エディターレビュー
シェイクスピアの『リア王』をもとに、人間の業をまざまざと描き出す、黒澤明監督晩年の戦国絵巻。一文字家の党首・秀虎(仲代達矢)は3人の息子に家督を譲ろうとするが、それがもとで兄弟の骨肉の争いが始まり、やがて秀虎は発狂してしまう…。 監督本人いわく「自らのライフワーク」と語っただけあって、そこには自身の人生観を凝縮させたかのような壮絶な思いと、仏にすら見放されたかのような人間たちに対する祈りといったものが見え隠れする。 前半のクライマックスとなる三の城炎上の際、一切の効果音をやめ、武満徹の音楽だけで、荘厳な地獄図絵を見せつける演出のすさまじさ。ワダエミがアカデミー賞衣裳デザイン賞を受賞など、それぞれのスタッフワークもすばらしい。(的田也寸志)
カスタマーレビュー
これほど見事な映画は見たことがない 乱 [DVD] 仲代達矢
これほど素晴らしい映画に出会えた事が嬉しいです リア王もベースに作られた映画ですが
老人の転落人生 狂気と正気の狭間 家族問題 社会問題あらゆるテーマを盛り込んだ
素晴らしい映画であると思います 役者も演出もすべてが最高レベル無駄な展開が一切ない
3時間近くある大作ですがまったく飽きずに楽しめます 老人が兵士の所を歩いて行く所
映像も奇麗で古臭さを感じずとても面白い映画でした 文句無しです。
因果応報、狂気の世界での狂気は正気 乱 [DVD] 仲代達矢
黒沢の作品を見るのは、「白痴」に続いて2本目で、これも初めて見ました。この作品はつまるところリア王とおそらくマクベスを原作とした作品です。ということである程度筋自体は想像できてしまいます。むしろ筋よりも映像の展開を追って味わうべき作品なのでしょう。そして全編を通して流れる死生観と世界観は黒沢独特のものでしょう。話は短い間の展開となっています。外人には雑音としてしか聞こえないといわれるセミの鳴き声が絶え間なく背景をしめています。そして風です。風は荒野のシーンだけでなく、いろいろなシーンで風景の一部となっています。そして一切せりふがなく、武満の音楽だけが流れる三の城での合戦のシーンは見事なまでの映像美となっています。そして太郎の死を境として繰り広げられる城内での合戦のシーンは赤を基調とした死のイメージが前面に出てきて、その前の音楽だけのシーンとのコントラストは見事です。この一族の没落の背後で糸を引くのは、太郎の正妻、楓です。この一族の没落に人生の生きがいを見出す楓は、裏の主人公なのでしょう。同じような運命の下にある次郎の正妻の末は楓とは別の生き様を求めています。その弟の鶴丸が最後のシーンで登場しますが、ここでは仏の絵が最後を締めくくります。驚くべきことに、amazon.jpでは6本のレヴューしかのっていないのに、amazon.comでは210本ものそれもかなり長文のレヴューが掲載されています。この乖離はいったいどういうことなのでしょうか?ここにはもう一つ別の深いテーマが潜んでいます。
「悲劇」とは何か 乱 [DVD] 仲代達矢
世界的な映画監督としての評価を不動にした一方で、その妥協のない作風ゆえにとにかく予算がかかり、東宝との関係も最悪だったという80年代の黒澤明。この映画も日本国内ではもはや予算が集められず、フランスまで行って予算を集め、25億円以上(当時)をかけて作られた。CG全盛の現代映画と違い、圧倒的な物量と綿密なカメラ・ワークが作る映像世界は、やはり圧巻。(また、仲代達也のメイクと芝居は現代ハリウッドのCGアニメキャラを超えた完成度を未だに誇っている。)こんな贅沢な戦国映画はもう撮影されることはないのだろうか、と思うと、時代劇ファンとしては少し寂しい。(当時だって「世界のクロサワ」(=なんか、嫌な響きだよね)だから許されたワガママ放題であって、邦画制作は既に惨憺たる状況だった。)
そして、この贅沢さで映像美を裏打ちする方向性というのが、逆に90年代以降の黒澤映画の「衰え」(と敢えて言おう)を準備したんじゃないかと思う。本作はそういう意味で、物量映像美路線の臨界点なんじゃないか。
シェークスピア「リア王」をベースにしているため話の筋の予想がついてしまうのが難点だが、人間と戦争の残酷さ・エグさが存分に描かれており、シェークスピア映画としてみても全く違和感なく仕上がっている。とにかく残酷なストーリーなんだけど、これが「悲劇」というものなのだろう。「悲しい劇」が「悲劇」だと思ってた自分の目を覚まさせてくれた一作。しかし、シェークスピアのクラオモシロさ(暗い+面白さ)に気づかせてくれたのは思わぬ収穫。
モノクロ映画時代のファンが多い黒澤映画だが、「クロサワ」を語るなら色んな意味で避けて通れない作品。
ちょっと話の進み方がスローペース。 乱 [DVD] 仲代達矢
実はこの映画が生まれて初めて観る黒澤映画でした。期待して観に行ったのですが話はスローペースでセリフも聞き取りにくくて疲れました。長男の嫁に振り回されて1国が滅びてしまうという人間の欲と愚かさ、憎しみの恐さは伝わりました。井川比佐氏が原田美枝子を1瞬の内に斬り捨ててしまうところは凄みがありました。カラー映画だけあって衣装などの色使いは綺麗でした。
後になって黒澤映画の白黒作品を見たのですがこちらの方がはるかに面白かったです。
狂乱 乱 [DVD] 仲代達矢
狂乱だ。
殺し合いとは、正に狂乱だ。
いつの時代も、ひとは殺し合わねば生きてはゆけないのか。
狂うのが正しい
狂っておれば楽だ
自分がくるったように振る舞うことで主を“あやして”きた男は言う。
その男は主がしてきたことを許さなかった。
しかし、主が唯一愛せた息子の亡骸にしがみつき消えるように昇天したのを全身で拒み、
そのさだめを与えた仏を罵り諫められた。
三郎は誰より父を慕っていた。
だからこそ父の老いた姿かなしくて、吐いた言葉雑言と戒められる。
父は愚かであった。しかし三郎は恨まなかった。
身なりはひどいが穏やかな表情を得た父を己の馬にのせ、彼の言葉に耳を傾けているところに……
私は息も絶え絶えに泣いた。
これほど感情を掻き乱す映画、これから先出会うだろうか。
そういう気が、しないのだ。
「黒澤明」を思い知らされた。
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