カスタマーレビュー
攻めない墨者の戦い 墨攻 (新潮文庫)
戦国時代の中国。
非攻を説き、小国が大国に支配されるのをふせぐため
守りの戦いに参加する謎の「墨子」集団がいた。。
史実をふまえつつ描かれる、墨者・革離の戦のお話。
初代の死から時がすぎ、墨者も政治的な考えに染まる中、
はえぬきの墨者であり、戦闘の職人的人物である革離は
たったひとりで援軍として、今まさに墜ちようとしている小国・梁へ向かった。
迫りくる敵は二万の軍勢。
しかし梁の城主たちは自身の欲にふけり、非協力的。
そんな中、革離はひとり奮戦し、民の寄せ集めの軍を指揮する。。
史実を描く書き方と、物語をまぜる「後宮小説」でも見られた著者独特の書き方で
スケールの大きい戦いのお話が描かれています。
きわめて完成度が高く、エンターテイメントとしても面白い作品ですが
革離の作戦は残虐で、怖かったです。
それが戦争というものかもしれませんが。。
墨者という高い理念と、それを実現するための手段の乖離が印象的でした。
暗示的な結末 墨攻 (新潮文庫)
第104回直木賞候補作です。
古代中国の百家争鳴の時代に、墨家という平和主義集団が一大勢力を築いていました。
しかし、墨家はある時突然、歴史の舞台から姿を消します。
本書は、墨家消滅直前の、梁城という小城を舞台にした物語です。
主人公は、革離という腕利きの戦略家。
もちろん墨家の構成員です。
酒見さんは、この革離の視点を通して、「非攻」を説きながらも戦わざるを得ないと言う、墨家の孕んでいた矛盾点を鮮やかに描きつつ、滅亡へ向かう集団の悲哀を行間に漂わせています。
あまりにもあっけ無い結末が、間もなく訪れる墨家の最後を暗示しているようで、とても印象的です。
コミック化、映画化もされていますが、『墨攻』初心者の方には、最も簡潔かつ大胆な本書をお勧めしたいです。
読後に深い余韻に浸れる良書です。
無駄がない 墨攻 (新潮文庫)
短編集のように短いですが、文章は洗練されています。
墨守の語源になった鉄壁の守り。
職人としての防御。
戦闘シーンが中心なので全体に緊張感があります。
当時としては前衛的な一面も持ち
その後の歴史の中に消えていった墨家の思想を
一人の墨人の生き方を通して描いています。
祝!中島敦文学賞受賞 墨攻 (新潮文庫)
実際に墨子や墨家集団について調べると、資料が少ない少ない!よほどの想像力を持っていなければここまではとても書けないだろうなぁ、と。巨子として恐らく最も有名な孟勝ならエピソードもそこそこ摘めるのに敢えて革離という架空の人物を生み出したところに敬服します。
墨子の思想を基にした架空の物語 墨攻 (新潮文庫)
最初に『墨攻』が出版されたのは1991年。翌1992年には中島敦記念賞を受賞し、1994年に文庫になっています。
今回は、この文庫版を読んでみました。
内容は、中国の戦国時代を舞台にした、戦争物語。
主人公の革離は墨子の教えを伝える墨子教団の幹部です。
この物語を理解するには墨子の思想理解が必要ですが、酒見氏の小説では、物語の流れを止めずに墨子について説明していて、とても読みやすく理解しやすい構成になっています。研ぎ澄ましたような文章表現と共に、プロの仕事を感じさせる仕上がりでした。
私は物語の流れを止めずにうまく説明できないので、先に墨子の思想について本書で得た知識を先に説明します。
墨子は「非攻(攻めない)」ことを思想の中心にしており、博愛主義者であり奉仕者でもありました。その思想を貫くためには相手からの侵略に徹底抗戦する必要があり、墨子教団は、防御戦を得意とする戦闘集団という側面も持っていたといいます。
ある時、梁という国の小さな城が大国趙に攻められそうになり、墨子教団に助けを求めにきます。墨子教団の責任者は、自分に次ぐナンバー2の幹部である革離を一人で派遣しました。
たった一人で現れた革離に対し、梁城の城主や重臣は「あなた一人で敵を防ぎきれるのか」と疑惑の目を向けますが、城内の全権を把握した隔離は着々と防衛体制を固めていきます。
いざ、趙の大軍がやってきて城を責め立てます。
緒戦では華々しく敵を撃退した梁城軍でしたが……。
ページ数は少ないですが、満足できる一冊でした。
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