英国パブの名前をタイトルにした“パブ・シリーズ”の13作目。
前作『「乗ってきた馬」亭の再会』に引き続き、舞台はアメリカとイギリスを行き来します。
そして事件自体は一話完結が基本のシリーズではめずらしく、過去の事件が絡んだ作品
となっていますので、初めての方はぜひ1作目から読まれることをおすすめします!
ロンドン警視庁のジュリーは“警視”という地位まで行っても、じぶんの仕事に迷いを感じ悩んでいます。
そして戦争で幼い頃、目の前で母親を亡くした疵が、今も大きく心に残っている。
一方、『「禍の荷を背う男」亭の殺人』でジュリーと知り合い、捜査の手伝いをするようになった
“元・貴族”メルローズも、子どもの頃に親を亡くしている。
今までは、主人公であるジュリーが中心の感があったモノローグですが、
本作ではジュリーとメルローズ、二人の心の声がたくさん描かれています。
そして前作の中でさりげなく明かされた、メルローズの“爵位を返上した本当の理由”への想いも…。
このシリーズの本当の読みどころは、“ミステリー”よりも、むしろ“ドラマ”だと思います。
ジュリーやメルローズだけでなく、子どもも大人も、出てくる多くの人たちが、悩みや迷い、
淋しさや孤独、空しさなどを抱えて、生きています。
それを事件の捜査や解決を通して、仲間と分かち合ったり、つかの間忘れたり、
そしてユーモアや優しさで、ささやかに温めあったりして生きているように思います。
この13作目で翻訳発行が止まっているのは、本当に残念です。
もっと多くの人に読んでほしいと思える作品です。
マーサ・グライムズの「リチャード・ジュリー」シリーズの一冊。米国ではこの後さらに三冊が出版されてますが、日本ではこれが最後のようです。根強いファンがいるはずなんですが、少ないのかなぁ。残念。
ぜひ一冊読んでみてください。一冊読めば、きっと、シリーズの最初から読みたくなると思います。ミステリなのに、何度読んでも飽きません。