カスタマーレビュー
変はり行くプラハの町で ショスタコーヴィチ:交響曲第5番 アンチェル(カレル)
チェコは自由な国に成った。その事は、もちろん、喜ぶべき事である。だが、気に成る事も有る。1989年に共産主義政権が崩壊して数年経った頃、或るチェコ人が、その時既に、プラハから、古い町の雰囲気が失はれつつある事を憂えて、こんな事を言った。−−「数年前、プラハの古本屋で、カフカが父親に宛てて書いた手紙が発見された事を知って居る?プラハの古本屋とは、そんな素晴らしい宝物が見つかる場所だったのよ。ところが、今、プラハから、古本屋が消えつつあるの。代はりに、増えて居るのは、みやげ物屋やハンバーガーショップなの。・・・かつて、共産党の時代、共産主義者たちは、チェコの文化を変えようと努力したわ。でも、あらゆる物を変えた共産主義者たちが、結局、チェコの文化だけは、変える事が出来無かったの。ところが、その、共産主義者たちが変える事の出来無かったチェコの文化が、自由に成った今、変わり始めて居るの。皮肉な事に、共産主義者たちの支配が終はった今、そんな事が、起き始めたのよ。・・」−−このCDには、チェコが共産主義政権の支配下に在った1961年、チェコの大指揮者カレル・アンチェルが、チェコ・フィルを指揮して演奏したショスタコーヴィチの交響曲第5番が収められて居る。素晴らしい演奏である。第4楽章のコーダが速い事だけは頂けないが、そんな事も、殆ど気に成らない超名演である。中でも、第1楽章の深い悲しみと、第2楽章の、ショスタコーヴィチの自嘲の様なメロディーの流れは素晴らしい。周知の通り、ショスタコーヴィチの交響曲第5番は、ショスタコーヴィチが、共産党の厳しい批判の中で、書き上げた作品である。だから、この曲には、ショスタコーヴィチの心の秘密が、隠されて居るに違い無いのである。そのショスタコーヴィチの第5を、アンチェルとチェコ・フィルの音楽家たちは、この時(1961年)、どんな気持ちで演奏したのだろうか?上のチェコ人の言葉で言へば、この演奏は、チェコ人達が、共産主義者達からチェコの文化を守ろうと、静かな戦いを続けて居た時代の遺産なのである。−−この素晴らしい演奏を残したアンチェルは、1968年、ソ連軍が、「プラハの春」と呼ばれた自由化を弾圧する為にチェコスロヴァキア(当時)に軍事介入した際、祖国を去り、カナダに亡命した。そして、1973年、異国の地で他界した。そのアンチェルは、今、天国で、祖国に起きて居る変化をどう見て居るのだろうか?(西岡昌紀・内科医)
知る人ぞ知る、やろうけどもショスタコ5の史上最高の演奏! ショスタコーヴィチ:交響曲第5番 アンチェル(カレル)
チェコフィルといえば、ラファエル・クーベリックやヴァーツラフ・ノイマン、ズテニュク・コシュラーと、スメタナらお国ものを中心にゴツい演奏を聴かしてもろうた。が、本盤のカレル・アンチェルはんは知らんかった。廉価盤で最近出会うことができ、人生の出会いの妙を感じとります。まず録音のよさ。1961年の演奏やのに、数十年後の東京文化会館のバーンスタインやロストロポーヴィチ-ナショナルSOの録音よりええのはどういうことでっしゃろ?わてのデノンDCD-1650SR+B&W704から、分離のよい弦が立体感よく浮き出るような音像を形成しますがな。目隠しして聴くと、ウィーンフィルと区別が付かんです。次に演奏のクオリティ。東京文化会館のバーンスタインは悠然として壮大、スケール感もあって、何度か聴き較べたんですけども、どうしても本盤に軍配を上げたい。どしてかいいますと、ショスタコヴィチ5番は純音楽としてのスケール感よりも、1.凍てつくような厳しい自然/人間性の阻害 -> 2.冷えきった、グロテスクでニヒルな嘲笑の炸裂 -> 3. 悠久を想わせるような深い深い冷えきった、えぐるような寂しさの連鎖の究極 -> 4. 全体主義を賛美する、人命尊重さえも無視する壮大な集団演奏、という各楽章の真意を活写する方が、リスナーに直接に訴えるもんが大きいからかもしれませんなあ。プラハの春でチェコに入っていったソビエトの戦車の列と、バーンスタインや国外追放されていたロストロポーヴィチが率いた金満、自由を謳歌するニューヨークやワシントンのオーケストラ。プラウダに絶賛されたショスタコヴィチの表意音楽について、心に訴えかけるもんが格段に違いますわ。それにしても、終楽章の解放というのは、一体どこに解放されるんでしょうか、何度聴いても分かりまへん
もしかしてかなり有名か? ショスタコーヴィチ:交響曲第5番 アンチェル(カレル)
なんだか共産主義国家を連想させるジャケットの写真の像が気に入って、店頭で衝動買いしてしまった。 演奏は無駄が無くてはっきりしたもので、細部がよく見え、和音の醸し出す不穏な空気感がダイレクトに伝わって来る。 さらに録音が絶妙で、木管楽器や弦の後の休符に残る響きがすごく自然で、空気が感じられるほどなので、全体を通して楽器の響きでも楽しめる。
カレル・アンチェルという指揮者を知ったのは今回が初めてだ。ライナーノーツを読むと、大戦中にずいぶん悲惨な目に遭ってきた人だということがわかった。アンチェル&チェコフィルの演奏はどこか寂しそうで、これが東欧の複雑な事情による心境を反映しているように思えてならない。
最新レビュー ショスタコーヴィチ:交響曲第5番 アンチェル(カレル)
収録曲・トラック
Disc1
1.交響曲第5番ニ短調op.47「革命」
2.祝典序曲op.96
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