エディターレビュー
フランスの奇才、フランソワ・オゾン監督による異色のラブストーリー。あるカップルの離婚、いさかい、出産、結婚、出会いという5つの瞬間を描くのだが、時をさかのぼっていくという斬新な展開だ。 マリオンとジルのカップルの愛の軌跡には、衝撃的なエピソードが織り込まれる。離婚届を出した直後のセックス、結婚式当夜の危険な誘惑…。唖然とする出来事の数々は、愛の複雑さを熟知したオゾン監督作ならでは。これらのエピソードは、愛する人には決して言えない人間の本能的な行動であり、観る者の心の奥底を刺激するのだ。 その強烈な描写を、優しくオブラートのように包むのが、バックに流れる心地良いイタリアンポップスで、このあたりにもオゾンの映画作りの巧妙さを感じさせる。過去に戻るにつれ、表情やヘアメイクで若くなっていく主演ふたりの好演も必見だ。そしてラストシーン。いつまでも観ていたい美しさの向こうに、ふたりの未来が予感され、絶品! ハリウッドのラブストーリーを見慣れた人には少々毒気が強いかもしれないが、これこそが人間の本質、これこそが愛の真実に近い映画である。(斉藤博昭)
カスタマーレビュー
洗練されすぎたラヴ・ヒストリー ふたりの5つの分かれ路 [DVD] ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ
ジルとマリオン。2人の出会いから離婚にいたるまでのの5つのエピソードを、時系列に遡った実験的な作品。オゾンは2人の離婚の原因を探る一つのミステリーとして提示したかったようだが、はたしてその試みが成功したかどうかは疑問である。何気ない2人の仕草や会話が崩壊を予感させるある愛の軌跡を描いた映像はオゾンらしい倦怠をたたえており、エピソードとエピソードをつなぐヨーロッパPOPSも音楽センスを感じるキッチュな選曲だ。
そのまま時系列に並べたら面白くもなんともない男女の別れ話を、逆さまに並べ直したアイデアは買うが、もうひとヒネリがほしかったというのが正直な感想だ。『スイミング・プール』で観客に見せてくれた見事な<ダマシ>を期待していただけに、本作品のあまりのもあっけないラストシーンには逆に騙された感じがしたくらいだ。
ホモの兄ちゃんお相手が実はジル(だんな)の昔の恋人だったとか、ニコラが別の男の子供だったり、マリオン(奥さん)の母親が育児恐怖症だったりというオチは一切存在しない。あまりにも洗練されすぎたストーリーは、濃ーいのが好きな田舎者の自分にとっては、なんとも物足りない味付けだった。
人生はワンウェイ ふたりの5つの分かれ路 [DVD] ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ
美しいラストシーンに救われました・・・そう思わざるを得ない、僕には少し重い映画でした。
5つの別れ路の先には単純に32の結果があり、この夫婦が選んだ1/32の結論が、その中で良かったのか悪かったのか。一歩足を踏み出せば、もう戻ることができない時間。選んだ路を行くしかない人生を、一組の男女の別れを起点に、出会いまでの5つのエピソードを遡っていく。
男と女。どちらが強く、どちらが正しいのでもない。誓いあった何ものにも永遠などという約束はない。フランス的な頽廃を、静かに、でもしっかりと背景に見せながら、生きることや愛することの哀しさを語っているのでしょうか?
「やり直せないか?」答えを知っていながら、問いかける男。何も語らず、ドアを閉じる女。
彼らはもう6つ目の分かれ路を過ぎていたのです。
全ての男女にみて欲しい、醜さを抱えてもなお限りなく素晴らしい恋愛の美しさ ふたりの5つの分かれ路 [DVD] ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ
昨年札幌シアター・キノで見た時の感激を今も覚えています。私は性分なのか経験故か、ほろ苦い味わいの恋愛ドラマが好きなのですが、「それでもなお素晴らしい恋愛の美しさ」を描いて一段上を行っています。最後の夕景は本当に美しくて、我々はこの恋人達の行く末を知っているはずなのですが、手放しで二人の前途を祝福できるのです。近作『ぼくを葬る』でもそうでしたが、オゾン監督は最後の海のシーンで「希望に満ちた次なる段階」への予兆を描くことが多いようです。
丹精に作られたこの作品には採録されなかった数多くのシーンがあり、別の印象の作品となり得る可能性を秘めていたことがDVD特典から知れます。特に驚いたのは幻のプロローグが存在し、新婚当時の二人の幸せいっぱいの姿が描写されていたということです。このシークェンスは実に素晴らしくて削除されたのは余りに惜しいですが、残したらやっばり混乱があるでしょうね。こんな正に特典と呼べる情報が散見して、この映画をこよなく愛する人には必携のDVDになっています。
そしてこのプロローグのカットに如実に示されていますが、監督は男女の恋愛というものをかなり悲観的に(もっと言えば「露悪的に」)見ているようです。離婚してもなお体を求め、出産にジルは意図的に立ち会わず、結婚式のその夜にマリオンは他の男性に身を任せ、そして出会いは他の人間の絆を断っていくことで成り立つのです。そのことは老夫婦やジルの兄と恋人との挿話の中でも仄かに、しかし印象的に描かれるのです。思えばF.オゾン監督が男女の恋愛というものをこれほど美しく描いたのは初めてだったような気がします。その醜さ・不道徳性を知るからこそ美しさも描けるのではないでしょうか。彼こそ現代フランス映画のトップランナーです。
〈追伸〉マリオンの父役の人をどこかで見たことがあると思っていたら『ジャッカルの日』の刑事役の方でした! 威厳ありますね。
わかれ路はなぜ見えなかったか。 ふたりの5つの分かれ路 [DVD] ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ
ひと組のカップルの出会い〜恋〜結婚〜出産〜すれ違い〜離婚。その軌跡を斬新な手法で綴った作品。離婚調停をオープニングに、ふたりの別れという結末がどこにあったかを、過去の5つの時間を逆へ逆へと辿っていく。
フィリップ・ロンビのスコア(既成曲もスコアのように!)をバックに、ふたりの俳優がある意味淡々と、しかし激しく演じる。ヴァレリア・B=テデスキはイタリアはトリノの名門出身。その素朴な顔立ちが印象に残る。
オゾン流の思いつき一発アイディア? ふたりの5つの分かれ路 [DVD] ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ
この映画が編集の映画ではない証拠に、オゾンは5つのエピソードを時系列にさからって(つまり観客が見るのと同じ順序で)撮っている。とくに3つ目とそれ以降の間には3か月のブランクがあり、主演のふたり(ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ、ステファン・フレイズ)は本当に若がえっているかのようだ。イタリア語の懐メロを基調にして恋愛の軌跡を逆順に並べるという、オゾン流の思いつき一発アイディアで始めたところまではよかったが、5つの別のフィルムを撮るという単純な困難に途中で立ち往生したのではないだろうかと邪推してしまうのは、後にいくほど出来がよくない気がするからだ。
自分で映画も撮るヴァレリア・ブルーニ・テデスキはなかなかの演技派で、芝居の流れの中でとても魅力的な表情をするので、目を離せない。
妻の出産から逃げようとする夫の心理は、初夜に別の男と関係する花嫁の心理と同程度には、わかるような気もする。
最新レビュー ふたりの5つの分かれ路 [DVD] ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ
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