数々の作品を世に送出し、20世紀を代表する作曲家、ベンジャミン・ブリテンと、技巧派のチェリストとしてのみならず指揮者としても巨匠と謳われるムラティスラフ・ロストロポーヴィチ。この世紀の天才が競演した1960年代の歴史的録音がこのCDに収められている。
この2人の邂逅(かいこう)がもたらした成果は、楽曲の内省的分析と、哲学的解釈にもとづいたあらたな地平の創造であった。それは、シューベルトやシューマンのこれら決してメジャーとは言い難い作品に真剣にメスを入れ、情感に流されることなく作品の本質を見極め、それを顕わにする作業である。その結果、ここでの演奏は、決してきらびやかなものではないが、今まで見落とされていた作品そのものの魅力が浮彫りにされる結果となった。
このCDを聴き進めるにつれて、偉大な2人の芸術家の世紀の競演といったスペクタクルよりも、楽曲の素晴らしさの方に聴覚がシフトし、それぞれの魅力に引き込まれて行くはずである。(奈良与志雄)
ロストロポーヴィッチのアルペジオーネ・ソナタは、他の演奏家のそれよりもテンポがゆっくりです。初めて聴いたときには、ブリテンの最初のピアノの部分から既に非常にゆったりしているため、「あれ?」と思うほどでした。が、チェロが入ると途端にそんなことは忘れて美しさに陶然と聴き惚れてしまいます。何かをしながら聴くのは無理、たとえ何かをしていても、この曲が始まると、手を止めてじっと聞き入る、そんな名演奏です。
私も少しチェロを弾くのですが、ロストロポーヴィッチは私にとって永遠の憧れの対象です。一緒に入っているシューマンの小曲集も大好きなので(特に2曲目)、このアルバムはとってもお得な買い物だったとホクホクしています。
アルペジオーネ・ソナタは、アルペジオーネという現在では廃れてしまった楽器のために書かれた曲だが、チェロで代用しうるという形で書かれていたため、現在も演奏されている。本当にこの曲自体が廃れてしまわなくてよかったと、つくづく思う。
この曲を知らない人は、絶対に聴くべき。一度聴いたら、忘れられないメロディが、あなたの宝物になるはず。ロストロポーヴィチは、とても遅いテンポで、一つ一つの音符を慈しむかのようにじっくり歌う。特に弱音がすばらしい。どうしてこんなに感情をこめることができるのだろう。この曲の演奏の中ではベスト。
シューマンの小曲も、ドビュッシーのソナタも名演である。