カスタマーレビュー
国鉄民営化のロジックと、現実に起きたプロセスがよく分かりました 国鉄改革の真実―「宮廷革命」と「啓蒙運動」
国鉄の分割民営化について政治的なコンセンサスが出来てきたのは、第二臨調が発足した1981年から、第二臨調の基本答申(82年7月)を受けて設置された国鉄再建監理委員会の答申が提出される85年7月にかけて。この最終答申の直前に国鉄首脳陣が更迭され分割民営化のプロセスが動き出すことになるが、それから87年4月のJR発足までの1年9ヶ月を中心に詳述。特に筆者が当事者であった労務・要員対策については、政府だけでなく与野党の政治家や労組とのやり取りが生々しい。
筆者が指摘するように、国鉄の労使関係は世間の常識から外れているが、それは国営企業に内在する問題なのだろう。国会の承認を経ないと賃金を決められないということは、合意形成に時間がかかり最大公約数的な結論を求めがちな政治の場に経営の最重要事項を委ねることになり、結果として労働生産性の低さが温存されてきた。設備投資も同様で、東海道新幹線の収益を全国の赤字路線維持や新しい新幹線建設のために内部補填してきたため、東海道新幹線自体の設備投資は最低限の維持補修だけで抜本的な能力増強に資金を投じられなかった。この新幹線収益の内部補填が鉄道ネットワーク全体の効率改善に役立てば良いが、振り返ってみれば国鉄の赤字体質の延命措置にしかならなかったわけである。
当事者としての筆者やその周辺の人物の動きを見るにつけ(もちろん筆者が自身を完全に客観視できているわけではないだろうが)、国鉄の分割民営化のような国家プロジェクトでも動かすのは「人」であって、現にリーダーシップを取る人達のアサインメントが改革の成否を決するのがよく分かる。筆者だけでなく、改革の本質からぶれない姿勢を取り続けた杉浦総裁や、資産分割とキャリア人事の担当として筆者曰く「宮廷革命」を主導したグループなど、陰陽ともに分割民営化を体現してきた人・組織の影響は極めて甚大だと思う。
葛西氏という侍の話。これはおもしろい。 国鉄改革の真実―「宮廷革命」と「啓蒙運動」
一流のビジネス書である。
私と同世代の人間なら、「順法闘争」とか「スト権スト」とか当時子供の私には、意味の分からない言葉が国鉄施設に殴り書きをされていたのを覚えているだろう(どうやら、違法ストで適法なストを獲得するという意味らしい)。
それから、荷物列車から荷物が無造作に放り出されるのを見て、憎悪に近い感覚を覚えた人も多いのではないだろうか(実際、鉄道貨物で着いた荷物には壊れたものも多く、送ってくれた人の好意が無になったことに親が寂しい顔をしていたのも思い出す)。
あれから、三十数年、国鉄はJRに変わり、サービスが大きく向上したことは、国民自らが肌で感じていることだろう。
先日、葛西氏の講演を聞いて大変おもしろかったので、買ってみた。
本書は鉄道ファンと言うより、企業改革とくに労務改革に関心を持つ人にインパクトを与える本であろう。
政官労との相克の中、改革は進むが、ここで重要な役割を果たしたのが、いわゆる国鉄改革三羽烏以外では、中曽根総理、杉浦総裁の存在である(ただ、良いように書きすぎてある。まさかとは思うが誉め殺し?)。
ただ、実は陰のキーパースンは、あの元陸軍参謀本部の瀬島龍三でもあったかのような記述も散見される。
うまくいっていない公的組織の背景には労働組合の存在があるというのは誰もが感じているのではないだろうか。
国鉄、NTT、日航、社会保険庁(郵政は?)しかりである。
NTT、日航が劇的なサービスの改善、経営の改革を果たせていないのは、やはり葛西氏のような能力ある人を組織に抱えていなかった故の必然であろう。
人件費を切ることが改革だとの誤解もあるようだが、郵政改革も社会保険庁改革も最後は長期的ビジョンを持った有能の「士」を得るかどうかであろう。
国鉄改革は、すばらしい先例である。このような途を先見の明を持って切り開いた葛西氏の努力に敬意を払いたい。
国鉄から各JRへの資産の切り分けの話が出てくるが、論旨明快な本書の中でその部分だけわかりにくい。
新幹線保有機構が絡んでいたということだけがその理由ではないと思うが、もう少し、しっかり読み込んでみたい。
現在入手困難ですが 国鉄改革の真実―「宮廷革命」と「啓蒙運動」
JR東海の駅構内書店、KIOSKには置いてありました。
焦って古本屋から高値で買わなくてよかった。
しかし古本屋って新刊でも入手困難なものは倍くらいの値段を付けるんですね。
ダフ屋と同じですね。
10/19追記
再販になったようです。
国鉄分割・民営化の貴重な記録 国鉄改革の真実―「宮廷革命」と「啓蒙運動」
労組に翻弄され、経営の自立もないまま崩壊していった国鉄の、経営側から見た貴重な記録で
ある。
まさに絶妙のタイミングで国鉄の担当者、政治家がうまく機能し、分割・民営化の実現へ、実
に幸運に恵まれていたと感じられた。特に当時の中曽根総理の強い意思は大きかったことが理
解できる。国鉄の分割・民営化が決定されてから、法案成立、実際に分割・民営化の昭和62年4
月1日を迎えるまでの軌跡、また、分割・民営化されてからのJR東海の東海道新幹線の新車開
発、高速化、品川新駅設置と、さらなる飛躍まで、一挙に興奮して読めた。
なお、分割・民営化といっても、新幹線と貨物を別会社にしたことを問題視しており、あまり
一般には知られていない、新幹線保有機構の解体についても非常に興味深く読めた。
ただ、用地問題等でJR他社を批判するところが散見されるが、ビッグプロジェクトであった
東海道新幹線の品川新駅について、計画が発表された当時の新聞報道では、JR東日本の用地
を買収するにあたって、JR東海からJR東日本に直接交渉せず、JR東海から運輸省を通じ
て簿価で土地を譲って欲しいとJR東日本に話を持ちかけたためにJR東日本を怒らせたと記
憶している。
JR東日本は、そのやり方こそ「政治の介入」と怒っていたが、その点についての真相はどう
だったか、釈明でも良いから記述が欲しかった。品川新駅は結局、JR東海の当初案より縮小
された形の開業となった。
国鉄からJRへ民営化する過程を詳細に綴った1冊 国鉄改革の真実―「宮廷革命」と「啓蒙運動」
実際に国鉄からJRへの分割民営化改革に関わった当事者が記しているだけあり、民営化に至るまでの国鉄内部の内情や過程が具体的な人名を交えて詳細に書かれています。
また著者による自叙伝的な作品とも言えるかもしれません。
本自体は350ページ近くあり、ハードカバーゆえボリュームはありますが当時の国鉄改革の歴史を知る上で貴重な1冊であると思います。
それにしても、文中の随所に何度も「国労」という言葉が出てきます。
ここに分割民営化の目的が慢性的な赤字体質の脱却と同時に国労対策にあったことは行間から垣間見えますね。
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