エディターレビュー
この優れた映画は「繊細な優雅さ」と表現されるのが多分一番ふさわしいだろう。この作品は現在を背景にしながら、第2次世界大戦直前にイギリスの地方の家で生きる人々を描いている。『ハワーズ・エンド』のスタッフと再結集したのは、女中頭のミス・ケントンを演じるエマ・トンプソンと完全無欠の執事スティーブンスを演じるアンソニー・ホプキンスだ。ほろ苦い物語の中心となるのは、スティーブンスとその主人ダーリントン卿(ジェームズ・フォックスが適度におせっかいで陰険なほど尊大に演じる)への彼の献身ぶりだ。スティーブンスはこう約言する。「人は雇い主の役に立つために出来ることをすべてやるまでは完全に満足はできないと思う」と。スティーブンスの世界をとりまくのは切迫したドイツとの戦争と、ダーリントンのひどく歪んだ戦争への関心、そしてもっとも強い印象を与えるのはミス・ケントンとの関係だ。スティーブンスはまさに抑圧そのもののような存在だが、ホプキンスが演じることで悲惨でも独善的でもなくなっている。主人が戦争を見誤ったようにスティーブンスは忠義を見誤る。彼にとっての“忠義”は感情の遮断で、たぶん終生後悔することになるだろう事態にスティーブンスを追い込む。この作品では多くの事が描かれているが、動きは巧みに理解と聡明な一瞥で、感情は合わさる視線のみで表現される。製作のイスマイル・マーチャントと監督のジェームズ・アイヴォリーと脚本のルース・プラワー・ジャブヴァーラによる他の作品と同じく、この映画も見るからに壮麗で、時代を印象的に、そして感動的にとらえている。ジャブヴァーラはカズオ・イシグロの原作を尊重して脚色している。脇役で素晴らしいのはクリストファー・リーヴとベン・チャップリンとヒュー・グラントだ。(N.F. Mendoza, Amazon.com)
カスタマーレビュー
表面の美しさとは裏腹にとてもスリリングなストーリーです。 日の名残り コレクターズ・エディション [DVD] アンソニー・ホプキンス
時は第二次世界大戦勃発直前の英国。ある英国の名士である貴族の館。何10匹という猟犬に囲まれながら乗馬する紳士の画像を指差して、あなた、これが何か分かる?狐狩り、そう、今では禁止されているけど、当時は貴族って言うのはこんな馬鹿げた残酷な遊びをしていたのよ、と、ただエマ・トンプソンとホプキンスのキャスティングにミーハー根性だけで、一度見たことがあるといった私に対し、第一次・二次大戦をヨーロッパの小さな国で生き抜いてきた老婦人が、是非もう一度見なさい、と、言い、なんと彼女の、解説附きで見ました。そして、かたや、狐狩りに夢中になる生活で、何人もの執事・メイド・使用人・料理人・銀食器を磨くだけに雇われた人たち、そんな人たちによって、セッティングされた表面的にはとても華やかな宴席で、まるで、ボードゲームをするような雰囲気の中で、英国の虐げられた庶民の生活は、戦争へと押しやられていったのよ。あなた、どう思う?と、言いながら、夫人は深くため息をつきました。ヨーロッパがまっしぐらに、次の世界大戦に向かって突き進んでいたときの、庶民は決して知らされなかった詳細なやりとりを、その後何が起こったかつぶさに見てきた彼女にとって、とめることもせずただ見るしかないこの映画をどんな気持ちで見るのだろう、と、そんな考えがよぎりながら見ました。
とても、出来の良い映画です。配役も俳優も申し分なしです。それは誰もが認めることなので、繰り返す気はありません。
ただ、少し、視点を変えて見ると、感慨深いものがある映画です、ということを記しておきたいです。
英国趣味満載 日の名残り コレクターズ・エディション [DVD] アンソニー・ホプキンス
