「洗練の極み」「歌謡曲色を排したクールでドライな曲作りは聴き込むほどに味がでてくる」といったカスタマーレビュー、ほかに付け足すことは何もないくらい、同感です。まったく、そういうアルバムです。が、ついつい、蛇足を書きたくなってしまった。
とりわけ最初の曲は、薄絹を重ねた十二単(じゅうにひとえ)と言うんでしょうか、音の迷宮と言うべき造りに、陶酔感を感じます。マドンナEroticaの明菜風洗練バージョンとも思えるVampとは対照的に、こちらは全然セクシー系の濃厚さがない・・のに、音や、敢えて抑制した声に、官能美を感じてしまう。そしてその印象は、ハードなタッチの2曲目以降以降にもずっと引き継がれて、アルバムのトータルイメージを醸し出しているように思えます。2曲目のドラムとベースのタイトでへヴィでエッジの利いたリズムに、明菜の敢えてビブラートしない歌声が、丁寧に丁寧に重ねられていくところ、すばらしいです。
Appetiteはどちらのアレンジもカッコイイですが、私的には、イントロにウッドベースの入るボーナストラックがお勧めです。もっともっとジャズっぽい大人のタッチにアレンジして、ブルーノート東京みたいなジャズクラブに出てきて欲しい、なんて空想したりします。逆に、Moonlight Shadowのつくりは、ちょっと力が入りすぎたというか、各種アレンジが入りすぎて「クール&ドライ」な美しさが損なわれた感がなくもない・・?なぜなら、バックに流れる乾いた固めの音質とリズム、この基本部分だけでこの曲はカッコイイからです。こういう曲はクールにタカビーに駆け抜けてほしい。と、余計ないちゃもんをつけたくなるくらい、いい音です。
こういう表現美は、年齢を超越して成立するもの。中森明菜には、80歳になっても、このような清潔・精緻なる官能美を表現しつづけて欲しいと願ってしまいます。
前年に出たミニアルバム「VAMP」と姉妹作というべき作品で、
当時のMCAビクター(現ユニバーサル)に残した最後の作品。
クラブミュージックに接近していた時期で、音の洗練度
は相当なもの。全盛期のリプリーズでの「D404ME」「クリムゾン」
近年のユニバーサルの作品では「Resonansia」に並ぶ完成度といえる。
なんといっても、本人が社長に直訴してシングルにした
傑作シングル「APPETITE」がボーナストラックで収録されているのが
ポイント。思い切り夏の楽曲なのに冬にリリースされたゆえか
セールスはふるわなかったものの、ほぼ毎年ツアーで歌われる
人気曲。このアルバムのパフォーマンスはDVD「Felicidad」で
見られる。
他にアーシーなファンクからハウスナンバー、二胡とのコラボが
素晴らしい「桜(びやく)」など、「いろんなサウンドをシェイク
した(本人談)」ように様々な歌が楽しめる。
前年の小室哲哉作シングル「MOONLIGHT SHADOW」と「APPETITE」、
APPETITEのカップリング曲が再発盤にボーナスでおさめられて
いるのは、シングル曲は両方ともリミックスで収録されているため。
特にサブタイトルのついた「APPETITE」は両方のヴァージョンとも
素晴らしい出来なので、聴き比べるのも一興。
中森明菜は自作自演ではないが、職人的に音作りにこだわる。
今回もサウンドプロダクトにこだわり、明菜の目指すボーカルを
楽器の一部として表現する手法が活かされてる。
サウンドプロデューサーには朝本浩文らを起用し、
最先端のタイトなサウンドと、明菜の抑えたクールなボーカルが
融合した90年代の名盤。
ウエットな歌謡曲色を排して、ドライで洗練された雰囲気が漂う。
最初は淡々とした印象を受けるが、聴くほどに味がでる飽きがこない
アルバム。
Disc1
1.満月
2.Spicy Heart
3.夜の匂い
4.MOONLIGHT SHADOW~月に吠えろ (Album mix)
5.おいしい水
6.赤い薔薇が揺れた
7.APPETITE~HORROR PLANTS BENJAMIN
8.夢みるように眠りたい
9.桜
10.風を抱きしめて
11.月は青く
12.MOONLIGHT SHADOW~月に吠えろ
13.APPETITE
14.SWEET SUSPICION