クラシックのCDを買うと、音楽評論家による解説がついてくる。作曲者はどういう生涯をおくり、この曲はいつごろに作られたもので、指揮者はどういう才人でなんとか管弦楽団は200年の伝統を誇る老舗でどうこう・・・
作品それに演奏者その他についていかにコンパクトにまとめ、そのうえ知性の香りも漂わせるか。それが腕の見せ所なのだそうだ。
本書の筆者はアニメDVDやムックに寄稿するものかきだそうで、これはそうした過去の文章をまとめたものである。そんなわけで、『カリ城』『ガンダム』『キングゲイナー』『エヴァンゲリオン』といった人気作について洗練されたライナーノーツが本書では堪能できる。
これはいちおうほめ言葉のつまりだ。しかしそれ以上を期待すると裏切られる。
ラブコメ『ラブひな』にある、原作にはなかった二人のヒロインの台詞を抜き出してそこからアニメ版のほうの深層主題を抽出してきたりと、随所に鋭い洞察があって感心させられるものの、結局いずれもライナーノーツの枠のなかに小奇麗に完結してしまう。実はこの手法、駄作や凡作をいかにも秀作に思わせるときに使うテクニックでもある。
CDやDVD解説は基本的にその作品を褒める、いやもっと身もふたもない言い方をすれば、購買者に向かって、あなたの買ったそれは10年に一つの逸品ですよお目が高いですねーとおだてあげその気にさせてあげるものである(実際この筆者はなかなかの詩人である)。そしてそれゆえに評論としての限界を本書には感じてしまうのだ。
心地好いけれどどこか閉じたアニメ・エッセイ集。珠玉の文章にうっとりするもよし。しかし、ジャパニーズ・アニメーションの本質はもっと歪んだところにあるようにも思うのだが。
2003年、東京国際アニメフェア主催、「アニメ感想文コンテスト」で最優秀賞を受賞したフリーライターによる初の単行本。教えられることや、言葉で書き表してくれてありがとうと感謝したいような文章が多数収録されていて、おすすめである。「エヴァンゲリオンのキャラクターは人形に似ている」「『エヴァンゲリオン』ほど、キャラクターを「死」や「狂気」に追いつめることで、キャラクターに生々しさを与えようとした作品はない。そこに、所詮セルのキャラクターであるにもかかわらず生まれる、エロティシズムがある。それは人形の持つ魔力と同質なものだ」などと指摘している。ただし、かれはフリーライターという立場からか、文体が平明でわかりやすい反面、純真でうぶな少年のような印象をあたえるのだが、本人もそういう人なのだろうか。