カスタマーレビュー
12年かけて、二人の天才が完成させた『坊ちゃんの時代』の人間群像とその時代に驚嘆!! 『坊っちゃん』の時代 (第3部) (双葉文庫)
まさしく『坊ちゃんの時代』。
あの時代、多くの魅力ある人材がうごめいていた。それを 全員 登場させ、あの時代を生き返させんとした野望。脚本の関川 夏央、そしてそれを画として完成させていった谷口ジロー。気の遠くなる話し。特に、絵にしていった谷口ジローはいかにしんどかったかと想像する。逃げないで、ついに完成させたのだ。実に12年間の長い年月がかかった。「未知の世界」に挑戦し続ける、粘り強さ、感性、創作力。
私は この作品にであったとき驚愕した。既存の「漫画」とは異なるジャンルの出現と感じた。
二人は 新しき物作りにおのれの人生の一番元気な時をかけた。こうして 私たちは 日本国で最高の作品と出会う幸せをえることができた。
関川 夏央と谷口ジローが作り上げた 過去の「日本漫画」を止揚した「宇宙」の登場。(これを 感動といわずして何を感動といえるのか。)日本国で これ以上の 「創造物」にまだ会ったことはない。日本に新しい文化が誕生したのだ。このことを確認し、二人の創作者に 感謝したい。世には偉大な人物がいるものだ。
しかし、今の時代と『坊ちゃんの時代』を対比し、これからどう生きるかは我らが、見つけねばならないと迫られているようでもある。
坊ちゃんの時代(第三部 かの蒼空に)。レビューも第三部 『坊っちゃん』の時代 (第3部) (双葉文庫)
(第2部のレビューから続く)
第3部の主人公は石川啄木である。ここで描かれる身勝手で見栄っ張りで借金まみれの、滑稽でもあり哀しい啄木の姿は、ほぼ実像どおりである。
西欧文明を受け入れ近代化へと進む中で悩む日本人の思想史を描こうとしたこのシリーズにおいて、啄木は異質であるが、第1部のあとがきで関川は『明治の時代は激動の時代であった…、明治末期に日本では近代の完成が形成され、それはいくつかの激震を経ても現代人の中に抜きがたく残っている。…つまり、われわれはほとんど(その本質的な部分では少しも)新しくない」と記している。
そして、この第3部のあとがきでは無理を承知ではあるが、と前置きしながら理由を挙げた上で、『啄木の精神は1960年代に末に生まれた青年(連載当時はこの年代に生まれた人は青年である)と似たような精神史の起伏をたどっているといえる』と記している。
そういう関川の考えに基づけば、やはり、啄木は主人公として取り上げられるべき明治人だったのであろう。と難しいことを考えなくても、谷口ジローによって描かれる、生活者としては失格者である啄木の姿(特に表情がいい)を中心としたこの第3部は、面白く楽しい。しかし、同時に哀しみも感じさせる作品である。
なお啄木は第1.2部にも少し登場しているが、ここでの彼の姿は有名なあの憂いを帯びた表情である。これでは、啄木のダメさは表現できないのははっきりしているのだが、あまりの違うので結構笑える。谷口ジローも結構苦労したのかもしれない。
(第4部のレビューに続く)
それでも啄木を憎めない人は多いだろう 『坊っちゃん』の時代 (第3部) (双葉文庫)
第1部が漱石、第2部が鴎外ときたこのシリーズ、第3部石川啄木を中心に話が進みます。2部までと比べて絵がすっきりして読みやすくなっています。ひとつご忠告、石川啄木を教科書に載ってる短歌でしか知らない人は、そのあまりのダメ男ぶりに唖然とするかもしれません(どうダメなのかはネタバレになるので自粛)。ここまで感情移入しにくい人物を主役に配しながら、それでも最後まで読ませるのは、明治人の(そして明治以降の日本人に共通の)屈折した自我意識を啄木を通して照射するストーリーテリングの巧みさか。 評価には星5つをけましたが、知人に「面白いよ」と勧めたら、全5部のうちこの第3部だけは「主人公がいや過ぎる」と途中で投げ出してしまったので、そういう人も少なくはないだろうと思い、バランスを考えてひとつ減じて星4つにしようかとずいぶん悩みました。でも、1部・2部での漱?や鴎外の苦悩を見て考えるところが多かった人なら、どれも同様に考えさせられる作品であると思い、星5ついきます。
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