これまで青色発光ダイオードと青色半導体レーザーについては、中村修二氏の功績ばかりが断片的に紹介されており、彼一人の成果が目立っていた。本書を読んで彼以外の人の偉大な成果がよく分かり、しかもそれらすべてが日本人の業績であることに勇気付けられた。特に赤碕氏は私が在籍していた名古屋大学で研究されていたということを知り、非常に誇りに思える(と同時に彼のことを知らなかった自分の無知が情けなくもあるが)。中村氏の巧みなマスコミ戦術によりあたかも青色発光ダイオードと青色半導体レーザーは彼一人の業績と錯覚させられてしまうが、本書では他の人の偉大な業績、知恵が紹介されておりこれらの開発経緯の本当の姿が見えてくる。
構成は6人の研究者の列伝ですが、注目されるのはやはり中村氏の部分です。
本書の前半では日亜での中村氏の開発の経緯を2つの章に分け、その間に先駆者である赤崎氏と松岡氏の業績を挟むことによって
青色ダイオード・レーザー開発全体の流れをダイナミックに描き出すことに成功しており、この部分は非常に読み応えがあります。
しかしながら、研究者の人物描写に厚みを持たせるためにはもう少し技術解説を充実させた方が良いという印象を持ちましたので星は四つとしました。
例えば、中村氏の成功が印象的に描き出された反面、後半の秋元、河合、大場氏の章が「こんな研究者もいた」程度の付け足し的印象になっていますので、
青色開発全体の流れを図表も入れてもう少し詳しく解説した章を後半最初に挿入し、その中で秋元、河合、大場氏の業績の位置づけを明確にして興味を促す、等も
悪くないと思います。
また、どんな構成にしても誰もが中村氏を中心に本書を読むことは避けられないでので、中村氏に関係する部分をもっと膨らます意味で
序説に他の電子デバイス開発との比較検討を挿入し、青色開発の特異さ=裁判の判決でも述べられている「稀有な例」としての
中村氏の特異さをよりいっそう鮮やかに浮かび上がらせるのも良いと思います。
もっとも望ましいのは中村氏が「次の研究」を自ら行うかプロジェクトの陣頭指揮をとってもらい、その結果を終章として加えて技術解説も工夫した
第二版を数年後に刊行していただくことでしょうが、さすがにそれは無理そうです。
(仕事の中心は後進の育成という一般的な立場で終わるとしたら、これが本当に中村氏の特異さを生かす道か疑問に感じる部分もありますが、
10年という年月は軽くはないので、中村氏には落ち着いた生活をする権利が当然あるわけですし、200億円も高い金額ではないでしょう。
青色ダイオード、最近は信号機でもよく見ますね。まぁ、あの「青色」なら中村修二氏が作る前のでもよかったんじゃないのか?という気もしないではないですが・・・
この開発に関しては、中村氏だけ、あるいはよくても赤碕氏どまりの紹介が多いように感じましたが、本書では青色ダイオードにからむ、色々な技術者、研究者の成果や物語がよくまとめられていて、非常に面白く読めました。