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時代小説の粗捜し、 (13)江戸時代は、日本も夫婦別姓 独り祝言―鎌倉河岸捕物控〈13の巻〉 (ハルキ文庫 時代小説文庫)
「政次」、「しほ」の婚礼を祝って、江戸時代の女性名の呼び方や武家女性の名字について、まとめて触れてみたい。
第3話、「おみつとしほの供で政次が金座裏に戻ると、園村幾、佐々木秋代、静谷春奈の三人の女の姿があって、宗五郎が応対していた」…(中略)…『私どもは、しほの母親久保田早希の姉と姪にございます。此度、政次さんとしほの祝言のために川越……』っての、やっぱり思ったとおりだ。
こちらの作家先生は、どうやら、江戸時代のお武家さんの氏姓制度の約束を、現在のような「夫婦同姓」と取り違えておいでの様子。明治時代に、フランス民法に倣った現行民法の祖形にあたる法律が施行されるまで、日本も、婚姻法は東アジア世界のうちで、現在の中国、韓国、ベトナムなんかと同様、女性は結婚しても姓が変わらない「夫婦別姓」だったのを、すっかりお忘れだ。
源頼朝の妻女は「北条政子」、足利義政の夫人が「日野富子」、徳川秀忠の奥方なら「浅井達子(あざいみちこ=お江の方)」って具合でしょ。この寛政頃だと、第十一代将軍徳川家斉公の正妻(御台所)は、お大名、薩摩・鹿児島「島津氏」の出だが、徳川将軍家と身分格式の釣合いを整えるため、摂関家「近衛氏」の養女という資格でお嫁入りして、公式には「近衛寔子」を称した。
という次第で、久保田家の子女「幾、秋代、早希」三姉妹は皆「久保田氏」を称し、「春奈」は、母親「久保田秋代」の配偶者で父親の『佐々木(利瑛=諱?)の娘です』と自称するのが通例で、譲っても、せいぜい、『静谷(理一郎=通名?が配偶者)の家内です』というところまで。現に、本作品中でも、「しほ」の母親は、ちゃんと「久保田早希」、父親は「村上田之助」と、こっちは正確に書き分けている。親戚うちの会話でなら、『園村(振一郎=通名?が配偶者)のお姉さま(久保田幾)』とか、『静谷のご新造さま(佐々木春奈=正しくは「奥様」のはず)』ってな言い方もしたりするけれども、表向き他人様に向かって、武家の妻女が婚家の名字を自分の姓として名乗るなんて、明治時代になるまで有り得ないこと。
それと、本シリーズ『鎌倉河岸捕物控』、庶民女性の名前に「お」を付ける、付けないの仕分けが総じて不可解。
会話中、『おまえさん、名はなんと言いなさる』『お鈴です』(『銀のなえし』第4話)なんて、自分で自分の名前に「お」を付けて言うかねぇ。これでは自分から「佐藤さんです」とか「山田さんと申します」と、「さん付け」で名乗るのと一緒、まるで噴飯もの。
「そんなわけで(永塚)小夜、小太郎、子守のおいねの三人が……」(『冬の蜉蝣』第2話)など、地の文なら「子守のいね」で十分。それとも、自分の名を当人が口にするとき以外は全部「お」付きで通すか。ちゃんと使い分けできないなら、そのほうが角が立たない。
ピックアップしてみると、作中、豊島屋のお内儀は「とせ」、政次の母親は「いせ」、亮吉のお袋は「せつ」。かと思うと、亮吉が一目惚れした長屋娘姉妹は「お菊」「お染」、松坂屋はお姑さんが「おけい」、お上さんは「おえい」、船宿綱定の女将は「おふじ」、宗五郎の女房は「おみつ」って。いったい、どういう理由で「お」の有無を分けているのか、まるで見当がつかない。女性名についた「…子」というのは、たしかに名前の一部で接尾語ではないが、まさかと思うけど、この「お」って接頭語、これも名前の一部と勘違いしてるってわけなの?
なお、大名や諸大夫クラスの高禄旗本のお姫様でもない町家のお嫁さんが、「白無垢に綿帽子」なんてあり得ないというイチャモンは、この調子だとキリがなくなりそうなので止めておくことにする。
上つ方でもない庶民の婚礼に、白無垢、綿帽子スタイルが流行りだしたのは、記憶では、たぶん、昭和の天才少女歌手「美空ひばり」の結婚式からだったと思う。それまでは裾模様のある黒の振袖に角隠し、凝っても総模様の内掛けを羽織るくらいまで。お爺さん、お婆さんのアルバムを見てご覧なさい。
おまけに本書表紙カバーのこのイラストと来たら、「綿帽子」でなく「角隠し」。これって、作家さん、それともイラストレーターさん、どっちのチョンボ?
これだから楽しくって止められない『鎌倉河岸捕物控』のアラ探し。
『鎌倉河岸捕物控(14)隠居宗五郎』に続く。
宗五郎がかっこいい! 独り祝言―鎌倉河岸捕物控〈13の巻〉 (ハルキ文庫 時代小説文庫)
この作家、とにかく書くのが早い!
一年間にどれだけ本を出してるんだろう?
そのうちの「鎌倉河岸捕物控シリーズ」と「居眠り磐音江戸双紙シリーズ」を読んでるけど、この2つのシリーズだけでも1年に何冊か新しく出版されてる。
その「鎌倉河岸捕物控シリーズ」13作目。
政次としほの祝言がせまったある日、宗五郎に命じられ、政次、しほ、亮吉、彦四郎の幼なじみ4人は府中の六所明神に代参に行く。
そこで元八王子宿の仁侠の親分だったお爺さんと孫娘を助け、地元のやくざとのいざこざに巻き込まれる。
その後、会津藩の改革派国家老に助勢を求められ、改革派と江戸家老一派との争いに尽力する。
そして、8年前に端を発した詐欺事件を、会津藩の事件で留守にしている政次に代わり、久々に宗五郎が解決する。
今回もスカッとさわやかに悪者をやっつけまくります。
政次はありえないくらい強いです。
さらに今回は宗五郎が活躍する場面が多くて良かった。
政次は強くて正義の味方でさわやかですが、宗五郎のじっくりねられた男気がかっこいいです。
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