エディターレビュー
村上春樹原作の同名短編を、市川準監督が映画化。ジャズ・ミュージシャンの息子として生まれ、「トニー」という名を付けられた主人公がイラストレーターとなり、仕事先の編集部員、英子と結ばれる。幸せな結婚生活で唯一の問題は、英子が次々と新しい洋服を買うという依存症だった…。イッセー尾形がトニーを淡々と演じ、英子役の宮沢りえも、言いようのない焦燥感を絶妙に表現する(彼女は妻の“身代わり”となる女性と2役を好演)。 ゆっくりと左方向へ動いていくパン(水平移動のカメラワーク)が心地よい。トニーの幼い頃の生活から、仕事、結婚生活と移りゆく日々が、走馬燈のように画面を流れていく。カメラと被写体の距離感は、市川監督の『病院で死ぬということ』を思い出させる。西島秀俊のナレーション、坂本龍一作曲のピアノ曲など、多くの要素がマッチした映像世界が伝えるのは、孤独であることの哀しさと心地よさの二面性。結局、人間は死ぬまで独りであると納得させられながらも、それはそれで辛いのだという思いが、ふつふつと湧き上がってくる。(斉藤博昭)
カスタマーレビュー
原作が好きだから穿った感想だと思いますが トニー滝谷 プレミアム・エディション [DVD] イッセー尾形
カメラが右に動きながら
ロングでループし続け
ナレーションで描写説明。
ちょっと退屈な映画ではあります。
ある意味村上春樹の文章世界を
最大限リスペクトしたつくりかたなのかとも思えなくはないのですが。
イッセー尾形のダルさ加減と
宮沢りえの戸惑い加減や透明感が見事です。
純文学としての映画。 トニー滝谷 プレミアム・エディション [DVD] イッセー尾形
原作は村上春樹氏。と聞けばイメージが浮かぶかもしれません。監督の市川準さんは、村上作品の持つ、詩的なイメージと言いますか、内省的な面、一人称独白体、日常に潜む微かな非日常性を映像化するに当たり、優れた手法、アイデアを生み出したと思います。キャスティングも絶妙と言いますか、イッセー尾形氏、宮沢りえさんの配役もピッタリです。坂本龍一さんのピアノに沿って、イメージ映像のように切り替わってゆく画面で進行してゆくトニー滝谷の物語。宮沢さん演じる洋服中毒の理想の妻が印象的です。ベタな表現ですが、物凄く綺麗です。以前、ヌーベルバーグの時代にこういう手法はあったかな、と頭をよぎりましたが、そのあたりで連想は止まりました。実験手法といえるかもしれませんし、イッセー尾形さんの一人芝居にも似た感じともいえます。純文学としての映画と呼べるとも思います。ただし、この新鮮な感覚を支えるものは演出の意外性にあることは間違いないと思います。
追悼市川準監督 トニー滝谷 プレミアム・エディション [DVD] イッセー尾形
『トニー滝谷の本当の名前は、本当にトニー滝谷だった。』
冒頭シーンに入る朗読に似たナレーション。村上春樹さんの作品が持つ独特の空気を
体現している事に驚き、うれしくなった。
息子にトニーと言う風変わりな名前を付けるジャズマン
滝谷省三郎(イッセー尾形の二役。)の描かれ方が抜群に良い。
戦前の上海で一瞬の名声を得て居た時と、全て喪い捕虜収容所に入れられ
『そこでは生と死のあいだには、文字どおり髪の毛一本くらいの隙間しかなかった。』と
呟いてからの表情やセリフ回しがガラッと変わっている。
父親に向かない男に放任されたまま、生まれながらの孤独と喪失を抱えて育つ息子トニー。
イッセーさんが学生時代からの彼を演じて居るのも、
世界から隔絶され独り老成してしまわざるを得なかったトニーの内面が
上手く表されているように思う。宮沢りえの好演も素晴らしい!!。
彼女が登場した途端、画面が明るく輝き出す。『トニー滝谷の人生の孤独な時期は終了した。』
その言葉がピッタリ当てはまる程の存在感。洋服を着るために生まれて来たかの様に、
とても自然に服をまとう女性。しかも、洋服に向ける熱情が暴走し、
遂には手当たり次第に高級ブランドの服を買わずには我慢が出来なくなって行く女性。
この難しい役を堂々と演じ切った彼女に拍手を贈りたい。
この彼女の熱演がなかったら、終盤におけるトニー滝谷の埋めようのない空白と、
欠落を引き受けての再生への意思表明も質の違う物になってしまっただろうから。
原作に対する最大限の敬意と愛情が伝わってくる作品です。
二つを見比べるのも発見が有り面白いと思います。
小説と音楽に追随・萎縮した映画 トニー滝谷 プレミアム・エディション [DVD] イッセー尾形
市川準が監督と知り全く見る気の起こらなかった今作。原作は、今『ノルウェイの森』の映画化が物議を醸しておりますが、映画化されたのはこれと『風の歌を聴け』のみという「容易に画が浮かぶのに容易に描かれない/描けない」物語ばかり書く村上春樹。
結論から言えば、落胆。春樹の小説と教授の音楽に追随しただけの、萎縮した映画にしか思えなかった。
清潔で冷静であるがゆえに、「無菌状態の」虚無や孤独や絶望を湛えた主人公――そんな春樹作品の主人公をイッセー尾形は見事に体現しているし、宮沢りえもまた、「服を着るために生まれてきたような」女を見事に体現している。
紛れも無い日常であるのに現実味を幾分欠いた、「あの」空気感を出すために、教授の音楽に饒舌に語らせ、西島秀俊の味気ない語りによって小説の一節を何度も映画に介入させ、挙句劇中の登場人物にもしゃべらせる。そして映画はトニー滝谷の半生の記憶を、早回しのダイジェストのように、時折屋内にいるのに印象的に吹いている風のように、なぞっていく、だけ。
これを実験的手法といえばそれまでだし、監督の原作への愛が凄い伝わってくるといえばそうなんだろうけども、はっきり言えばそれがどんなにつまらないことかをこの作品は証明してしまった。解釈と再現が、あまりにも乖離してしまっているから。
どうしても原作のファンは怒るんだけど、監督には窮屈な再現に縛られることなく解釈にとことんこだわって欲しい。
優しい雨のような映画。 トニー滝谷 プレミアム・エディション [DVD] イッセー尾形
雨です、、なぜか自然に、、この映画を、、、部屋の大きな窓を開けて、、窓の近くで観ました。
今日はとても湿度が高く、でも涼しく、でも、涼しい中にも夏へ向かう力というか優しさがあり、
大粒の雨が沢山降っていて、雨音が庭の木やデッキにあたる音が、この映画のように心地良かったからです。
まるで、映画の空気感に包まれたような静かな優しい一日でした。
坂本龍一のピアノも今日の雨音に合い、ほんとに、映画の中に入ってしまったような感覚でした。
別にキリスト教徒ではありませんが、、ピアノ曲が、何故かアベマリアと聞こえます。
不思議な充実した一日をありがとう。
雨はまだ、やさしく、降り続けています。
今日の雨は、きっと育みの雨ですね、、、きっと、、、
トニー滝谷とあの女性も愛情を育みあうのでしょう。
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