英国の貴族の暮らしに興味のある方なら、垂涎ものの作品でしょう。 無駄のない、ゴミ一つない、ピカピカに磨き上げられた館内。階級社会。有能な召使い。 古き良き、と言われがちな時代を撮らせたら右にでるものはない、アイヴォリー監督作品。 古き良き、とはいうものの、舞台は既に英国の斜陽期。一つの大戦が終わり、二つ目の大戦に向かう、間の時期から回想が始まる。 自己抑制の強さゆえに、自分の感情に気が付かない執事。女中頭は別の男との結婚のため退職する。 大戦後、新たに必要となった女中の候補として、執事はかつての女中頭に会いに行く旅へでるが・・・。 思うようにならぬ、気持ちのすれ違い。互いに互いの気持ちに気づきながら、別の選択をする苦さ。 派手なほれたはれたが繰り広げられる恋愛映画に共感することがあまりないのは、現実の世界でありえないことだからだろう。 俳優は年齢じゃないと思う。アンソニー・ホプキンスを観ていると。セクシーだし、演技は凄みすら感じる。 エマ・トンプソンも、三十代の若さで彼と張り合う演技力。この二人、けっこう年齢差あるのに、観ているうちにあまり感じなくなっていくのだ。 それだけ、観客を物語に引き込んでいく。
この男のストイックさは、まことにセクシーである。 日の名残り コレクターズ・エディション [DVD] アンソニー・ホプキンス
すみずみまで掃除が行き届いた館の至るところに絵画が飾られている。食事の内容よりも(失礼!)食事に用いられる銀食器に価値が置かれ、手入れの行き届いた銀食器が清潔なテーブルクロスの上に定規で測ったように(実際映画の中に執事が銀食器の配膳の位置を定規で測る箇所が出てくる)整然と並べられている。庭の緑や花が生活を彩る。何よりそこで働く人々、特に執事や女中頭が黙々と執務を進めている、この雰囲気は、イギリス文化大好きな人にはたまらなく魅力的なはず。 私が一番すきなのは、女中頭ミス・ケントン(エマ・トンプソン)が自分の心にうそをついて嫁ぐ前夜、執事スティーヴン(アンソニー・ホプキンス)が彼女の部屋を訪れる場面。この男のストイックさは、まことにセクシーである。20年後、二人が出会うところもすてき。見送るところもすてきなのだけれど、私は、スティーヴンが再会の嬉しさから緊張してか、アンダ(and)と話を継ぐ話し方に妙に惹かれた。克己的な生き方を強いられてきたはずのこの老執事の生き方とどことなくナイーブなこの話し方、ミスバランスなところがいいのです。一度思えば命がけな私は、スティーヴン相手なら一生待つぞ!
好きだなんて言えない 日の名残り コレクターズ・エディション [DVD] アンソニー・ホプキンス
美しい映像、切ないストーリー、圧倒的な演技。完璧な一作です。 イギリス人の執事が主人公ってところで既に成功ですよね。「執事」のロマンス。これだけで充分イイ。 「私情」を隠してプロに徹するうちに自分に感情があることも忘れてしまっている男。自分の恋心にすら気づかず、無意識にそこから逃げている。 一方、彼に惹かれながら、どうしてもその心に入り込めないことに自棄になって逆に行ってしまう女。 二人の唯一のコミュニケート手段が言い争い、という。 品位を保ち、プロとして完璧に自己をコントロールしようとしながら、その心中は千々に乱れている様がなんともドキドキさせられます。 ストレートに「好きだ」と言えないロマンスというのは、1時間半でハッピーエンドを迎えるあり!がちなロマンスに較べ、グっとリアリスティックだと言えますね。 だからこそ共感できるし、最後の再会シーンでは「お願いだから好きだと言って!!」ともどかしさにハンカチを握り締めてしまいます。 アンソニー・ホプキンスがセクシーかつストイックかつナイーブな執事を快演。
きっと、あと数年後にも見たくなる 日の名残り コレクターズ・エディション [DVD] アンソニー・ホプキンス
ロードショー時に劇場で見たが、今回DVDで見直してみると、感慨深いものがある。当時は人生の晩年なんて実感としてなかったが、わが人生も半分を過ぎると、この映画は胸に染みる。 このDVDには、監督、製作者とE・トンプソンの音声解説が収録されている(この録音は撮影から数年後らしい)。 撮影のエピソードも面白いが、主と使用人の特異な関係を通して、英国の社会体制(階級制度)、英国人気質などについて随所で語っており(ま、特にE・トンプソンだけど:E・トンプソンの祖母はこの映画で彼女が演じたような召使をしていたということも話題にしている)、非常に興味深い。
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