エディターレビュー
連合赤軍のリンチ事件を題材にした小説『光の雨』が映画化されることになり、若手キャスト(結木奈江、山本太郎ほか)が集結して撮影に入るが、まもなくして監督(大杉漣)は失踪。彼は赤軍を同時代を生きた男でもあった。代わって、それまでメイキングを回していた新進監督(萩原聖人)がメガホンを取り、撮影は続行される…。 高橋伴明監督が、これだけは撮らないと自分の20世紀は終わらないとの覚悟で取り組んだ社会派青春映画の傑作。立松和平の原作が劇中劇として描かれ、当時の若者たちの思想を理解できず、混乱しながら役を演じていく若手俳優たちのドラマとクロスしていく。理想を追い求めた果てが仲間同士の殺りくであったという痛恨。それは決して過去の出来事理ではなく、閉塞的現代とリンクする歴史的重要な惨劇であったことまで思い知らされる、必見の作品。(的田也寸志)
カスタマーレビュー
当時の人々を[本当に]知らない世代には危険な作品 光の雨 特別版 [DVD] 萩原聖人
私は全共闘が毎日、機動隊とバトルを繰り広げていた時期に小学生だった。この映画を観てこの事件は怖いと言う人が多いが、当時実際に感じたこの事件はもっと猛烈に凄惨で残酷なものだった。
<連合赤軍事件の関連記事>
http://www.alpha-net.ne.jp/users2/knight9/rengou.htm
http://www8.ocn.ne.jp/moonston/lynch.htm (ページ中程の「連合赤軍総括リンチ事件」参照)
その頃、街に出ると外の空気は緊張感に満ちていて、テレビでは毎日のように、交番が放火・襲撃されたり、手製爆弾によって大企業が爆破されたニュースや、活動家の学生が内ゲバによって鉄パイプで撲殺されたニュースが流れていた。
この映画では、当時のニュース映像として機動隊が学生を殴るシーンはいくつも採用されているが、爆破された企業ビルの前で全身血まみれになって倒れている女性の映像などは一切採用されていない。
まだ妙なフィルターがかかっていない子供の目には、この活動に関わっていた人々の本質が徐々に透けて見えるようになった。私は高校生になった頃、すでに学生運動は終焉を迎えていた。私はこの運動に敗北し、かつて在籍していた大学の近くにジャズ喫茶を開店した経営者の店でアルバイトをしていた。さまざまなセクトの人がやってきた。店内でいつ鉄パイプで敵(この場合、国家権力ではなく、同じ極左集団だが自派とは活動方針などが異なる他の組織のメンバー)を殴打するような内ゲバが起きても何も不思議ではないような混沌とした状況だったが、不思議とこの場では中立が守られていた。
この作品の冒頭でも語られるが、彼らは本来、大いなる理想を抱いて「世界の人々が幸福に生きられる世界をつくるため」に活動を始めたはずだったが、実際に当時の彼らが行っていた事はヤクザの勢力争いとほとんど大差無いものだった。国家と戦争をするにはお笑いの貧弱な武力は、勝ち目の無い闘争の中で、ますます先鋭化して行く組織についていけなくなった仲間に向けられた。
自分らの戦力を自分らの手でそぎ落としていくのだから、その先に勝利など絶対にありっこないのだが、それさえももはや当時の彼らにはわからない。
当時、革命運動が断絶した後、敗北感や絶望感、虚無感にさいなまれて自死を選択した者も少なくなかった。しかし、当時の革命ブームに乗っかっただけの大多数の日和見ボーヤたち[それを『団塊の世代』と言う]は、早々に自己保身に走り、数ヶ月前まで不倶戴天の敵だったはずの大企業や国家組織の一員になっていった。彼らは今では定年退職をむかえ、国家や企業から従順生活のごほうびとして退職金や年金を得て、かつて唾棄すべきものと罵倒していたはずのプチブルな老後生活のプランを嬉々としてたてている。馬鹿につける薬は無い。
私は今日までこの世代の醜悪さを嫌というほど見てきたので、日本を駄目にしたのはこの世代だと絶対的な確信を持って強力に断言できる。
