演したことから人気を高めていくが、やがて布教の現実を目の当たりにして社会意識に目覚めていく。 『帰郷』『チャンス』のハル・アシュビー監督が、実在のプロテスト・ソング・シンガーの半生を描いた音楽伝記映画の秀作。当時TV『燃えよカンフー』のイメージが強かったD・キャラダインが、ここでは『怒りの葡萄』のヘンリー・フォンダをも彷彿させる名演と歌を披露し、新境地を開いている。ハスケル・ウェクスラーによる映像美(アカデミー賞撮影賞受賞)もすばらしく、ある意味メッセージ性の強い作品であるにもかかわらず、視覚的な感動がそれを緩和させ、ガスリーの名曲ら(レナード・ローゼンマンがアカデミー賞歌曲・編曲賞受賞)とも合わさって、人間ドラマとしてすがすがしいものへと導いている。(増當竜也)
カスタマーレビュー
ハル・アシュビー&ハスケル・ウェクスラー&デビット・キャラダインによる、放浪の吟遊詩人の魂の物語。 ウディ・ガスリー わが心のふるさと [DVD] デヴィッド・キャラダイン
誠実で力強く、美しい映画だと思う。アメリカが最も貧困に喘いだ時代に、全国を放浪しつつ、無垢の民に勇気と希望を与えたフォーク・シンガーとして、ボブ・ディランに、"私にとって、最初で最後のHERO"と呼ばれたウディ・ガスリー。今作は、彼が故郷のテキサスを離れ、"夢の街"カリフォルニアで見た苛酷で厳しい現実を契機に、プロテスト・シンガーとしての道を毅然と歩き始めるまでの人生に焦点が当てられている。資本家や農場主に劣悪な労働条件と安賃金、否、誇大募集で集められ、職にも就けず、行き場もなく、移民キャンプで野宿暮らしをする人々に、団結とストライキ、ユニオン結成を呼びかけるウディ。でも、本当に感動的なのは、そんな階級闘争的な部分よりも、その誇り高さと平等心と正義感、そして民衆への連帯感(仲間意識)が、静かに、しかし脈々と熱く流れている処だ。ホーボーやヒッチハイク(それは、家財道具一式を詰込んだおんぼろトラックであったり、荷車であったりする)、時にはひたすら広漠した大地を歩きつつ(WALKING,TALKING)放浪を続けるシーンの安穏さ、知り合う仲間たちとの、束の間の友情(恋愛)と別れの潔さを観て欲しい。ラスト、NYに向かう列車に飛び乗るウディの姿に重なる"ディズ・ランド・イズ・ユア・ランド"の歌声に、ウディ・ガスリー本人の魂の叫びに痺れます。吹き替えなしで歌とギターをこなしたデビット・キャラダイン、全編フラッシングを掛け、1930年代の大恐慌期のくすんだパステル・タッチの色調を捉えた、名カメラマンハスケル・ウェクスラー(恐らく、この作品は、映画が誕生して以来、多分最初で最後であろうオープニングのクレジットで、撮影監督が真っ先に紹介される!)と共に、ニューシネマを代表するハル・アシュビーによる、これは70年代の屈指の秀作。
アメリカの大恐慌時代を背景に吟遊詩人の感性を物語るドラマ ウディ・ガスリー わが心のふるさと [DVD] デヴィッド・キャラダイン
ウディ・ガスリーというと「フォーク音楽の父」。民族の中で長く伝えられていた歌などを、社会一般に広げた活動的な芸術家と言っていいかもしれない。
1930年代の大恐慌時代の反体制的シンガー・ソングライターで、ボブ・ディランやブルース・スプリングスティーンなどに影響を与えた。
僕は、この映画を大学時代に観た。
当時は、吉田拓郎やかぐや姫などが絶頂の頃。その時期に、「フォーク音楽の父」の自伝的映画に触れた事は、大きなことだった。僕も毎日、ギターとハーモニカを吹き気取っていたが、アメリカの過酷な自然と社会問題について考えたこともなかった僕は、ウディの生き方に非常な感銘を受けた。
映画では、長い貨物列車の上で、ギターを弾くウディの姿。吟遊詩人ウディ・ガスリーのこの物語は、自伝「ギターをとって弦をはれ」の映画化で、必見の価値があります。
何度でも見たい!素晴しい感動に巡りあえる ウディ・ガスリー わが心のふるさと [DVD] デヴィッド・キャラダイン
米国映画には二つの相反する文化が同居している。一つはスーパーヒーローがゴリラ人間のごとく活躍する系譜、もう一つの系譜は「悩めるアメリカ」でもがく普通の人間を描くものだ。ジョン・フォードの「怒りの葡萄」などから連なる、後者の系譜中、最も輝きを放つ傑作の一本が本作である。フォークの父と呼ばれるウディ・ガスリーは、今や偉大な人物=ヒーローに違いないが、飲んだくれるし、適当に浮気もする、普通のおっさんだ。だが、心の芯はいつも熱い思いに溢れた人だった。彼をここまで突き動かしたのはやはり「義憤」。最初はただの失業者、そしてしがない看板絵描きから、ギター一本片手に、移動労働者として全米を渡り歩いた。大不況期の1920〜30年代に、労働組合のオルグとしても活躍し、常に貧しい労働者側からの歌を歌い続けた。米国の激動期を背景に、図らずも時代のヒーローとなった人物の一代記を描く、ニューシネマ監督ハル・アシュビーのタッチはあくまでも優しく、名手ハスケル・ウェクスラーによるの撮影は今や、この映画の一場面一場面を「古典」の領域に高めている。何回でも見て、何回も反芻したくなるような、心に滲みる映画。見るたびに、「本当にいい映画を見た」と素直に感じられる、希有な傑作である。
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