カスタマーレビュー
色彩が踊る 青に候
タイトルに青とあるけど本作は色に満ちあふれています。
青ってのは青臭い、ケツが青い。青っちょろい。
そういう意味なのでしょうが、
この主人公の青色をはじめ
脇役達にも色のテーマがあるように思われます。
朝霧の霞のなかから浮かび上がる色!
主人公の遠縁で幼なじみ、先代藩主の愛妾となる園子の院号が青蓮院。
ヒロインのたえは筒井紅、べんがら色。
主人公が武士を捨てて画家になろうと思っているからか、
とにかく読んでいると鮮やかな色調が目に浮かんできます。
まさに総天然色。フルカラー。鮮やかなコントラスト。
例えば出だし・・・。
朝霧が立ちこめていた。何もかもかすんでいる。さながらいまの佐平の頭も同然。
そのなかから、すこしづつ浮かび上がってこようとしているものがある。永代橋が見えだしたところだ。人が往来しはじめていた。橋を渡る大八車の音が聞こえてきた。
一方左手の芝海岸はまだ霞の中にあった。湊稲成の朱塗りの塀がすこし色づいてきたくらい。それに負けない赤い色があるのは、境内の桜か楓の紅葉だろう。手前の水面で黒い影が浮きつ沈みつしている。つがいの川鵜だった。
最後の最後をバンバンバンッって感じの会話で〆ているのも気持ちいい。
さすがはシミタツ。こういう熟練の技をみせつけられると
オイラもまだまだ青いなぁと思うのです。
昨今の時代劇ブーム、白黒の時代劇もいいですが。
やっぱ鮮やかなカラーがいいよね。
この作品、映像化されないかしらん。
監督はやっぱり山田洋次か?篠原哲雄もいいかも・・・。
枯れた文体といってしまえばそれまでだが 青に候
いまひとつすっきりしない。
なんだか、文体に遠慮が見えてしまったのは私だけだろうか。
いつもの切れ味が無いように思う。
ストーリーもそう。
読み出しは、ひきつけられたのだが、途中かなりにわたって中だるみがした。
最後は強引に力技でまとめたという感じである。
ところどころでシミタツ節が炸裂するのだが、単発的でぐいと引っ張る力がない。
シミタツものとしての期待が大きかったのか。
うーんという感じ。
シミタツを長年読んできたものとして、やっぱり、シミタツは40過ぎの男を主人公にした現代ものの方がはまる気がする。
シミタツももう70才を超え、私たちが彼の作品を読めるのもそう長くないだろう。
最後は、シミタツ節満載の熱い作品を期待したい。
志水辰夫の時代小説に、またしても酔わされた 青に候
神山佐平は播磨の山代家に使える二十二歳の青年侍。国許で家中の者を斬り、江戸表へと舞い戻る。仕える藩は先君とその嫡子が相次いで亡くなり、今は新たな君主のもとで再出発したばかり。しかしこの権力交代劇の裏には何か不穏な動きがあるようで、佐平の身辺にも暗い影がつきまとう…。
志水辰夫が初の時代劇に挑戦したという書き下ろし作品。封建君主社会における政治的権謀術数というミステリーの要素あり、丁々発止のチャンバラ・アクションの要素あり、はたまた身分を越えた男女の秘めたロマンスの要素あり、そして佐平という青きサムライの成長譚の要素ありと、一冊に様々な小説の醍醐味を盛り込んだ、興趣つきることのない物語です。
そしてなんといってもテンポが小気味良く、密度の濃い、シミタツ独特の文体は健在です。350ページに渡って、その文章に酔いしれることができる読書体験を味わいました。選び抜かれたその言葉の数々は、時に国語辞書を片手に読み解く必要があるほど、私の日常からは距離を置くものではありますが、そうした<言葉との逢瀬>は、志水辰夫の小説が与えてくれる愉悦のひとつなのです。
佐平の青さはいつの時代も若さが抱え込んでいる一途さや過信、そして脆さや未熟さを兼ね備えたものです。そしてこの小説が描くような社会の<真実>の前で自らの意志や信念があまりにも非力であることを思い知らされたとき、佐平同様若者たちは茫然自失せざるをえないことでしょう。
それでも佐平は、一旦は自暴自棄に陥りそうになりつつも、わずかに踏みとどまって明日を迎える決意をします。
もちろん物語は彼の決意が実を結ぶかどうかは語ることがなく、この先の佐平に何も約束しません。青年の物語はまだ始まったばかり。幕切れの一行はそのことを読者に伝えるのみです。
しかしこの幕切れに、私は清々しい思いとともに書を閉じることが出来ました。
青いからいい 青に候
侍とはどうあるべきか?
そんなことはどうでもいい。ただ若い男というものは、常に苦悩に満ちているということ。それは現代も江戸時代末期も変わらないということ。
現代ではなく敢て江戸時代末期を舞台にすることで、若い男たちの苦悩、そして政治の腐敗、それが善なのかそれとも悪(必要悪)なのか、ということを柔らかく読者に問いかけている気がする。
「青い」とはどういうことだろうか、と思う。信念・友情・愛をすべて失ったとしても「青い」ということは、きっと美しいということなんだと思った。
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