スミスの短編にはファンタジーとSFとホラーを併せ持った魅力があります。特に中世フランスを模したアヴェロワーニュという世界を舞台にした作品群は、妖しくも美しい食虫花のごとき異彩を放っています。
言うなれば泉鏡花の世界の中世フランス版、といったところでしょうか?
表題作『イルーニュの巨人』もアヴェロワーニュものです。存在自体が涜神的な強大な巨人に対して、主人公は孤独で絶望的な闘いに挑みます。
どの作品にも、おぞましくも幻想的な顛末が描かれていますが、不思議と不快感はありません。むしろ快感の陶酔に溺れることができます。
訳者も、こういったジャンルに造詣の深い人であり自身も優れた作家なので、洗練された日本語の美しい文章として違和感なく読めます。