エディターレビュー
シェイクスピアの『リア王』をもとに、人間の業をまざまざと描き出す、黒澤明監督晩年の戦国絵巻。一文字家の党首・秀虎(仲代達矢)は3人の息子に家督を譲ろうとするが、それがもとで兄弟の骨肉の争いが始まり、やがて秀虎は発狂してしまう…。 監督本人いわく「自らのライフワーク」と語っただけあって、そこには自身の人生観を凝縮させたかのような壮絶な思いと、仏にすら見放されたかのような人間たちに対する祈りといったものが見え隠れする。 前半のクライマックスとなる三の城炎上の際、一切の効果音をやめ、武満徹の音楽だけで、荘厳な地獄図絵を見せつける演出のすさまじさ。ワダエミがアカデミー賞衣裳デザイン賞を受賞など、それぞれのスタッフワークもすばらしい。(的田也寸志)
カスタマーレビュー
悲劇とは何か 乱 [VHS] 仲代達矢
世界的な映画監督としての評価を不動にした一方で、その妥協のない作風ゆえにとにかく予算がかかり、東宝との関係も最悪だったという80年代の黒澤明。この映画も日本国内ではもはや予算が集められず、フランスまで行って予算を集め、25億円以上(当時)をかけて作られた。CG全盛の現代映画と違い、圧倒的な物量と綿密なカメラ・ワークが作る映像世界は、やはり圧巻。(また、仲代達也のメイクと芝居は現代ハリウッドのCGアニメキャラを超えた完成度を未だに誇っている。)こんな贅沢な戦国映画はもう撮影されることはないのだろうか、と思うと、時代劇ファンとしては少し寂しい。(当時だって「世界のクロサワ」(=なんか、嫌な響きだよね)だから許されたワガママ放題であって、邦画制作は既に惨憺たる状況だった。)
そして、この贅沢さで映像美を裏打ちする方向性というのが、逆に90年代以降の黒澤映画の「衰え」(と敢えて言おう)を準備したんじゃないかと思う。本作はそういう意味で、物量映像美路線の臨界点なんじゃないか。
シェークスピア「リア王」をベースにしているため話の筋の予想がついてしまうのが難点だが、人間と戦争の残酷さ・エグさが存分に描かれており、シェークスピア映画としてみても全く違和感なく仕上がっている。とにかく残酷なストーリーなんだけど、これが「悲劇」というものなのだろう。「悲しい劇」が「悲劇」だと思ってた自分の目を覚まさせてくれた一作。しかし、シェークスピアのクラオモシロさ(暗い+面白さ)に気づかせてくれたのは思わぬ収穫。
モノクロ映画時代のファンが多い黒澤映画だが、「クロサワ」を語るなら色んな意味で避けて通れない作品。
骨と原色 乱 [VHS] 仲代達矢
表現や演出が理に適っていて、非常に男性的な語り口だと思った。 一方、映像は感性でとらえている気がして、それでバランスがとれているのだろうか? 一見、無造作にちりばめられた、登場人物達のイメージカラー。 その原色は、黒々とした大地や森を背景にすると、途端、美しく映えた。 哀しい。 なんで人間はこんなにも荒々しく負のエネルギーを燃やせてしまうのか。 悲惨にもその生命力は満ち満ちている。 憎しみと表裏一体の「それ」が儚い。 野村萬斉や、ピーターなど配役も興味深いです。
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