『若者のすべて』『山猫』『家族の肖像』などで知られるイタリア映画の巨匠、ルキノ・ヴィスコンティ監督を追ったドキュメンタリー。彼の代表作『ベニスに死す』は、トーマス・マン原作の小説を映画化したもの。原作どおり、この映画に欠かせないタッジオ役の金髪の美少年を、ヴィスコンティ自身がヨーロッパ中から探し求めた。
ヴィスコンティのタッジオ役に対する熱い情熱を感じるが、実際に抜擢されたビョルン・アンドレセンらのオーディション風景も収録。この作品は70年イタリアのテレビで放送されたもので、この世を去ったヴィスコンティの没後20年を機に、96年に発売されたもの。淀川長治の書き下ろし解説つき。(大石みちひろ)
「ベニスに死す」のDVD特典映像でも、少しだけオフのアンドレセンを見ることは出来ますが、このドキュメンタリーでの彼こそ、まだヴィスコンティに操られる前の素顔の彼と言えるでしょう。
少し恥ずかしそうにカメラに向ける笑顔は、映画で彼がタジオとして見せたそれとは全く違い、とても可愛らしいのです。しかし、その歩きひとつみても、自然と優雅さは備えていたようにも見えました。
しかし、ヴィスコンティはタジオ探しに各国の小学校に赴き、そこで生徒の前で直に品定めをするのですから、もうびっくりしました。イタリアのシーンで、実際にタジオの妹役で出演した少女が映った気がしますが、どうでしょう。
このビデオを見るとルキノ・ビスコンティ監督のタッジオに対する異常な程の思い入れにゾッとさせられます。
彼はタッジオの面影を求めて北欧中を行ったり来たりするのですが、自分の開いたオーディションに来る少年達だけでは物足りず、自ら現地の小学校に赴き一クラスずつ見て回り品定めをしたりします。
オーディションの途中であのビョルン・アンドレセンが初めて監督と出会いますが、少年達の中では彼は飛びぬけて背が高く大きかった為、監督は興味を持ちながらも、まだ別の少年を捜し続けていました。(映画ではそんなに大きく見えなかったけど、このビデオでは変にヒョロっと大きいです。)
結局、後に年齢設定を原作よりも高くしてビョルン・アンドレセンを使う事に決心したようです。
ビョルン・アンドレセンはこの映像では、まだあどけなく無邪気な感じで、微笑み方一つとっても映画の中での怪しいようなそれとは全く違う感じがします。
映画の舞台の華麗なホテルも、このビデオではまだガランとした荒れ果てた空き家という感じで、海岸もひなびた感じで、映画を先に観ていた私はなんだか不思議な感じがしました。