久宝瑠璃子は、92−3年のビーイングブーム、94−96年の小室ブームの間に活躍していた印象があり、同時にどちらにも影響を受けない独自性のあるサウンドだったような気がする。しかしキャッチ−なメロディーを多分に楽曲に含ませていた事も忘れていなかった。そのメロディーと並んで印象深い部分は、やはり歌詞であろう。つまり女側から歌った男勝りの強気な歌詞。当然か弱く歌う事が必然的だったアイドル全盛の80年代には、あり得ない事で、俄に女性進出が目覚しくなってきた世相と切り離すこともできないだろう。
強気な歌詞として、彼女に先んじて頭角を現したのは大黒摩季だろう。大黒もまた久宝と同じように、女性が主導権を握るような曲を多く作っていた印象がある。そして、「男勝り」という共通項から思い浮かべるのが、久宝と時を同じくして活躍していた橘いずみである。どうやら、この時期の音楽情勢として強気な女性像を描く曲が多かったのだろうか?と今更ながら思うのだ。ただ面白いところがそれぞれに曲調が異なる所だ。
大黒は主にリズム重視のダンスサウンドを巧みに取り入れ、橘いずみは、女性らしからぬフォークギターをかき鳴らすスタイルが多かった。しかし、これらのスタイルは強ち彼女らのスタンスとは無関係だとは思わなかった。つまり、ハードなリズムサウンドそしてかき鳴らすギターストロークによって、間接的に強気な女性像を含む歌詞を持ち上げていた印象がある。
対して久宝瑠璃子は、前述した通りキャッチ−で万人受けするメロディーを主体としていた印象で、その点においてはやや強気さは薄らいだかもしれないが、だからこそこれだけ人気を勝ち得たのだろう。かといって、やはり強気な歌詞は多かった。特に初期はその傾向が強い。しかし、一転マイナー調バラード「さよなら」でか弱き心理描写をする辺りがまた男を落すには充分なのかも知れない。
つまり「アメと鞭」である
「CDジャーナル」データベースが書いたとおり。大ヒット曲、スマッシュヒット曲、どれを聴いても最高の彼女に出会えます。間違いなく歌唱力抜群の女性シンガーです。どの曲も甲乙つけたがいですが、特に最後の「夜明け」はライブの収録で、張り詰めた緊張感と彼女の全身全霊のヴォーカルが素晴らしい。ライブでこれだけ完璧に歌える彼女の実力に返す言葉もありません。久宝留理子に興味があったら、まず最初にこのアルバムをお勧めします。