『DIRECTORS LABEL スパイク・ジョーンズ BEST SELECTION』を見ると、何でも起こり得て、実際に起きてしまう世界へ一歩踏み込むことになる。『マルコヴィッチの穴 』や『アダプテーション』らを手がけた天才ディレクターのミュージック・ビデオ、ドキュメンタリー、インタビュー、初期の貴重な作品を集めたこの作品集は、ジョーンズが斬新なアイデアと革新的な方法を持つ大物の映像作家だという何よりの証拠である。コレクターにとっては、40以上もあるジョーンズのミュージック・ビデオのうち、たった16作品しか収められていないことが残念かもしれないが、どの作品にもジョーンズの特徴や溢れんばかりの才能がよく表れていて、これ以上はないものばかりだ。ビースティ・ボーイズの人気パロディ番組『Sabotage』や、フィルムの逆回転が効いたファーサイドの『Drop』から明らかなように、ジョーンズはユニークな街頭劇を好んでいて、ファットリップの悲喜こもごもをつづった『What's Up Fatlip』や、ポップスとジャズがにぎやかに混在したビョークの『It's Oh So Quiet』にもそれが表れている。技術力の高さもジョーンズの特徴で、『Happy Days』をフィーチャーしたウィーザーの『Buddy Holly』や、クリストファー・ウォーケンが軽快にダンスするファットボーイ・スリムの『Weapon of Choice』などは手が込んでいる。その技術の高さは素晴らしく、これらの映像はいずれも何らかの賞を受賞してもおかしくないほどのもので、難しい技術と楽しもうという気持ちが一緒になったジョーンズの傑作である。52ページの冊子つきのこの両面DVDには(ミシェル・ゴンドリー、クリス・カニンガムの同じく傑作を集めたDVDと3部作になっている)、彼の芸術的な挑戦も見られ、珍しい映像や3つの30分ドキュメンタリーなどもあるが、それが一番顕著なのが、ファーサイドを脱退後のファットリップに対するユニークなインタビューだ。これらのミュージック・ビデオは、ジョーンズの、「自分が本当にその作品を敬愛するアーティストにしか、ベストの作品を作らない」という信念に支えられた価値のあるものばかりだ。彼は、自分の楽しみを皆に伝えてくれているのだ。何とラッキーなのだろう。(Jeff Shannon, Amazon.com)
2004年リリース。DIRECTORS LABELシリーズの第1作目として発売された。今や『マルコヴィッチの穴』や『アダプテーション』でアカデミー賞ですら手が届きそうなスパイク・ジョーンズの始まりがここに集められている。
観ていてひねりの効いた演出に感心してしまうものばかりだ。僕が得に好きなのは、ファットボーイ・スリムの『Weapon Of Choice』でスゴイ踊りを披露しているクリストファー・オーケン。絶対ホテル・ヴェルサーチで撮影していると思われるノートリアスB.I.G.の『Sky's The Limit』。そして、ケミカル・ブラザースの『Electrobank』。でもそれ以外も見逃せないものばかりだ。
なお、ブックレットの表紙の写真は桃井かおりに見えますが実はビョークです。ご注意。
私は90年代を通して洋楽のプロモーションビデオをコレクションし続けてきたのですが、確かに90年代の半ばに映像作家の新旧交代があったようです。ゴドレ&クリームやJ.B.モンディーノ、S.バロンらが80年代を代表するクリエイターであるなら、M.ゴンドリー(ビョークの“Human Behavior”の衝撃は忘れられません)やジャミロクワイの“Virtual Insanity”を撮ったJ.グレイザーが活躍し始めて90年代的ミュージックビデオが完成したものと思われます。前時代以上にアーティストの創造の一部分として参画している姿勢が強い映像作家達の登場と言うことになります。
