カスタマーレビュー
包括的で緻密な中世史観 中世とは何か
2002年におこなわれたルゴフの対話。ブルクハルトの断絶史観を批判し、中世とルネサンスとの間を連続したものとして考えるルゴフの立場から、西洋の社会的構造の基礎が中世期においてつくられたことが述べられていく。その信念はフェーブルやブロック、ブローデル、そしてルゴフ自身が「「中世」の一時代であるルネッサンスの専門家」(p37)であるという定義によく現れている。
中世を一つの文明であると位置づけるルゴフの論は、大胆な包括性と緻密さの両方がはらまれていて快い。語りによってなされた一般むけの中世解説であるが、テクスト論の視点からも重要な専門的知見が豊富に示されている。
トピックから中世の雰囲気が伝わる 中世とは何か
中世研究の権威(だそうな)ル=ゴフへのインタビューをまとめた本。彼自身の中世との関わりを含めて、中世史のトピックがいろいろ語られる。原題は「中世を探し求めて」だとか。トピック中心の内容的にはこちらの方がぴったり来る。「中世とは何か」の方が売れると思ったんだろうが、羊頭狗肉の嫌いがないとは言えない。
全体として体系的に書いてあるわけではない。しかし、それぞれのトピックが中世の雰囲気を伝えていて、通史を読んでいるより中世の雰囲気が分かって来たように思えた。それに、なにより楽しく読めた。
本書では、中世におけるキリスト教の役割についてかなりの部分を割いている。一般にも、その重要性は強調されている(通説を作ったのが彼なんだろうなあ)が、庶民の普段の生活を体系的宗教としてのキリスト教はどれくらい支配していたのだろう。研究に使える記録が教会側のものが多いので過大評価されているのではないかとも思う。
著者自身もカトリックの価値観の中で生きている人の様で、仏教徒の私としては多少違和感があった。社会のベースの廻り方に宗教ってどの程度影響を与えるものなのだろうか。現代日本に生活していると見当がつかない。
西洋文明の成立に興味のある人にはお薦め。
「中世はダイナミックで、創造力に満ちていました。しかし中世はそのことを公言しないのですよ」 中世とは何か
「IV ある文明が形をなす」が特に面白かった。教会は罪を犯した人々が天国に行くまでの時間をすごす煉獄という概念を発明することによって、世俗の分野が拡大し、収入が減ることに対抗しようとする。教会は煉獄で受ける苦しみは生者の代祷や寄進によって軽減されるというメカニズムを生み出したわけだ。そして、この概念によって人類は時間と空間の中で一つになったという(p.200)。ル・ゴフは煉獄と教会によるその概念の発明を必ずしも悪いものとはとらえていない。煉獄とは、天国か地獄かというオール・オア・ナッシングではなく、誰でも自覚している罪の意識を、天国に上るまでに味わう多少の苦しみで相殺できる、という概念であり、それは一般の人々に安心感さえ与えたのではないか、という。
ラストも感動的。本の最後ではシトー派修道士のカイサリウスが集めた会衆に話すための信仰の話が引かれる。それは煉獄で苦しみを受ける高利貸しが、生きている妻に「この苦しみから一刻でも早く抜け出せるように苦行を積んでほしい」と頼み、妻は世を捨て墓地で暮らすことにするという話。そして彼は7年後には半分白い着物、14年後には真っ白い着物を着て現れ、天国に上ったことを知らせる、というものだが、ここには「地において、また天においても、希望を求めつづける心があります」と語る。そして「カイサリウスは、これを読んだ私を驚かせ、今も私の驚きの一つでありつづけている、次のような一文を付け加えているのです。『煉獄とは、希望である。』私はこう言いたいと思います。中世は希望である、と」(p.299)。
中世ヨーロッパという文明 中世とは何か
本書では、アナール学派第3世代の雄であるJ.ル=ゴフ氏が築き上げた、中世ヨーロッパという「文明」に対する壮大なイメージが描き出されている。著者の業績である煉獄や聖王ルイの研究がエッセンスとして本書を特徴付けている。
中世において、銀行業が教会から忌避されていたことは有名であるが、知識人も同じ扱いを受けていたというのは新鮮である。彼らがいかに自己を正当化していったのか、それが本書の一つの見所といえよう。
しかし、本書は決して難解な研究書ではなく、一般の読者でもすんなりと飲み込めるものである。
読み物としてかなり好感の持てる本書ではあるものの、あえて欠点を指摘するなら、ヨーロッパ人独特の西欧中心主義が表に出ていることくらいだろうか。
中世文明への旅 中世とは何か
とかく漠然と抱いている西洋、中世といった概念や、さらには歴史のとらえ方について歴史界の重鎮ル=ゴフが対話の中で鮮やかに解き明かしてくれます。 中世の探求者ル=ゴフの語り口、素晴らしい翻訳と原書には無い多くの見出し、写真、図版などで、専門家ではない一般読者をも西洋中世に引き込んでしまうお薦めの1冊です。
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