原作はあえて見ない。初めて見たときあまりに衝撃的で受け入れがたかった。美しいけどこわかった。でも時期もたって改めて見るとなんて素直な恋愛映画なんだろうと思った。主人公の拓也の願望は周りだけではなく自らも残酷に苦しめるゆがんだ感情。普通の恋愛への理想は誰もが抱く憧れ。好きなときに好きな相手の傍にいられる。それだけでいいと思っていた。かなえばそのゆがんだ願いも消えると・・・でもどうしても消せない、相手に虐められたい。偶然の出来事からそのゆがみを知ってしまった紗月はわたしは普通の恋愛がしたいだけ、異常!変態!と拓也を激しく罵り、自分が傷ついた分だけ拓也も傷つけようとするがそれは互いの想いをよけい募らせる。そのやりきれなさからエスカレートしていく紗月の加虐性。どんなにどんなに酷いことを命じても傍にいられるならとなんでも服従する拓也の自分への強い想いを痛感した紗月は全てを受け入れていく。こんな愛情がほんとの愛情なのだろう。運命というのだろう。この作品に出会えてよかったと思う。
文学的な美しさが溢れる傑作だと思う。
原作者・喜国氏は「マンガで谷崎潤一郎をやりたかった」と原作のあとがきに記しているらしい。映画を観た後だと、十分に納得。
原作は読んでいないので比較は出来ないけれど、
主演の水橋氏(拓也)とつぐみさん(紗月)の演技に震えた。
何せ後半のふたりは、完全に倒錯した感情を持っている。
下手したら厄介なストーカーと化しそうな拓也だが、紗月を見つめる目は一貫してとても優しい。どんなに虐げられても、とても純粋な思いだから。
一方の紗月は、展開によって少しずつ少しずつ、変容していく。
「恋する普通の女子高生」の顔だったのが、次第に倒錯してゆく自分に気付き、戸惑い、拓也を虐め抜くところではもう完全に「女王様」の顔。
しかしクライマックスではそんな自分の苦しみをぶちまけて、完全に「取り乱す女」。
だがラストシーンでは、「全てを受け入れた聖母のような微笑みの女性」。
・・・セリフの少ないシーンも多いのに、表情と身体の演技力でこの変容を確実に表現しきったつぐみさんは、凄すぎる。
むろん、それを引き出す脚本と演出があってこそなのも言うまでもないけれど。
皆さんあまり触れていませんが、剣道部の先輩・植松さんの存在はかなり大きかったと思う。彼の「一般的な恋愛感覚」と触れたことで、紗月は拓也への思いに気付いたはずだから。
そしてスピッツファンの自分としては、この主題歌『運命の人』はベストマッチだと思います。
爽やかなだけじゃなくて、エロティックで屈折していて 心が切り裂かれるほど切ない歌だから。
「愛する」ということと「受け入れる」ということ、そして「運命」というものは全てそれぞれ繋がっているんじゃないか?
・・・そんなことを思った作品。それが自分にとっての『月光の囁き』でした。