エディターレビュー
ストックホルムで孤独に生きる79歳の老教授が、名誉博士の称号を授与されることになった。式典の日の明け方、自分が葬式馬車の柩のなかに横たわっている夢を見る。車で式典に向かう途中、教授は昔住んでいた屋敷に立ち寄る。そこで野いちごを見つけた彼は、若き日の悲恋を回想する。そして車は式典会場へと向う。 老人の1日を通して死の予感や不安、人生のむなしさなどを、さまざまな夢や幻想を織り交ぜながら、閑静に美しく描きだした。やがてそれらの暗闇から光明を見いだすという、巨匠イングマル・ベルイマン監督のポリシーが全面に展開される、映画史上に残る名作である。往年の名監督でもある主演のヴィクトル・シェストレムは、これが遺作となった。ベルリン国際映画祭金獅子賞受賞。(的田也寸志)
カスタマーレビュー
廉価版がでるといいですね 野いちご [DVD] ヴィクトル・シェストレム
高校時代、池袋文芸座か高田馬場パール座か、はたまた岩波劇場であったか
とにかく見ました。とかく難解とおもわれるベルイマン作品にあって、
そのまま見て感動できる作品の筆頭でしょう。
フェリーニ作品の「道」にあたるのでしょうか。
どなたが見ても、自分の人生を振り返ることの意味を感じさせて
くれる永遠の名作であります。数年前DVD移行期にレンタル店の
ビデオ処分コーナーでテープを300円で手に入れた自分は幸せ物ですが、
多くの人に見てもらいたい作品ですから、廉価DVDでの再販を期待
しております。
優しいベルイマンがここに 野いちご [DVD] ヴィクトル・シェストレム
イングマール・ベルイマンの論理的で厳格な創作スタイルが好きだ。
しかしこの「野いちご」は、そういったベルイマンの作風とはひと味違う。優しさに満ち溢れた作品世界となっているのである。
とは言え、登場人物の言葉のなかに直接メッセージを提示するいつもの手法は変わらず貫かれている。
回想録とロード・ムービーをステージにした哲学映画で、ベルイマンの代表的傑作であると同時に彼の入門篇としても勧めることができる1本。
2つの旅、ロードムービー 野いちご [DVD] ヴィクトル・シェストレム
ベルイマンというととかく高尚な香りがして手が伸びなかったんですが、本作はそんなイメージを覆される傑作でした。
式典会場へ向かう道中で起こる出来事と、途中老人イサクの見る夢の数々が巧みに交錯し、一人の老人を通して内外2つの旅をするような、そんな贅沢なロードムービーでした。車という舞台装置、行く先々で会う人々との対話、そして自己との対話。ロードムービーの概念はベルイマンが57年に確立したんでしょうか。時間や脳内を行き来することが、物語をより魅力的に伝えることを可能にする。これこそ映画的な表現だと痛感しました。
そして何より言いたいのが、「あは」と少し笑ってしまうような「面白い映画」だったってことです。堅物老人が旅を経て少し温かさを取り戻すやり取りの一つ一つがユーモラスで、ある種「ブロークン・フラワーズ」 と同じ余韻を味わってる自分がいるんです。重苦しい主題を重苦しく感じさせない語り口、それが素晴らしかったんです。
secluded. 野いちご [DVD] ヴィクトル・シェストレム
老人が人生を回想する場面が続くせいか、
すぐに「永遠と一日」を思い出したのだが、
完成度はこちらがはるかに上。
非現実のイメージを次々と繰り出すもっとも安易な手法といえば
やはり回想ということになるだろうが、
繰り出される回想的な場面それぞれの強度、喚起力の高さは他に類を見ない。
また軸となる年老いた主人公の悲しみに向けられたベルイマンの視線の厳格さは
この映画を特別なものにしている。
物語が終盤にさしかかった頃、弟の嫁が主人公に向かって
主人公の一族への絶望感を語る場面は圧巻で、
鑑賞者は、この男の抱えているらしい孤独や自己嫌悪が
成功者にありがちなナルシスティックな憂鬱の類とは異なり、
ひじょうに根源的で救いのない種類のものであることをはっきりと気づかされる。
その瞬間、鑑賞者はすべてから隔離された悲しみの核を見ることが出来る。
またこの映画は信頼について語っており、
世界に心を預けるとはどういうことなのかを問うている。
開かれた心を持たない悲しみを、主人公の弟は自覚的かつ直接的に語り、
対照的に、主人公は、それについてはほぼ無自覚のまま、
認識の死角から沸々とわきあがる不吉なイメージに翻弄され、
ひたすら回想と夢に自らをドライヴさせ、うろたえている。
いわゆる「誠実な」映画を好む向きは
この作品の派手さにうんざりすることもあろうが
私にはこの映画のサービス精神が心地よかった。
人生のむなしさとやすらぎ 野いちご [DVD] ヴィクトル・シェストレム
死を目前にした老年の教授。表彰式の朝、不吉な夢をみる。自分の棺おけが目の前にあらわれるのである。式場への旅の途上ではにがい回想にふける。社会的には最高の栄誉にかがやきながら、偽善にみちた、なんとむなしい人生であったことか。
途中で車にのせたひとたちは、平凡に生きるひとたちである。かれらのおしゃべりが、教授になにかをもたらしたに違いない。さらに式典のあとで青年たちのあいさつをうけて、しだいに肯定的な気分になる。そしてやすらぎが訪れる。ひとの意識を映像化した稀有の作品です。
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