数多ある西部劇の中で個人的にはNO.1に位置づける名作中の名作。DISK 1には我々が知っている劇場公開版が収録されているが、問題は DISK 2。何が問題かというと、劇場公開前に試写でしか上映されなかった「試写版」が収録されているからだ。「試写版」は監督のフォードの意図に沿って編集されているのだが、当時の20世紀フォックスの大プロデューサーのD・F・ザナックが気に入らなかったために、何箇所かの撮りなおしと音声等の修正を命じられた(しかも撮り直しは別の監督によって行われている!)。具体的にどこを撮り直したかは観てのお楽しみとしておきたいが、ラストシーンは大いに味わいが異なる。どちらが好みかは人によって評価が分かれるであろう。ちなみ私は「試写版」を支持したい。
大監督のジョン・フォードといえども一介の雇われ監督である以上はプロデューサーには逆らえない。そしてザナックの修正命令は結果的に「試写版」をより魅力的にしているから正しい。そのことからあらためて当時のプロデューサーの眼力と権威を思い知るわけである。
DISK 1の副音声にはかつてTV放送された日本語吹き替えが、さらに DISK 2の副音声にはフォードの伝記作家とワイアット・アープの子孫の
解説が入っている。これって二粒で四度おいしいですね。私は常々
国内版のDVDは値段が高いとおもっていましたが、本作に関しては安すぎる、というのが実感です。
西部劇に縁のなかった世代にも、(ガッツ石松以前から)
OK牧場という単語は記憶している、超有名な作品。
伝説のガンマン、ワイアット・アープとドク・ホリディの
間に流れる男の友情。クレメンタインへ子どものように心を
ときめかせる姿。クラントン一家とのOK牧場での死闘。
そして、全てを包み込む雄大な西部の風景。
「クレメンタイン、あなたの名前が好きです」とだけ告げ
て、アープは町を去っていく。まるで中学生のような、もど
かしすぎる愛の告白。邦題の「荒野の決闘」は、当時の西部
劇ファンに対するウケを狙ってそうつけたのだろうか。
物語の主題は、原題(マイ・ダーリング・クレメンタイン)
のほうにあることは、印象的なラストシーンが証明している。
アープの人物像には、ジョン・フォード監督流の「男の原像」
のようなものが投影されている。
有名な「オヤジ、恋をしたことあるか」「生涯男一人です」
のセリフにも陳腐さはかけらもない。ことあるごとに店を滅茶
苦茶にされるかわいそうな酒場の親父にも、西部の男の持つ矜
持がある。まさに男の美学。
有名なOK牧場の決闘も、ガンガン打ち合うわけでもなく、
わりとあっさりと決着がつく。アープがどれほど凄腕かという
のが、ホリディへの誤解で生じた決闘シーンでわかるぐらい。
動きよりも心理描写とカメラワークで緊張感を表現している。
カバーにもなっている、荒野を望みながら椅子に腰掛けるシ
ーンに、開拓時代の西部に生きる孤独を感じて実によい。