ここでは、ヴァイオリン・ソナタ第1番の他は後期作品なので、多少とっつきにくいかもしれない。
ヴァイオリン・ソナタ第1番をこの演奏で初めて聴いた時は、今より私が若かったからかもしれないが、幸福感でいっぱいになって、眠れなくなってしまった。朝まで延々聴き続けたからだ。ほかの演奏をいくつか聴いたが、原体験が強烈過ぎて、体が受け付けなくなってしまった。ガロワ・モンブランも、今日的メカニックの水準ではないが、この曲を作曲していた時のフォーレがいかに幸せだったか、伝記を読まなくてもわかるほど、すばらしい。建前論ではなく、演奏はやはり心なのだ。
あとの3曲も、いったん慣れれば、同じくらい癒される名曲である。とっつきにくいが、親しくなってしまうと離れられないのだ。
なお、全集といいながらチェロ・ソナタが欠けているのが惜しい。エラートがBMG傘下のときリリースされた同内容の全集では、トゥルトゥリエのチェロによる、これまた名演があっただけにもったいない。チェロ作品だけ、今の人たちのためにリリースしてくれないだろうか。