エディターレビュー
文豪アレクサンドル・デュマの原作を映画化。16世紀のフランスで、国王シャルル9世を擁するカトリックのヴァロア家と、新教徒プロテスタントのブルボン家による対立が激化する。国王の母は、末娘のマルゴを新教徒勢力のナバール公アンリと結婚させ、宗教戦争を沈静化させようとするが…。 イザベル・アジャーニ演じるマルゴを中心に、宮廷での人間模様がおぞましいほどドロドロに展開。注目はマルゴの人物造形で、男を探しに街をうろつき、ほとんどセックス中毒のようだ。そんな彼女を通し、欲望のままに愛することの大切さが伝わってくるのも事実で、パトリス・シェロー監督の人間に対する洞察力によるものだろう。本や口紅に毒を塗っての暗殺劇や、エロティックなラブシーンにも驚くが、もっとも印象に残るのは宮廷内や街に累々と重なる死体の描写。そのリアルさには目を背けたくなるのと同時に、宗教や思想による殺りくの愚かさが突きつけられ、作品の存在意識が感じられる。(斉藤博昭)
カスタマーレビュー
今日的映画 王妃マルゴ 無修正版 [DVD] イザベル・アジャーニ
1572年8月のたまらなくむし暑いパリの夜、聖バーソローミューの日の夜の大虐殺劇を舞台に、複雑な人間集団の葛藤を描いた大作である。映画館で観たのがもう10年前のことになってしまった。登場人物がこの混沌としたカオスの渦中、まさに複雑である。この時代に、日本も信長が天下布武の旗を掲げ、かけ回っていたころであるから、東洋も西洋も同じように混乱と戦乱の血みどろな時代であった。若く躍動する男の背中に貼りつくシャツと血しぶきがこの作品を荒々しくも淫靡であざといものに仕上げている。大人の映画である。
冒頭、マルグリット・ド・バロアと後のアンリ4世であるアンリ・ド・ナヴァールの結婚式、壮大なカテドラルのそれは、薄暗い蝋燭の灯、輝く宝石、華麗で贅沢な衣装、圧倒的な美しさである。その時点で観客は遥かなる過去へと意識を飛ばされてしまうような眩暈を感じさせられるであろう。イザベル・アジャーニが非の打ちどころなく美しく傲慢である。
次いで、ルーヴルの宮廷庭園での破天荒な宴会、美しいが粗野で悪魔的な貴族の青年らのさや当てが繰り広げられるのである。
更に夜の宮殿での愛の交歓と裏切り、狡猾な謀略、猜疑と怯え、そして恐怖を打ち消すべき凶行、これらを魔女のようなカトリーヌ・ド・メデイシス役をヴィルナ・リージ、そして汗だくで長髪を振り乱し、小心だが狡猾、柔和さと冷血を交錯させる複雑なシャルル9世役を、ジャン・ユーグ・アングラートが役者としてのプライドをかけての熱演で秀逸である。
なによりも照明が素晴らしい。闇と光の微妙な対比がこの時代の絵画の如く深みがあり、格調高く美しい。能衣装のように華美で重々しい女性の衣装、薄暗い魔窟のような宮殿も当時のそれを再現させたごとく全く手を抜かない仕事ぶりである。
筋書きの複雑怪奇さは、史実がそうだったのであるから仕方がない。史実と異なるのは、マルゴの愛人、ラ・モール伯、実際は40過ぎの当時としては歳の行ったおじさんでプロの殺し屋、実際にシャルル9世の暗殺を狙っており、マルゴの弟、アンジェー公の罠に引っ掛かって処刑された。メデシスの毒殺というのも伝説でシャルル9世は病死であった、という点であろうか。
そんなこんなで歴史を勉強するきっかけにもなった忘れ難い映画である。今日の枢軸を失った混沌とした時代を予兆する映画でもあった。
セント・バーソロミューの虐殺 王妃マルゴ 無修正版 [DVD] イザベル・アジャーニ
