カスタマーレビュー
ユング心理学と仏教の親和性 明恵 夢を生きる (講談社プラスアルファ文庫)
ユング心理学の河合隼雄氏が、鎌倉時代の名僧、明恵上人をとりあげ心理学的見地から仏教の奥深さを語っています。
「夢見の技法」は、チベット密教では非常に重要視されていますが、日本華厳宗の僧侶である明恵が、こんなにも「夢」に重点を置いた仏道修行をしていたということは注目すべきだと思いました。 本書は明恵の夢の解釈の奥深さをつぶさに分析していき、また、華厳思想の考察もあり、大変おもしろくよめました。
そして本書は明恵だけでなく、法然や親鸞といった革新的な浄土思想の師にも触れてました。とくに著者による親鸞の、明恵とは別方向からの「悟り」への道筋の分析や、明恵は意識上での非難とは裏腹に無意識下では法然や浄土思想を評価していたのではという指摘は興味深かったです。
著者の、なみなみならぬ明恵および当時の仏教への関心と理解の深さを感じました。
「仏教界の堕落」「日本の仏教は死んだ」と言われる事がありますが、過去の仏教の歴史に触れると、今も昔も変わらないんだな、と思います。既成宗派が組織化して教条主義や形骸化が起こるのは、チベットでもタイでもインド初期の仏教でも多かれ少なかれあったりいわれたりしたことのようです。
しかし、そうしたただ中からこうした人物が出てくることも事実であり、仏教自体が現在まで脈々と流れているということを考えれば、簡単に幻滅する事はないと思います。
人間というものが変わらない以上、積極的にこうした人物から学んでいきたいと思わされました。 人間の精神の可能性や、仏教のもつ普遍性について、多くを学べる本だと思います。
夢にここまでこだわってきた人々が中世以前にもおったとは 明恵 夢を生きる (講談社プラスアルファ文庫)
明恵(みょうえ)は、平安〜鎌倉時代の名僧である。主に、京都や紀州に居を構えていた
鎌倉仏教と称される新興の法然や親鸞と対置され、旧仏教側の有力者とされる。
仏教史の上からは新興勢力ほどのに重きをおかれることはないが、鎌倉幕府の「法令」であり、後の社会にも影響を与えたとされる「貞永式目」の制定に大きな影響を与えたといわれている。
そしてなによりも、生涯にわたり自身の夢の記録をつけ、「夢記」として残したことが、臨床心理学者であり、夢分析の大家である河合氏と明恵を結びつけた。
河合氏は本書の中で、明恵の夢を実証的に分析することを通じ、その時代の日本社会を、明恵自身を、夢分析ということを、ユング心理学というものを我々に知らしめてくれる。
古文が頻繁に引用され、決して読みやすい本ではないが、それだけに労作であろうことが窺える。
僕自身、夢に関する問題意識というモノがこれまでほとんどなかったのだが、「夢」なんてものにここまでこだわってきた人々が現代社会のみならず中世以前にもおったとは・・・。
我が不明を恥ずる次第です。■
河合隼雄のもう一人の師 明恵 明恵 夢を生きる (講談社プラスアルファ文庫)
河合隼雄氏は師と仰ぐ人をユングのみならず、もう一人、明恵をあげている。
明恵の記した夢の日記は膨大であり、長年にわたり、これほど夢に関心を持ち続けたのは
世界でも、明恵しかいないのではないかといっている。河合氏はそこに惹かれるという。
明恵は禅定を専念し続けた。禅定によって不可思議なことが起きても、それにとらわれたり、
過大視することはなく、合理的精神を持っていたという。現代においてではなく、中世の
時代においてであるから、なおさら、その姿勢に驚く。明恵は夢に対しても同じ姿勢をとる。
夢を現実と同じように大事にしながらも、現実とは区別する。そのバランス感覚が優れている
という。
明恵は山中に引きこもって、禅定修行にひたすら専念することを希望したが、人々の求めに
応じて、説法教化に勤めた。
河合氏は、仏教を本当に理解するためには、禅定修行が必要であろうといっている。
仏教学者の玉城康四郎の著書を参照している。
おそらく、明恵も禅定によって、玉城康四郎のいうダンマの顕現を体験していたであろう。
河合氏は本書において、そうは述べていないが、そのように思っていたのではないだろうか。
ダンマに専念することは、他の仏道者にも共通するものである。仏道の本来の学であるから、
そうすることは当然である。明恵もそれに従っているが、明恵の特徴として、長年にわたり、
夢に注目し続け、日記を記したことであろう。他の仏道者にはない特徴である。
河合氏はそこに注目する。
仏教とユング心理学との関係を知る上で、明恵の事例は学ぶべき点が多くあるのかもしれない。
河合氏はユング心理学と仏教との関係について、『ユング心理学と仏教』において
述べているので、関心のある方はそちらも読むことをおすすめする。
あるべきようわ 明恵 夢を生きる (講談社プラスアルファ文庫)
明恵上人は鎌倉時代の高僧で、鳥獣戯画で知られる高山寺において華厳宗中興の祖といわれている。彼が19歳〜60歳まで記された夢記といわれる夢の記録を通して、彼の内的な成長過程を分析を通してユング心理学の夢の理論が述べられている。夢記の驚くべきは、人類最初というべき長期間にわたる夢の記録であると共に、夢を一定の解釈の仕方に当てはめて記されているのではなく、1つ1つの夢を大切にし、合理的に分析されていることである。著者はここに着目し、まさしく彼が夢を生きたのだということを記している。明恵が臨終を迎える際の描写は荘厳である。人は夢を見る。この事実をそのまま受け入れ、夢をも生き切るこの姿勢は、人としてあるべきようわを問い続けた明恵そのものであることが述べられている。
夢ありきの生活 明恵 夢を生きる (講談社プラスアルファ文庫)
鎌倉時代の僧、明恵が残した「夢記」という書物を中心に、夢全般に対して心理学的アプローチを行っている。 夢は、その人の精神状態と切っても切れない関係にある、と言われる。 一番気に入ったエピソードは、マレー半島に住むセノイ族の話だ。 彼らは生活の中に見事に夢分析を組み込んでおり、タイトル通り「夢を生きる」ような生活を行うことで、部族の秩序を守ってきたのだそうだ。 明恵の夢記の解説にあたって、少々難しい仏教の概念が取り扱われるが、本のおもしろさはそれを補って余りある。
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