フォーレの音楽は大言壮語しない。がなりたてない。かといって渋い顔を作っているばかりではない。しゃれていて、適度にモダンで、感情も豊かだ。彼の室内楽作品には特にそれがいえる。
1枚目のCDにはピアノ4重奏曲2曲、2枚目にはピアノ5重奏曲2曲がそれぞれ収められているが、編成の違い、作曲年代の違い(4重奏曲の方が早い)から、随分と違った印象が感じられる。
まず、ピアノ4重奏曲の方からいくと、もやのかかったような響きが全体を支配する。ユニゾンが効果的に使われ、胸騒ぎのような切迫した気持ちが高揚することもあるが、夢幻的な雰囲気に落ち着くことが多い。これに対し、ピアノ5重奏曲はヴァイオリンが1つ多い分だけ音に密度の高さが感じられる。60〜70代に達したフォーレの書法は円熟するとともに力強さを増している。ハーモニーの面でも複雑になり、サウンドの変化も大きい。デリケートさを保ちながら、リズミックなおもしろさも加味して興味が尽きない。第1番の第3楽章、第2番の第2楽章など、われわれの時代のポピュラー音楽を一部先取りしているかのようにさえきこえるのだ。思いがけない飛び方をするメロディー、ひんぱんな転調によってもたらされた浮遊感のなんと気持ちよいことか。
ピアノのジャン・ユボーを中心としたこのCDは、1969〜70年にパリで録音され、フランスのACCディスク大賞、日本のレコード・アカデミー賞を受けている。(松本泰樹)
一般には二つのピアノ四重奏曲のほうが有名だが、二つのピアノ五重奏曲のほうこそ聴き物だ。とりわけ第2番は、最高傑作の呼び声高い名曲。全4楽章、ほとんどがヴィオラによって主題が提示される。特に第3楽章は涙が出るほど美しい。ユボーも、ヴィア・ノヴァ四重奏団も、今日的メカニックの水準からすると物足りないはずなのだが、実際にこの楽章や、ピアノ五重奏曲第1番第2楽章を聴いた時の幸福感を、最近の演奏家で出せる人を知らない。ユボーは、室内楽を演奏させたら、古今でも有数のピアニストだろう。ヴィア・ノヴァのやわらかい音色が絶妙な音宇宙となる。
ピアノ四重奏曲は、五重奏曲よりメリハリのはっきりした初期作品であるが、傾向が違うとはいえ、緩徐楽章がやはり一番の聴き所。
おそらく、永遠に語り継がれるべき名曲の名演が、ここに詰まっている。