カスタマーレビュー
人間の生の強烈さ 火を熾す (柴田元幸翻訳叢書―ジャック・ロンドン)
どの作品も極めてシンプルでありながら、迫真力に富んでいます。自然描写も感覚描写も臨場感が圧倒的。扱うテーマも著者の多彩な関心領域を反映してバリエーションが豊か。百年前に書かれた古さを微塵も感じさせない、小説の力というものを実感させられました。悲劇に終わるものもあれば、ハッピーエンドもありますが、共通して自然の厳しさに雄々しく対峙する人間の生の強烈な存在感にあふれていると同時に、それを越えた境地にまで達するかのような厳粛さがあります。おすすめ。
生きるか死ぬかぎりぎりの選択 火を熾す (柴田元幸翻訳叢書―ジャック・ロンドン)
「火を熾す」は、寒さで生きるか死ぬかぎりぎりの選択を求められている男性の状況が臨場感をもって伝わってくる物語。一気に読みました。訳者にも大きな拍手を送りたい。
ピーンと張りつめた緊張感! 火を熾す (柴田元幸翻訳叢書―ジャック・ロンドン)
私の人生の師であるヘミングウェイも、生死を描いたハードボイルド作家だが、この作品は生死の境の緊張感を凄まじく描写しており、まるで蜘蛛の糸を綱渡りしているようなもの。
感情が一切こもらない、ただ荒涼、殺伐、寂寥の極み。中でも「火を熾す」「生の掟」「生への執着」は秀逸。下手な冒険モノなど児戯に思えた。翻訳も素晴らしい。
バイタリティー溢れる強靭な主人公の魅力でぐいぐい読ませる重厚な作品集です。 火を熾す (柴田元幸翻訳叢書―ジャック・ロンドン)
「白い牙」「野生の呼び声」等の動物文学で名高いアメリカ文学の巨匠ロンドンの四十年の短い生涯に残された200以上の短編から翻訳家・柴田元幸氏がセレクトした傑作9編を収めたオリジナル短編集です。本書の帯に書かれた柴田氏の一文「ジャック・ロンドンは小説の面白さの原点だ」は誠に至言だと思います。本書に収録された短編は、どれも今からほぼ百年前に書かれた物でありながら全く古びず執筆当時の作品に込められた熱気も失わずに、今尚普遍的な輝きを放ち続けているように思えます。殆どの作品が迫力満点の臨場感に溢れており、誰もが主人公の生き生きとした活力漲るバイタリティーにぐいぐい引き込まれて一気呵成に読み終えるでしょう。彼の小説には結末の意外性は然程ありませんが、作品の基本理念と思える運命的な必然性の重みが心にずしりと響き深い感動を与えてくれますので、読後に理屈抜きで素晴らしい充足感と満足感が得られる事を保証致します。本書収録作品から三つの傾向の物を紹介させて頂きます。
『火を熾す』『生への執着』極限状況に挑む人間を描いた作品群で、犬や狼や樋熊といった動物も重要な役割を演じます。寒さと飢えという切実な苦しみが自分の身に起きた事のように伝わって来ます。『影と閃光』『世界が若かった時』幻想分野の作品群で、透明人間を目指したライバル同士の熾烈な戦い、夜毎自らの意思に反して野獣に変身してしまう富裕な実業家、と魅惑的な物語世界が展開します。『メキシコ人』『一枚のステーキ』著者お得意のボクシング小説です。場内を埋める観客のように興奮に我を忘れて没頭し、頁を繰る手が止まらなくなります。前者では人間の強靭な意志の力に畏敬の念を抱かされ、後者では老いて下り坂になっていくチャンピオンの末路に哀感と憐憫の情が込み上げて来ます。本書を読んで著者の重厚な作品の虜になりましたので、他の作品集も探して読みたいと強く思っております。
なぜ、いまジャック・ロンドンなのか。 火を熾す (柴田元幸翻訳叢書―ジャック・ロンドン)
ぼくは今の時代に、というか、こういうご時世だからこそ、ジャック・ロンドンを読むべきだと思います。原書は、そのすべてを手に入れるのは高くつきますが、インターネットで原典を見ることができます。僕はプリントして、翻訳と対照させながら柴田氏の訳に、感じ入っています。それにしてもなぜ、いまジャック・ロンドンなのか。
学校教育が堕落し、社会生活に活気がなく、アメリカの大統領に現状認識力がなく、したがって日本の政治家に見識がなく、経済は破綻し、人の考え方にも利己的厭世感が漂う、そんな傾向をみてとれる「今」(2008年11月)、しかも柴田氏が、なにゆえ雑誌コヨーテに連載されたのか、それは「生きる前向きな姿勢を感じ取ってほしいからだ」と手前勝手に思っています。
たとえば「一枚のステーキ」という短編。英文は中学3年生にでもよめる、SVOを中心とし、しかもわかりやすい内容です。へとへとになるまで何度もリングの上でボクシングをする。ステーキ一枚を食べたいがために。その、いわば単純な文章構成に、ただボクシングの光景を複数重ねただけの内容でありながら、読み終わると、おかしみだけでなく、生きることへの執念というか、徹底的に生き抜こうとするパワーといったものを与えられます。具体的な思想をもつわけでもなければ、アクションを起こす必要性に駆られるわけでもなく、ただただ、生きねばならぬ、という感じが湧いてくるわけです。
翻訳は、いつもながらイキのよい、軽快な訳文であり、そうした訳文と相俟って、自然と「生へのあこがれ」を感じさせてくれる筆致があります。
光文社文庫からも2冊、ジャック・ロンドンの作品が新しく(1冊目は読みやすくリズミカルです、2冊目はまだでていませんね)翻訳本が出ますが、いま申した意味で、見識のある出版社からは、今を生きるエネルギーの根幹部にある原理を、読み取ってほしいとの願いがあるようにも、小生、手前勝手に思っています。
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