1562年フランス宗教戦争勃発。1572年カトリックのマルゴー(カトリーヌ・ド・メディチの娘)とユグノー(プロテスタント)のアンリ(ブルボン王朝)が結婚。しかし、それでも「セント・バーソロミューの虐殺」が発生する。アレクサンドル・デュマ原作にかかるドラマチックな物語だ。映画はイサベル=アジャーニのはまり役で、原作よりは更に濃い、血みどろの殺し合い、転がる死体、近親相姦などをベッタリと描き、何とも言えない時代の雰囲気を出している。得難い映画だ。
恐ろしく濃厚な映画 好き嫌いが別れると思う 王妃マルゴ 無修正版 [DVD] イザベル・アジャーニ
徹底的に濃厚。中世の陰鬱と狂気ともいえる残虐で原始的な快楽への熱中が全編を通して表現される。この時点で拒否反応を示す人がいるかもしれない。字幕ではプロテスタントとなっているが、正確にはこの婚礼で虐殺されたのはフランス語読みの「ユグノー」たち。イタリア出身のしたたかな王妃カトリーヌドメディチの策によってカソリックとユグノーの和解の象徴としてユグノー領地の王アンリと結婚させられた長女マルゴの生き方を濃密に表現した映画。音楽が重厚で悲愴に満ちている。淫蕩でありながら聡明である二面性を持った王妃マルゴをイザベルアジャーニが濃演。個人的に、マルゴの次女役で出演している女優の妙演にかなり好印象。偉大な皇太后カトリーヌ亡き後、この映画中で栄華を誇ったヴァロア朝の王兄弟に嫡子はなく、結局フランス全土の王冠は「ユグノーの花婿」として人質同然に婿入りしてきたナヴァル王アンリのブルボン朝に受け継がれる。このブルボン朝から後の太陽王ルイ14世が生まれる。歴史の皮肉である。この映画には登場人物が多く名前と顔が一度見ただけでは一致しない。一度みて全貌をつかんだ後に、2度3度と見ると、そのたびに何かしら発見のある映画。
美しくて残酷で切ない感動作 王妃マルゴ 無修正版 [DVD] イザベル・アジャーニ
この映画を見てイザベル=アジャー二のファンになりました。 隅々まで完璧な配役、そして熱演。重厚で物悲しい音楽、落ち着いた美しい映像、豪華な衣装、切ない物語。 DVDの美しい画質で永久保存するに相応しい名作だと思います。 廃盤になったのだとしたらとても残念です。 サントラもお勧め。
演劇出身のパトリス・シェローを知ってください。 王妃マルゴ 無修正版 [DVD] イザベル・アジャーニ
この監督パトリス・シェローはフランス演劇界で名を売り、ワーグナー没後100年の「世紀のワーグナー」でもう一人のフランス人音楽家ピエール・ブーレーズとコンビを組んでニーベルングの指環を演出し「物議と賞賛」を巻き起こしそれで徹底的に有名になった人です。 あの悪名高きサン・バルテルミーの夜を再現した死体の置き方の背景には日本の「暗黒舞踏」が元になっているような気がします。(1980年にワルキューレの第三幕を見たとき当初の死体の置き方がそうだったのでそれの踏襲で、より洗練(?)された感じです。いまやバイロイトを始めワルキューレ第三幕の殆どはシェロー・スタィルが一般的になってますが。) またイザベル・アジャーニの綺麗な女優さんなのに汚れを厭わない突撃振りが「サービス」精神旺盛な所で素敵です。お時間ありましたら彼女が出演している「ポゼッション」を是非観て下さい。 又BGMのエロ・ハイ(音楽ゴラン・ブレゴビッチ)を歌うオフラ・ハザのシャープな声がきりりと締めています。サン・バルテルミーのサバト的な音楽も美しい。人物を捉えてたカメラワークの単調さが(近視的)少々気になる人もいるかも知れないが、私はこの映画は文句なしの星五つを挙げておきたい。
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