カスタマーレビュー
TS-1 とは? S‐1誕生―国産初の世界レベル抗癌剤開発秘話
大鵬薬品で開発されたTS-1は、フルオロウラシル系の抗癌剤:5FUの効果を高めたもの。
5FUのプロドラッグ(体内で分解されると5FUとなる薬剤)のテガフール
+5FUの分解を遅らせるギメスタット(CDHP)、
+5FUによる消化管毒性を軽減するオタスタットカリウム(Oxo)
の3つをモル比1:0.4:1に配合した(改良型)経口抗癌剤。
胃癌・大腸癌・乳癌・頭頚部癌などに臨床試験(フェーズ3) が行われ、消化器系
の臓器に期待されているようである。
しかしながら、結局、DNA毒の5FUがベースになっているので、増殖の速い
癌には効くが、遅い癌やNFなどの良性腫瘍には効かない。TS-1単独では、効果
が弱く、シスプラチンなどの別のDNA毒を併用しないと実効果が余り期待でき
ない。さらに、増殖の速い正常な細胞、例えば頭髪細胞や免疫能を維持する骨髄
細胞などの増殖を抑制するので、従来から知られている頭髪の脱落や免疫能の低
下などの「副作用」は避けられない。
この改良型を20年もの歳月をかけて開発した著者本人(TS)は、自分の仕事
をとても誇りにしているようだが、客観的に専門家の厳しい目でみると、(国産品
でも)「画期的な開発」と称する物からは、かなりほど遠い。
今世紀に開発を望まれている新しい制癌剤は、このようなDNA毒/微小管毒の
単なる改良型ではなく、癌細胞の増殖には必須だが、正常細胞には必須でない、
ある特定の「発ガン性伝達因子」(例えば、「PAK」というキナーゼ) を選択
的に遮断できる薬剤 (合成化学薬品、あるいは天然物由来の生薬) を開発するこ
とである。そのような真に画期的な開発が日本人学者の手によって、近い将来な
されることを、切に期待する。そういう観点から、この本を読んでもらいたい!
基礎研究者の自画自賛 S‐1誕生―国産初の世界レベル抗癌剤開発秘話
著者も自画自賛と開き直っているのだから、それはそれでよいかも。
「国産初の世界レベル抗癌剤」?著者も本書で「師匠筋」と認めている梅沢先生のBLMや秦先生のMMCは、「世界レベル」とは著者は認めていない訳だ。成程、弟子は師匠を超えた?ならばCPT-11やL-OHPは?
FT-207に関する発見時や開発時のエピソードは、過去に関係者への取材に基づく書籍があり、完全な間違い(あるいは著者の思い込み?)も多い。BOF-A2への言及も、弟子としてどうなのかといった後味の悪さが感じられた。
更に本書は、物語として読む分にはよいのであろうが、薬事法的には問題があり、丸山ワクチン級のやばさが露見している。著者が基礎研究者なだけに、単なる自慢話で済むだろうと考えていることが大いに疑問。真実であっても法律違反を自白しているようなもの。これを美談として読む読者への影響(「医薬品の開発ってこんなものなんだ」と思われる)が心配。
抗癌剤開発に関する悪意の誤解を解く意味でも、良書。 S‐1誕生―国産初の世界レベル抗癌剤開発秘話
国産初の世界レベル経口抗癌剤TS-1(ティーエスワン)の開発ストーリー。
やや自画自賛的な部分はあるが、専門用語や化学式などは極力排除し、語り口で書かれた内容なので、一般の方でも読みやすかろう。
開発段階での、会社内での足の引っ張り合いや医者による低評価(悪意は無いにせよ)など、はらわたの煮えくり返ることも多々あったと思うが、後味悪くなく、さらりと書いているところが好感が持てる。
作者自身が前書きで述べているように、「抗癌剤開発というと、製薬メーカーがカネの力にものを言わせて医者を抱き込み、悪いデータが出ないように工夫するのは常識、と思い込んでいる方があまりに多い」のだが、マスコミ操作によるそのような誤解を解くうえでも、貴重な一冊である。
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