カスタマーレビュー
切れ味鋭い論評 教育再生の迷走
時代の流れを把握し,データに裏打ちされた筆者の論評は,切れ味鋭く日本の教育改革を分析・批評する。現在進んでいる政府主導の教育改革の論理的矛盾や欠陥を指摘するだけでなく,諸外国の実状をふまえた提案も行っている。
論の内容についての賛否は人それぞれだと思うが,合理的な批評を受け入れる懐を,行政機関や諮問機関はもつべきである。
教育「再生」会議の総括 教育再生の迷走
教育再生会議において、教育非専門家から無根拠な妄想に基づき次から次へと涌いて来る言論をある種呆然と眺めていた人間にとって本書に収録されている筑摩Webで随時アップされた苅谷教授の実証的批判・冷静な論考は本当に救いでした。結局、教育再生会議はその勇ましい掛け声とは裏腹に大した改悪も成すことなく一応未だ名称を変えつつ存続しているので何ですが自滅に近い形で萎んでくれましたが、一時の熱狂的な教育再生を持て囃す風潮とそこで流れた言論はきちんとこの書とともに総括されるべきだろう。単に当時の論考が再録されているだけでなく、苅谷教授自ら「振り返る」と題して当時の言説を「今」という視点から再考と解説が付記されており非常に簡明なものとなっている。
「後世の教育史家が振り返ると、おそらくは教育と政治をめぐる問題が露呈した、教育への政治の介入が(ある意味、非常に稚拙で拙速なかたちで)行われた時代であったと特徴付けるのではないか。新自由主義や新保守主義といった政治の潮流が、教育を翻弄しようとした時代であったという評価も出てこよう。その同時代を、一人の教育社会学者がどのようにとらえ、何を考えたのか。「同じ轍」を踏まないための同時代の証言として、以下の論考をお読みいただければ幸いである」(はじめにより)
と書かれているように、マスコミや政治家あるいは教育を語る非専門家の教育不安言説に無根拠、非定量的に煽られぬように。どのようにしてその種の言説と向き合うかという格好の生きた教科書となるであろう。まさにここから「教育再生」は始まるのではないかと考える。
実証なき教育行政への突っ込み 教育再生の迷走
なんだか体調が悪いなあと思って、病院に行ってみたところ、出てきた医師に検査もされないまま、「こうすればよくなるから」と突然手術を勧められて同意する人はいるでしょうか?やっぱり検査をして、どこが悪いのか、何が原因なのかを特定して、それから施策を講じる医師にかかりたいと思う人が大半ではないでしょうか。
教育に関しても、教育基本法改正など教育改革はずっと叫ばれたまま、さまざまな「改革」が学校現場に持ち込まれたり、持ち込まれようとしたりしていますが、それぞれの効果を測定しようとすることもなく、そして現状の正しい分析も行われないまま単純に現場の負担を増やしてしまい、結果的に生徒へのしわ寄せが行われるような(検査もなしでいきなり手術をするような)「改革」がまかりとおっています。こういった現状へ、実際に教育社会学者の第一人者として大規模な社会調査を行ってきた筆者による、安部内閣周辺の「改革」への鋭いつっこみが行われています。そして、首相が変わっていても、このつっこみの力が失われる事がなさそうな現状や、この筆者がオックスフォードに転出してしまった事への憂鬱な事態をまず見つめて、今ここの教育を考えるときに必読の一冊でしょう。
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