貧しい仕立て屋の一家に育つエスターは、やがて何となく女優を志望するようになる。その動機は一貫して自分を蔑む家族への復讐であり、小さな自分の世界から抜け出せない彼女の短絡的な発想であった。しかしやがて彼女は夢を掴み、演技すること本来の愉しさに魅せられてゆく。あるとき追究の壁に苦悩する彼女に、彼女の師となる俳優ネイサンは、私生活で恋愛することを薦めるが・・。
巷ではシンデレラストーリーと言及されるが、アルノー・デプレシャンが描くとこうなる的な彼らしさが色濃く滲み出ている。ほとんど無BGMの画面に、実生活では自分の想いをなかなか表現することのできない彼女の静的な叙事描写が見事にシンクロし、転じて彼女の内に秘めた静かな情熱を浮きだたせる。
晴れてシンデレラに!なる彼女が手にしたもの、そして失ったもの。多くの成功には決して少なくない犠牲を伴うのが常である。おとぎ話は完結するが、彼女の人生は死という閉幕が訪れるまで停まることなく続くのである。