カスタマーレビュー
前評判とは裏腹に。。。 敦煌 (新潮文庫)
非常に面白く食い入るように読み終えることができた。
本書を手にする前に、実はDVDで実写を通して見ていたが、映像を通しての戦闘シーンの迫力などは本書ではもちろん伝わってこないが、井上靖という著名な作家の作品だけあって表現力は流石と言わせられる出来となっている。
時代背景、登場人物など物語の舞台となる事象をよく調べてあると思う。
そして、透明感のある語りと実に上手く表現されていると思った。
実写版は映像からの情報があるが、端折っている部分が多く書籍を通しての方が詳細によりよく理解することができると思う。
連想ゲーム、京大といえば井上靖 敦煌 (新潮文庫)
井上先生は数多くの名著を残された。私が作家に「先生」と条件反射でつけてしまうのは、この方だけである。中でもこの「敦煌」は、ほとんど資料ゼロの地点から出発して書かれたもので、文章も独特の透明感が十分発揮されていて、どなたかが書いておられるように最高傑作である。
私は司馬遼太郎作品もかなり好きであるが、残念ながら井上先生と比べるには器が小さい。たしか司馬氏と一緒に西域を訪問されているが、そのときの感想が「これ以上来たらバチが当たる」。なんと謙虚なことだろう。
余談だが、私が京都大学出身者として初めて意識したのは、この方だった。生きていらしたら、現在もてはやされている京大出身者の著作をどうご覧になるだろう。きっと大笑いして読まれるだろうと思う。
文字と存在 敦煌 (新潮文庫)
敦煌から約25km,鳴沙山の斜面に莫高窟はある。
1900年,長く埋もれてきたこの遺跡から夥しい数の文献が発見された。
やがて本格的な研究が進んでゆくに従い、それが世紀の大発見であることが判明してゆく。
貴重な経典の数々が含まれていたことはもとより、それを記す文字にも多彩なものが含まれていた。
西夏文字もその中の一つだった。
本作は11世紀初頭の西域を舞台として描かれた歴史小説。
史上の人物である李元昊や曹兄弟などは脇役であり、趙行徳・朱王礼・尉遅光など架空の人物が縦横に動かされ、
それぞれの個性が絡みあってダイナミックな物語が展開してゆく。
大きなモチーフに「文字」があると感じた。文字は人間の歴史を語り、後世に伝えて行くものである。
西域には雑多な民族が勃興しては滅んで行ったが、文字による記録を残したのはそのうちの僅かに過ぎない。
それを残さなかった者たちは何も語らず、ただ遺跡と人々の記憶が僅かに彼らを呼び返すのみである。
新興の西夏は「西夏文字」を生み出した。行徳はその文字を学ぶために西域を目指した。
朱王礼は自らの戦いの歴史を刻むために、行徳に碑を建てることを命じた。
彼らはそれぞれ後世まで自らの生を「文字」で伝えたかったに違いない。
一方ウイグルの女は、何も語ることなく城壁から身を投げ消えてゆく。
彼女の面影はただ行徳や王礼の記憶の中にあり、それぞれの中で別々の姿を残してゆく。
行徳は仏教に傾倒し、王礼は深く復讐の思いを秘める。
彼女の本当の思いがどこにあったのか、それは謎のままに。
記録と記憶の狭間で、人々は存在の本質を問う。
それは一人ウイグルの女に言えることだけでなく、歴史の営みそのものにも当てはまる。
多くの歴史が交錯した西域は、それを最も雄弁に物語る舞台と言っていい。
時代と舞台、そして人物。この敦煌は、それらが融合して織り成す壮大な詩である。
騙されました 敦煌 (新潮文庫)
私は敦煌については古くてでっかい遺跡のある町という漠然としたイメージしかなく、とにかく知識のない状態でこの小説を読みはじめました。あっという間に物語に引き込まれました。なんというか流れるように語られ、まるで透明人間としてその歴史の瞬間を今見ているような錯覚に陥ります。登場人物の特に主人公のあの静かでしかし激しく熱い情熱はいったい何なんだろう。自分はいつ死んでも構わないと思いながら最後にできることを冷静に判断してそれに向けて動く行動力。今こう書きながら思い出してもぐっと来ます。そして私の衝撃は、敦煌の存在は真実でもこの物語がまったくの創作であるということです。あとがきで創作だと知った後も、いやこれはかなり本当だったかもと疑ってしまうほど、それほど夢中に物語にのめりこんでしまいました。事実膨大な量の仏典が敦煌遺跡に守り続けられたということに大きなロマンがあるのだと井上靖は私に教えてくれました。この本に出会えてよかった!!みんなもそう思うはずです。私がこんなにお勧めしなくてもかなりの人がそれに気付いていたかと思うと少し反省です。
西域での興亡を通して 敦煌 (新潮文庫)
この小説は主人公趙行徳、隊長の朱王礼、友人(?)尉遅光による物語になっていて、史実に基づいて書かれた歴史小説の範疇に入るものです。かなり前に書かれたものですが、森鴎外や幸田露伴のような古めかしいスタイルの文ではないため読みやすいです。正直飲み会で話して盛り上がる起承転結があるわけではないですが、西域の美しさ、そこで生きる人々の内面からあふれる魅力、また時に悲しいことがあろうと常に今を生きる行徳らによって作品はとても荘厳になされています。司馬遼太郎が嫌いな人はこういったものはどうですか?
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