カスタマーレビュー
余白を残したまま、娘の目線で語られてゆく母の物語。 眉山 (幻冬舎文庫)
徳島で、阿波踊りは特別なものであるようです。徳島で子供(私生児)を産み育てた、ちゃきちゃきの江戸っ子である母親の最期を描いた物語です。決して娘に語ることのなかった母親の秘密が次第に明らかになってゆきます。眉山は、徳島市内にある目印のような山です。徳島の人は皆眉山を見ながら暮らしているといって差し支えないでしょう。著者は、無論シンガーソングライターとして偉人の部類に属する方ですが、生み出される曲の魅力は、多分に散文詩的な歌詞にあると思います。この作品は、一曲の中では納まりきれなかった物語が著されたものだと思いました。余白を残したまま、娘の目線で語られてゆく母の物語です。知らなかった母親の人生に思いを馳せると思います。
悪くはないけどいまひとつ。 眉山 (幻冬舎文庫)
映画のCMがTVで流れてて、その映像がとてもよかったものだから、気になって小説を読んでみた。
文章もわるくはないんだけど、物語のテンポかけなんだかいまひとつという感じだった。
良くも悪くも、全体的に淡々としている印象。
あと、主人公の母以外の登場人物にたいして魅力がないのは残念。
映画なら面白いかも 眉山 (幻冬舎文庫)
まるで,さだまさし氏が作り歌う歌のように透明感あふれる素直できれいなお話です。
映画化されたものを見れば,感動を得られるような気がします。
しかし,映画を見るより先に,実家にたまたま置いてあったこの本を手にとって
見てしまったのが間違い。
「文字」で勝負する小説としてみれば,特に工夫もなくまっすぐにストーリーを紡ぐ技法や
「ひらひら」「吃驚」といった同じ単語を多用する変化のなさなど,
ちょっとどうかなと思いました。
キップのよいお母さんは確かに魅力的ですが,
彼女はなぜ「献体」にこだわるのか,といったテーマの答えはあまりにお見通しだし,
答えの想像がついても,でもなんで献体までするのよ,と釈然としない。
それだけ重い課題であるのが「献体」であり,重いだけにどうも消化し切れてないというか,
このきれいな小説の流れをかえって濁し,唐突感を与えているとさえ感じました。
また,この小説には,「患者はホテルの客と勘違いしてないか。どうせあの患者ももうすぐベッドをあけるからそれまでの辛抱だ」云々と
末期がんの患者がいる前で言い放つバカ医者が出てきますが,
そんなありえない医者が改心するばかりか,
いつのまにか主人公の女性といい仲になったり,献体について重々しく語ったりと,
人間不信になりそうな人格・扱いの変わりようで,この点も唐突でした。
清冽な愛 眉山 (幻冬舎文庫)
高校生の時、戸籍謄本で自分が私生児であることを知った咲子に対して、母は「大好きな人」だったからとだけ言う。故郷の東京を離れ、遠く徳島で咲子を生み、ひとり夜の街で店をきりもりして咲子を育てた母の凛とした美しさ。”神田のお龍”という、江戸っ子のきっぷと面倒見のよさ、そして本当の意味での人間愛をそなえた母の姿勢は見事である。
医師として言ってはならない言葉を吐いた寺澤にたいして母が小気味良く啖呵を切りながらも、未熟な寺澤を諭し医師としての使命に目覚めさせていく場面は圧巻である。
なぜ母が徳島を選び移り住んだか、なぜ死後の献体を申し出ていたのかの理由が次第に明らかになるにつれ、咲子の父へささげた、母の生涯を貫いた深い清冽な愛情がひたひたと胸を打つ。小説を通して、曲がったことが大嫌いで、深い人間愛に裏打ちされた凛とした母の姿勢に心洗われ、気持ちの良い読後感にひたっている。
母の生き様を知ったとき、娘は・・・ 眉山 (幻冬舎文庫)
死期の迫った母の元へ帰った娘。
これまで知らなかった母の、苛烈な生き様を知る事になります。
道ならぬ恋に生き、最期までその恋を貫き通した母。
女々しい部分を見せず、きっぱりと顔あげて背筋を伸ばし、誰に頼ることなく
その恋の結晶である娘を愛した。
いつでもその凛とした姿と、激しい言葉の裏に他人への深い理解と愛があった母。
そんな母に叱られ、諭された人たちがやがて周囲に集って、たくさんの人達に囲まれていた母。
阿波踊りのこみ上げるような情熱と熱気の描写が素晴らしく、母親の苛烈な生き様と重なります。
小説のクライマックス、阿波踊りの会場ですれ違う、父と母を見つめる娘。
一度も視線を投げなかった母は、しかし、今でも文字通り全身全霊を捧げて父を愛しているのだと
最後の最後に分かります。
その愛の深さに涙しました。
一人の女性の悲恋話に終わらせず、生きる事への情熱を見せられたかのような、そんな読後感がありました。
映画は見ていませんが、小説は間違いなく素晴らしいです。
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