カスタマーレビュー
教科書として最高のできばえ アーサー王と円卓の騎士―サトクリフ・オリジナル
アーサー王伝説自体がその時代その地方の様々な伝承を取り込んで成長した物語なのでそれぞれに矛盾があったり、つながりに脈絡がなかったりします。しかしこの本はそういう多くの要素をきれいにまとめて一連の物語にしており、そういう意味ではアーサー王の入門編、もしくは最終編としてふさわしいのではないでしょうか?自分の子供がもう少し大きくなったら、これを寝る前に読んでやろうと思っています。ブラッドリーの「アヴァロンの霧」シリーズやT・H・ホワイトの「永遠の王」マロリーの「アーサー王の死」など大作と読み比べると、かえってアーサー王物語のエッセンスを感じ取ることができる作品と思います。もちろん「落日の剣」「ともしびをかかげて」と重ねて読むことをおすすめします。
波長が合わなかったみたい アーサー王と円卓の騎士―サトクリフ・オリジナル
新刊だったので楽しみに読んだけれど、なんだか期待はずれだった。
むろん、サトクリフらしく、アーサー王という物語を自分流の話で書き綴り、始まり方も、終わり方も、不思議なものだった。
でも、やっぱり、肩透かしをくらったかのような気分だった。
まず第一に、サトクリフの作品は、歴史に名前が残りこそしないが、自らの運命に果敢に立ち向かい、人生と自分の果たすべき役割を発見する人間を主人公に据える。
そんな物語が、読む人間にも勇気を与え、作中の人物にも共感できる。
「運命の騎士」や「王の証」で感じたもので、「第9軍団のワシ」や「ともしびをかかげて」はその最高潮だったと思う。
ところが、この作品においては、最初からアーサー王という有名な人物がいて、なるべくして英雄となり、定められた運命として滅びてく。
この作品ではアーサー王は死ぬことはなかったが、その破滅の種となる子供はうまれた。
むろん、他の作品の中でも、「第9軍団のワシ」の主人公が命からがらとってきたワシは結局、軍団の復活とはならなかった。
「ともしびをかかげて」の主人公が退けた軍勢も一時的なもので、結局、侵略されてしまう。
それでも名もなき主人公たちは己の存在意義をかけて運命に立ち向かったのであり、訳知り顔のマーリンが「これは別の物語の話じゃ」というわけではない。
「運命の騎士」の主人公は、その寸前に騎士になることを魔女に予言されたが、それとこれとは違う気がする。
結局、僕は予想と違う作品のできばえに失望しているだけなのかもしれない。
この作品も、権威ある賞をうけ、僕がけちをつけるなんて恐れ多いことなのかもしれない。
でも、なぜか、この作品にはサトクリフの息吹を感じることができないのだ。他の作品と同じようにブリテン島を物語の舞台としていながら、主人公たちがその島を歩いているという気がしない。
作品では必ずといいていいほど説明される季節の微妙な変化や、風土の巧みな説明が少なくて、話はただ大きな事件を中心にして流れていくようだった。
必ずしも3部作全てを読む必要はなさそうです。 アーサー王と円卓の騎士―サトクリフ・オリジナル
アーサー王物語と言うと、今までは漠然と一つのまとまった物語であるという認識だったのですが、実際はあちこちの伝承や物語が重なり合いながら、そられがまとまったものがアーサー王物語として確立されているようです。そして、この3部作はタイトル通り、そのサトクリフ版。サトクリフがまとめたアーサー王物語です。
全体としては一つの物語を形成しており、各所に設けられた伏線も部をまたがって形成されるのですが、一つ一つを読んでいくと、各部の印象に大きく相違があり、必ずしも全体を読む必要はなさそうに感じました。
円卓の騎士:
アーサーの出自から円卓の騎士が集い、王国の黄金時代が築かれるまでの話。各章がそれぞれの騎士のクエストを短編集的に綴って行きます。ハッピー・エンドが分かっている部でもあります。
聖杯の物語:
聖杯探求の話ですが、主題はランスロットとその息子ガラハッドの対比。特に、聖性と人間性について、運命に導かれながらも人間性を捨てきれずに聖杯探求に失敗してしまう前者と、聖杯探求を成功させ神に召されてしまう後者の対比が中心のようです。
アーサー王物語の中では、冒険に出かけた騎士たちの多くが失われてしまう、王国没落の始まりを印象付ける位置づけです。
最後の戦い:
王国の終わりの始まりから、いかに王国が崩壊していくのか、そしてその中でも失われないもの、人間性が主題です。1部とは対照的にバッド・エンドがはじめから分かっている内容です。
アーサー王物語の顛末だけを知りたいならば、1部と3部だけを、アーサー王物語を読まなくとも、関連するまとまった一つの物語を読んでみたい人には2部だけを読むことをお勧めします。
全体を知りたければ、もちろん3部作全てを読み通すことをお勧めしますが、そこをあえて2冊で絞めたいという人には、作者は異なりますが、永遠の王、上下巻も良いかもしれません。
アーサー王って何? アーサー王と円卓の騎士―サトクリフ・オリジナル
好きな作家が結構イギリス人多いせいか、前々からかなり興味を持っていたアーサー王伝説。マーリンってどんな人、エクスカバリーって何、トリスタンとイゾルデってどんな話、ランスロットってかっこいいの、円卓の騎士って何、そもそもアーサーって何者で何をしたの?他の本でアーサー関係の記述が出るたびにどんどん疑問は増えていき、断片的な情報は入るものの、全体像が掴める事はないままでした。 だから、アーサー関係の本を読もうとしたことは何度かあったのですが、その度に挫折しました。「なんでこんなことで決闘?!」「そんな悠長なことしてる場合か?」など、現代の感覚では理解できない事柄に出会うたび唸り声をあげる始末、もちろん言語は難解だし、とても最後まで読める状態ではなかったです。 だけどこの本では、騎士の一つ一つの話に興味が持て、現代との違和感もなく一気に読みきることが出来ました。わりと淡々とした語りで、妙にロマンチックな表現や、必要以上の大げさな表現もなく、それでいて惹きつけられる文章でした。 上に書いた長年の疑問も解け、残るは「聖杯ってどんな冒険?」「アーサーは復活するの?」。この疑問を解いてくれるのも、きっとサトクリフのはず。彼女の本でなら挫折しない自信が出来ました。アーサー王伝説の全体像を掴めるのも間もなくです。
訳に信じられないミスが! アーサー王と円卓の騎士―サトクリフ・オリジナル
物語としては、私もサイコー!と思うのです。中世ブリテンの森の奥深くの静かな空気や、騎士や王妃たちの高潔さなどが伝わってきます。日本語訳もある程度は原文の雰囲気をうまく表現してくれているだろうとは思います。 しかし、犯してはならないミスがあるのです! 他のレビュアーも述べられている通り、円卓の騎士たちのお話が一話完結的にまとめられていますが、その物語中の主人公の名前が途中で変わってしまっていたりするのです。こんな不注意は許されません。主人公の騎士の名がガレスであるところ、数ページあとでは兄の名、ガへリスにすりかわってしまっている。また、細かく言えば単純な脱字があったりします。どんなにすばらしいサトクリフの名文もこれでは台無しです。とたんに現実世界に戻されてしまいます。編集者さん、なぜ、もっと注意してくれなかったのでしょう?!
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