カスタマーレビュー
読み応えのある作品 風の果て〈上〉 (文春文庫)
青春期を、同じ道場で過ごした5人の仲間が成長し、やがて、老境にさしかかるまでを描いた作品です。これから読まれる方のために、ネタばれしない程度にあらすじを書くと、青春期は、身分の違いを超え、仲良くしていた5人ですが、やがて、身分相応に、それぞれの道をいくことになります。出世するものもいれば、低い身分ながら幸せな家庭生活を営むもの、荒んだ人生を歩むもの等々。
物語は、過去と現在を行きつ戻りつしながら、主人公に、そんな越し方を振返り、人生とは何だろうということを考えさせると共に、我々読者にも、考えさせる作品になっています。
約1000枚の長編ですが、読み出すと、次が気になり、一気に読めてしまう作品になっています。ある種、蝉しぐれに似た作風ですが、重厚感では、決してひけをとらない素晴らしい作品になっています。藤沢ファンであれば、是非、一読を。
権力の果て 風の果て〈上〉 (文春文庫)
藩の家老職にある主人公がかつての友から果たし状を受けることからこの物語は始まる。
旧友を訪ね回るなかで過去を回想するという構成となっており、回想される剣と友情と、別離、成長の話は藤沢作品の「侍もの」の王道である。
本作品が、藤沢作品のなかで、めずらしいという特徴は、下級武士の主人公が藩の最高権力者に上り詰める点にある。もちろん、単なる立身出世物語ではない。
農政官僚としての苦闘の日々や、権力を昇る過程でのリアルな描写がされている。主人公は出世してもなお、下級武士の視点を失わない存在として語られている。
最後のシーンで家老となった主人公は権力の階段を上る過程で失ったもの、得たものに思いをめぐらす。権力者としての自分を客観的に(自嘲気味に)省みる老練な為政者として日常に戻っていく。
ここに描かれているのは現代の我々だ 風の果て〈上〉 (文春文庫)
組織の中でたくましく生き抜き、より高い生活を目指すと非情にならざるを得ず、それを追っていくとどこからか自分を呼び戻そうとする声が聞こえる。「お前はもっと純粋で、人への思いやりがあったではないか」と。その声の主は少年時代の自分であり、貧しくとも素朴で温かい心を持ち続けている友であったりもする。栄華を極めてもなお足るを知らない人間の寂しさ、むなしさは現代の我々に通じるものです。あえて甘さを加えないようにしたことできりっとした見事な作品に仕上がっています。過去と現在を行き来しながら、人の移り変わりを描く構成力、洞察力はすばらしいと思います。NHKの佐藤浩市主演のドラマも上出来でした。蝉しぐれもいい作品ですが、60歳代になった私はどちらかといえば風の果ての方が好きです。
仲間の良さと維持することの難しさ 風の果て〈上〉 (文春文庫)
代小説ではあるが、現代にも通じる話です。
主人公は隼太(桑山又左衛門)ですが、話は隼太と言っていた、まだ養子に行く前の仲間たちとの話です。一緒に飲み食いし、一緒にいたづらをし、同じ女性に憧れた、そんな気の置ける仲間たちです。その彼らが成長し、それぞれの役割を持ち、立場も違ってきます。主人公が家老職についた時、何人かは死んでおり、仲間を蹴落としたり、ある者とは決闘をし死なせてしまいます。この仲間に対する意識とその変化の様子が、全編に描かれています。読んでゆく内に、仲間というものの良さと同時に、それを維持することの難しさを感じさせてくれます。
作品は、主人公が家老でありながら、昔の仲間の決闘を受けるところと、若い頃の仲間たちの様子が交互に描かれます。この構成の上手さが先ず目に付きます。
それと、描写の見事さで、この名もない藩の風景が手に取るようです。
こうした作者の小説家としての力が、一気呵成に読ませる作品を作るのでしょう。
秀逸 風の果て〈上〉 (文春文庫)
同じ道場に通う武家の若者たち。一人を除いて下士の次三男である彼らの対照的な人生が、ときに交差しながら続いていく様子が静かに描き出され、読む者を惹きつけて離しません。
「友」という存在が一義的なものでなく、人間関係は時間の経過とともに役割が入れ替わって続く微妙なもので、いつの世も人生は複雑なのものだと教えられる気がします。
ドラマが始まったので急いで読み始めましたが、慌てて損したという位一気に読めました。
最新レビュー 風の果て〈上〉 (文春文庫)
風の果て〈上〉 (文春文庫)を買った人はこんな商品も買っています
関連ページ
|