そしてこのS.ジョーンズです。彼の名を知ったのはやはり『マルコビッチの穴』でしたが、その後から「ああ、あの作品もこの作品も彼が監督していたんだ」と再発見しました。名作は多いですが私の一番のお気に入りはケミカルブラザースの“Elektrobank”です。90年代最先鋭アーテイストの楽曲が新体操アスリートの肉体表現にこれ程マッチしているという驚き。実演者とコーチと監督の精神的紐帯がひしひしと感じられる温もりある作り。そして何と言っても元妻ソフィア・コッポラが実演する肉体の躍動感。当時猫も杓子もCGで糊塗した人工的画面をPVで展開していた中にあって、「やっばり根源はここなんだよ」と感嘆したのを覚えています。
現在の映画界は90年代PV界の才能を投入していますが余り成功しているとは言えません。PVと長編映画では別個の才能が必要なのだなんてよく言われますがそうではないと思うのです。それは監督のコントロールが効くか効かないかという、組織の規模と圧力の問題なのではないでしょうか。長編映画は作家性を殺され妥協を余儀なくされる恐ろしい世界なのです。S.ジョーンズも近作の噂を聞きませんが、元妻の様にミニシアター系の佳作を撮ると良いのでは。もしくはもはや退潮気味のPV界に再び息を吹き込んで欲しいです。
正直、自分がこの作品を評価できるほどの判断力や批評力があるかわからないが、いい作品だと思う。ノリで買ってしまった。もともとファットボーイズスリムが好きで知ったんだけど、スパイク・ジョーンズについてはさっぱりだったし。でも、感じたことはアメリカ人らしいなと思った。すんげ〜自由で自分の表現したいものをそのまま表現してる。今だと作品にどれだけ金をかけたとか、いい役者さんをつかってるとか、そんな理由で注目されたりするじゃない。もちろんそういうことも重要だけで、特筆すべきは、その作品の内容でしょって俺は思う。だから自分の表現したものをそのまま表現してる彼の作品にはすごく共感できる。
Disc1
1.California(ワックス)〈ミュージックビデオ〉
2.Sure Shot(ビースティ・ボーイズ)〈ミュージックビデオ〉
3.Sabotage(ビースティ・ボーイズ)〈ミュージックビデオ〉
4.Drop(ファーサイド)〈ミュージックビデオ〉
5.Cannonball(ブリーダーズ)〈ミュージックビデオ〉
6.Da Funk(ダフト・パンク)〈ミュージックビデオ〉
7.What’s Up Fatlip(ファットリップ)〈ミュージックビデオ〉
8.Undone(The Sweater Song)(ウィーザー)〈ミュージックビデオ〉
9.Buddy Holly(ウィーザー)〈ミュージックビデオ〉
10.Praise You(ファットボーイ・スリム)〈ミュージックビデオ〉
11.Weapon Of Choice(ファットボーイ・スリム)〈ミュージックビデオ〉
12.Feel The Pain(ダイナソーJr.)〈ミュージックビデオ〉
13.If I Only Had A Brain(MC 900ft ジーザス)〈ミュージックビデオ〉
14.Sky’s The Limit(ノトーリアス B.I.G.)〈ミュージックビデオ〉
15.Elektrobank(ケミカル・ブラザーズ)〈ミュージックビデオ〉
16.It’s Oh So Quiet(ビョーク)〈ミュージックビデオ〉
Disc2
1.〈ショート・フィルム〉「How They Get There」/「Mark Paints」/「The Oasis Video That Never Happened」(実現しなかったオアシスのビデオ)/「Rockafella Skank」(リチャード・コウフェイ出演ファットボーイ・スリムのためのオーディション・テープ)/「The Woods」(ガール・スケートボード「Mouse」より)〈ドキュメンタリー〉「What’s Up Fatlip」/「Amarillo By Morning」/「Torrance Rises」\〈映像特典〉[1]ビョーク,ビースティ・ボーイズ,クリストファー・ウォーケン,ケミカル・ブラザーズ,ダフト・パンク,ウィーザー,ファットボーイ・スリム 他による音声解説/ミュージシャン+キャスト インタビュー/メイキング ファーサイド「Drop」/関連作品予告篇集