エディターレビュー
山田洋次が監督デヴューを飾った、シスター・ピクチャーと呼ばれる低予算中編映画の一編。もとは推理小説だった多岐川恭の同名小説をコメディとして映画化。その新人離れした堅実な演出ぶりは、高く評価された。 新築した家の二階を、借金返済のため若い夫婦(平尾昌章,関千恵子)に間貸しするサラリーマン夫妻(小坂一也、葵京子)だが、家賃を滞納気味な下宿人の行動が腑に落ちない。ふたりをなかなか追い出せないでいる夫だが、ある日彼の母親(高橋とよ)が上京し、投宿している間に二階の住民と仲良くなってしまう。 小坂一也の不器用で情けないサラリーマンが同情を誘う。本作ではその情けないサラリーマンを試すかのように、様々な試練が続発する。後年の山田作品に見られる、主人公を試すかのような加虐性が早くも現れている。上映時間56分という尺ながら、きっちりと計算された無駄のない演出は確かに堅実と評されるにふさわしいが、新人らしい弾けたところがないあたりは物足りなさを感じる。この点は山田も後年反省したようだが、その堅実さこそが山田洋次の作家性を牽引したのもまた事実。(斉藤守彦)
カスタマーレビュー
デビュー作で示唆された人生の真理 二階の他人 [DVD] 小坂一也
山田洋次監督の記念すべき第1回監督作品。 「人は人、我は我、されど仲良し」という言葉が好きだ。 1組目の下宿人とは距離感が近すぎたことが「上手くいかなかった」要因の1つだと思う。 2組目の住人とは、結果的に別れとなってしまった出鱈目なクリスマスパーティ、そしてその後の送られてくる書簡に分かるように、「人は〜」という「距離感」で「良い付き合い」になったんじゃないかと思う。 それだからこそ、ショパンの別れの曲と、ジングルベルマーチがちぐはぐに響きあう、あのメチャクチャな組み合わせが、アルゼンチンタンゴのようにアンニュイに響く。それは人生の哀しみに裏打ちされた一瞬の歓喜だ。 「人生がずっとこうだったら楽しい」という下宿人の妻の台詞は印象的だ。人間の「生」は一瞬一瞬の積み重ね、しかし現実の「人生」は先々を見越していかねばならない。 それが日常の積み重ねとして重くのしかかる。けどその「重み」を痛感しているからこそのあの台詞なのだ。 昭和30年代のいわゆる新開地の描写が、この時代を生きていない私には面白い。高度成長勃興期で、ああいうつつましい生活に若夫婦は希望を持てたのか。 時代背景をやっぱり感じる。
最新レビュー 二階の他人 [DVD] 小坂一也
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