カスタマーレビュー
ディックは彼岸の夢を見るか? ユービック (ハヤカワ文庫 SF 314)
ディックの作品の特長のひとつである、”幻視感”が最も色濃くでた作品だと思います。いろいろな意見があるでしょうが個人的にはディックの作品をいくつか読んでいる人向きだと思います。初めてのディック作品ということなら、むしろマイノリティーリポート等の方が作品の良さを率直に楽しめると思います。しかしディックのエンターテイメント的な他の作品にはない”何か”があります。 イナーシャ(不活性者)のチームが、能力者を抱える企業と対決するために、月面上の植民基地に出向いていくわけですが、そこで爆弾テロを受けイナーシャ側の責任者が瀕死の重傷を負ってしまいます。部下達は月から脱出し、彼を延命させるため冷凍処置をしてスイスの”安息所”に向かいますが、月での爆発事件を境にして、少しずつ現実が夢に浸食されてきて、やがて夢と現実が渾然一体となってゆきます。読者は主人公のジョーと共にその悪夢のような世界に入り込んでいくわけですが、はたしてジョーが仲間と共に夢を見ているのか、それともジョーが誰かに夢見られている存在なのか、あるいはそもそもの初めから、これらは夢そのものであったのか。読者は”小説を読む”という行為の前提までもが揺すぶられ、不安と混乱に陥れられます。しかしたとえ論理的な矛盾があったとしても、つい考え込まずにはいられない不思議な魅力がここにはあります。いったい月面基地で何が起こったのか、どこまでが現実で、どこまでが幻なのか、ぜひ一読して謎解きに挑戦してみてはいかがでしょうか。
「合意された現実」の裏側―「遍在する神」 ユービック (ハヤカワ文庫 SF 314)
交錯する「現実」と「悪夢」。――ひょっとすると、この世界は、何者かがうなされながら見ている「ナイトメア」なのではないか? そこに生きる「私」とはなんだろう?「真実」の世界は、実は「現実」という歪んだスクリーンによって覆い隠された、その「裏側」にあるのではないか?
それを、露わにする「ユービック・スプレー」なる「ガジェット」―― いかにもメタフォリカルではないか。「ユービック(UBIK)」―― これはラテン語の「 ubique 」すなわち「神の遍在」に通ずる・・・「新プラトン主義」あるいは「グノーシス」的世界観に近い・・・。
こうした、ディック作品に見られる基調的なモチーフが、比較的、平明に描かれている傑作である。
破綻しそうでしない幻惑怪奇 ユービック (ハヤカワ文庫 SF 314)
たしか、ディープなファンの話し合いでディック長篇の面白さ一位をとった作品。
破綻しそうで破綻しない困惑したストーリーが、最後見事に論理的に納得いく形で集束する。
初心者には難しいかも。退廃していく世界を映像化したら格好よさそう。
珍しく話がうまくまとまってます(笑) ユービック (ハヤカワ文庫 SF 314)
大実業家スタントン・ミックの依頼を受けて、超能力者狩りを行うべく月面に着陸したランシター合作社の11人の不活性者たち。しかしそれは、超能力者集団・ホリス異能プロダクションが仕掛けた巧妙な罠であった!
超能力者側の爆弾で社長のランシターを失ったジョー・チップら不活性者は辛くも月から脱出するが、地球に戻った彼らは自分たちの周りで異変が起こっていることに気づく。喫茶店で出されたコーヒーは腐っていて、ポケットから取り出した貨幣はもう使われていない古いもの。そして彼ら自身の身体も老化し始めていた・・・・・・全てのものがとめどなく朽ちていく死の世界。
そしてこの退校現象を食い止めることができるのは「ユービック」と呼ばれるスプレーだけなのだ。ジョー・チップはユービックを、そしてこの異変の原因を求めて、必死の探索に乗り出した!
超能力者、不活性者、そして半生者。灰色の世界は時間退行現象によって益々グロテスクになっていく。ミステリ仕立てのサスペンスフルな展開と、次々と明かされる意外な真相。絶望的な圧迫感と巧妙なプロットは、ディック作品の中でも出色の出来映えだ。孤軍奮闘するジョー・チップの姿も感動的。ディックらしからぬ(笑)、見事な結末もいい。
初心者の方におすすめです。 ユービック (ハヤカワ文庫 SF 314)
すごくひきこまれる作品です。ディックの難解さや破綻がなく、明快です。初めての人にはこれがよいと思います。ユーモア、悪夢的世界、救済などディックの要素が理解できると思います。
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