山一證券が倒産したのは、私が社会人3年目のことでした。その前後に三洋証券が倒産したり、拓銀や長銀、日債銀の倒産があり、金融ビッグバンにふさわしいとても暗い時期だった気がします。それでも山一證券といえば日本の4大証券で、当時でも石坂浩二を起用してMMFのコマーシャルを頻繁に流していた会社だったので、他の金融機関の破綻以上に強く記憶に残っています。
そして山一倒産で直ぐに思い浮かべるのが野澤社長の涙の会見です。本書ではそれ以前とそれ以降の野澤社長の動向が細密にわたって描かれています。特に山一證券の葬式に位置する最後の株主総会の場面は非常に迫力があります。自主廃業を宣告してから破綻するまでの山一マンの生き様を垣間見ることが出来、非常に面白かったです。
戦後金融史上の一大事件である山一證券の消滅をベテラ ン作家らしい落ち着いた筆致で描いた作品。 元山一證券総務部長などに詳細なインタビューを行なっただけあり、自主廃業が報道された当日の社内の人間模様や最後の株主総会の様子など、リアルな描写が随所にある。経済の実態を知る上で興味深い一作。
関係当事者がエゴや打算をむき出しにする会社消滅への過程の中で、最後の社長野澤をはじめとする山一マンたちの不器用でひたむきな生き方が、一つの救いとして心に残る。