エディターレビュー
『サンライズ』こそ、もっともすぐれたサイレント映画だという向きがある。いや、あらゆる時代を通じてもっともすぐれた映画だとする向きもある。こういった意見には激しい反論もあるが、ひとまずこの映画を観てもらいたい。何はともあれ、比類ない映像美にあふれ、清らかな魂が描かれている作品だと思うはずだ。田舎で暮らす夫婦が村から都会へ出てまた戻ってくるというどこにでもありがちなこの物語は、『吸血鬼ノスフェラトゥ』『最後の人』を撮ったドイツ人監督、F.W.ムルナウがドイツからアメリカに渡ってきて初めてハリウッドで監督した作品である。 ドイツ時代のムルナウは、何気ない日常が化け物に取りつかれたように見え、突拍子もない映像でありながら現実感は決して失われていない映画を撮っていた。そんな彼にハリウッドは技術的な資源を提供して彼ならではの創作力を発揮させ、対するムルナウは移動撮影、構図などすぐれたカメラワークを披露してハリウッドの黎明期に貢献した。沼地での散歩、湖のさざ波、森を抜けて都会へと走る路面電車に乗っている場面を、あなたは忘れないだろう。『サンライズ』は映画術を定義する作品なのである。(Richard T. Jameson, Amazon.com)
カスタマーレビュー
現代では通用しない、賞味期限切れサイレント映画 サンライズ クリティカル・エディション [DVD] ジャネット・ゲイナー
1928年度キネマ旬報ベストテン第1位であり、各種の映画レビューで賞賛され、上記Amazonの
商品説明でも「もっともすぐれたサイレント映画だという向きがある」などと紹介されている
約80年前のこの作品ですが、、、もはや賞味期限切れと言わざるをえません。
その理由は、主人公の夫妻の行動、特に夫の行動が、あまりに唐突で不可解だからです。
・夫は、浮気相手の女にそそのかされる。 たったそれだけの理由で、妻を殺そうと企む。
・妻は浮気に気づいている。 夫は、ずぅ〜っと暗い表情のまま。 なのに妻は一途なまま。
・殺されかけて逃げた妻を追って捕まえた夫は、「怖がらないで」などと身勝手なお願い。
・妻は、そんな夫をあっさり許す。
これらの行動は、現代に生きる我々にとって到底理解できるものではありません。
その行動に至るまでの背景や理由が描かれていれば映画として成立するとは思いますが、
そのような心理描写もなく、ただ、自分勝手に行動する夫に対し感情移入できるはずもなく、
また、そんな夫に、あんなに可憐で美しい妻が別れもせずついていく理由も描かれていません。
この映画は、「男尊女卑」が通用した時代の産物です。 現代では通用しません。
これを今時の女子高生が観たら「何この男? キモ〜い」のひと言で終わりでしょう。
この夫、美容院で妻にちょっかいを出した男性客に、ナイフで切りかかったりもするんですから。
当時としては美しい映像であったろうし、所どころ印象に残るシーンもあるし、妻を演じた女優の
可憐さには惚れ惚れするし、決して悪い映画ではありません。 がしかし、本質的なところで
人間が描けていないこの映画に対し、上記Amazonの商品説明は、あまりに過大な評価でしょう。
チャップリンの普遍性、ルビッチの洗練さとは、比べようもありません。
観客の望む結末 サンライズ クリティカル・エディション [DVD] ジャネット・ゲイナー
アメリカ映画協会AllTimeBest 82位 (2007年)
クラシック映画、古典の名にふさわしい
良い意味でも、悪い意味でも。
チャップリンやキートンなどのコメディ、アクションなどの
分かりやすいものであれば、サイレントでもそれほど違和感なく楽しめるが
この映画はシリアスな人間ドラマ。現代のドラマに慣れた人からすると
ちょっと違和感がある。
音楽にしても文学にしても映画にしても
古典というのは、ある程度の”慣れ”というか素養が必要だ。
よく、古典を紹介するときに”いま見ても面白い”などの表現を使うが
時代に淘汰されず現代まで残ったものを古典というのだから当たり前だ。
ただし、言葉通りに受け取ってはいけない。
現代の音楽や文学、映画がテクノロジーや文化と共に進化しているわけだから
その差分を無視して、“分かる人”ぶって古典を推薦するのは傲慢な話だ。
この映画はいろんな要素、サスペンスやコメディなどが詰め込みすぎてて
マジメな人間ドラマにしては唐突にシーンが変わりすぎて忙しい感じがする。
それが当時の、観客に対するサービスだったのだろう。
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田舎で暮らしの男が、都会の悪女に誘惑され不倫する。
その悪女にそそのかされ、一緒に都会に行くために妻を殺そうとする。
実際には殺しきらずに、そのことで夫婦が仲直りし新婚の頃を思い出す。
しかし、意外な形で当初の目的は果たされる。
嵐になって、妻が遭難してしまう。
都会からの悪女がそれを聞きつけて、一緒に都会へ行こうと
男の家に訪れるが・・・・
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観客が望む結末というのはハッピーエンドだろう
しかしそれと、物語の評価、価値は一致しないだろう。
あしたのジョー にしろ
ロミオとジュリエット にしろ あれがハッピーエンドだったら
心に爪痕を残さないし、作品の評価、価値もぐっと下がるだろう。
この作品も悲劇としての結末の方が
人間の愚かさや、日常的な愛の素晴らしさがより鮮明な形で伝えられる気がする。
美しい!! サンライズ クリティカル・エディション [DVD] ジャネット・ゲイナー
トリュフォー曰く『世界一美しい映画』。。ウ〜ム納得。古典的名作と言われると構えてしまいがちですが、全くそんなことはありません。とっても愛くるしく、大切にしたい映画です。とかくサイレントは敬遠されるようですが、これをきっかけにいろんなものを観たいなと思わせてくれます。まさに珠玉の名作という言葉がぴったり!!
重厚な大傑作としてではなく サンライズ クリティカル・エディション [DVD] ジャネット・ゲイナー
この映画は凄い。まずはこれしか言えないが、本当だ。だが、ここで尻込んではいけない。 F・W・ムルナウという何やら聞きなれない、名前からしていかにも偉そうな人が撮った、サイレント映画の金字塔的作品。こんな形容が間違っているわけではもちろんないが、これではどうもあまりに真っ当すぎる名作のようで、見る前からお腹一杯になってしまいそう。 だが、この映画から受ける印象は寧ろクエンティン・タランティーノのキル・ビルに近いのだ。映画史の初期に作られたというのに、既に映画の紋切り・定型・雛形のあらゆる形がノスタルジックに放り込まれていて、はっきり言ってストーリーなど二の次、真面目に話を追っていけば脳みそ爆発のとんでも映画なのだ。 マーケティングを意識してラブコメ・サスペンス・どたばた・スペクタクルが適度にちりばめられたハリウッド映画は数多くあるが、このハリウッド映画は気迫が違う。ヒッチコックばりの抽象心理描写で妻殺しのサスペンスを盛り上げたかと思えば、何故か今度はその妻と胸が痛くなるほどの純愛モードに突入する。そしてホークス並みの人物配置でスクリューボール・コメディをやったかと思えば、何の前触れもなく「キートンの蒸気船」に匹敵する大嵐がやってくる。語っているだけでアホらしいが、それぞれのシーン、それぞれの演出がとてつもなく美しく、笑いに逃げようなどというみみっちい姿勢は一切ない。 サンライズは重厚な大傑作である以前に、こんな愛すべき作品なのだと思う。
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