この作品は、この醜悪な世代がみずからの後ろめたさを弁護し、正当化するためにつくられた作品である。
だからこそ最後に原作者はどうしても、どれほど無様な形になろうが登場せざるをえなかった。「みんなごく普通の子供だった。本当はみんな良い子だったと僕は思いたい。(今を生きている)君たちとなんら違いも無い。」まさに、“馬鹿につける薬は無い”と痛感する瞬間である。
この活動の、醜悪で滑稽な象徴的存在を見事に演じた裕木奈江が良かったので星はすべて彼女のために付けた。
連合赤軍の入門? 光の雨 特別版 [DVD] 萩原聖人
当時の闘志たちの思想を理解できず苦しむ若者達の姿がよかった。再現ドラマ部分からは人間のエゴの恐ろしさを学んだ気がする。これと続けて観ると良いのが『突入せよ!』であるが、本作は全編重苦しい雰囲気で対照的である。
所詮は人間も動物 光の雨 特別版 [DVD] 萩原聖人
立松和平の同名のタイトルの小説を映画化したもの。
思想だけで時代を乗り越え、また人を動かそうとした学生運動がどうして失敗したかがよく分かる。
思想だけですべてを変えようとした人々が、思想によって滅ぼされていく。
なんとも皮肉なことだが、所詮は人間も動物である。
その辺りの心理描写が実に巧妙であった。
連合赤軍事件の入門編としては最適 光の雨 特別版 [DVD] 萩原聖人
おそらくこの映画を見た人は、次の点で疑問を持つのではないか。
一つは、総括に暴力が使われたことまでは理解できても、なぜ殺すところまでやったのか。
もう一つは、自分も殺されることを予感しながら、なぜ逃げ出そうとしなかったのか。
おそらく演じていた俳優達も、「なぜこんなことを、彼らはド真剣にやっていたのだろう?」と、モヤモヤしたまま演じていたに違いない。だから何かと台詞が上滑りして、学芸会的になっていたのも無理もないと思うのである。しかし劇中劇という手法をとることで、演者の迷いと、見ている人の戸惑いがシンクロして、かえって効果を上げていたように思う。つまり自分も演者の一人となって、この事件の真相に踏み込みたくなってしまうのである。実際、私はこの映画を見た後、どうしてもこの事件をウヤムヤにしておれない気分になり、赤軍兵士たちの手記を何冊かむさぼるように読んだ。それでようやく謎が解けてきた。連合赤軍事件は、その常軌を逸したという点で、また警察・市民サイドと連合赤軍サイドとでは、同じ事件がまるで違った見え方をするという点で、稀有な事件と思う。さらに連合赤軍側でも指導部と一般兵士とではまた違った見え方がする。それはあたかも『藪の中』のようでもある。映画は制作者の誠実さも感じられ、連合赤軍事件の入門編としては最適ではないでしょうか。
総括しろだって、チキショー! 光の雨 特別版 [DVD] 萩原聖人
原作を読んで見たくなりました。あの事件をストレートに表現しづらいのはとても理解できます。映画中映画にして、俳優たちを時々解放してやらないととても最後まで見られません。でも、ここまでクッションを置いてもなお、高橋伴明が監督を失踪させてしまうのは何故なんでしょう。「自分にはこの映画を撮る資格がない」とか思いながら撮っていたのだとしても、この件(くだり)が免罪符になるわけでもなかろうに。でも監督に届けられる歌「革命の 核角飛車取り 西瓜売り 誰何(すいか)するのに 返事をせぬか」は妙に意味深であります。
ラストの雪合戦のように明るく革命ができるはずはありません。当時の弾圧を考えれば、武装闘争を選択した集団が内部で同志に厳しくなるのも理解できます。でも、出口の見えない「総括」を求め、暴力をもって「総括援助」するのは間違いだって、誰も言えなかったのが怖い。「総括しろだって、チキショー!」って、もっと早く言って欲しかった。
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