カスタマーレビュー
書評の賛否は分かれるはず。 コトの本質
著書への評価は明確に2つに分かれる筈。
これからこの本を読むあなたが、もし科学的な関心を持ち、特に地球がどのようにして作られたのかという過程に興味があるのであれば、本書はあなたにとって財産になるでしょう。本書ではその形成過程をわかり易く丁寧に解説しつつ内容が終始展開していきます。特に第2章に書かれている、科学雑誌『ネイチャー』に掲載された研究論文の内容や、そのアイデアの発想に至るまでの苦心を綴ったくだりは、一般読者・研究者を問わず面白く読める部分だと思います。
反面、哲学に関心を寄せる者がこの本を手にすることは、私はお勧めしません。著者自身「私は人が嫌い」と告白している通り、本書では自分がどういうタイプの人間が嫌いなのか、また東大の助手時代に味わった「助手」というキャリアに対するコンプレックスなど「コトの本質」とは関連性がない内容が、多少のひがみを含ませた文体で書かれています。
ただ、著者の主張に対して賛否分かれるとしても、読後には強い余韻が残る点では価値ある一冊であるといえます。
孤高の人 コトの本質
前書きにも書かれているが、これは松井先生にインタビューをしたものをまとめたものである。
そしてこの本をまとめる苦労もそこに描かれている。インタビュアーが松井先生の回答を理解できない。まとめられない・・それは一重に松井先生の住んでいる世界と、一般人の生きている世界に大きな隔たりがあるのからではないか?
松井先生はあらゆる意味でまさしくプロの研究者である。
この本を読んで、プロの学者というのはどういうものか学ぶことができた。他の松井先生の本は難しすぎて理解できないものが多いがこの本だったら、いかにして考えていくか、という事を考えながら学ぶことができると感じた。
大変有益な本、研究するうえでも生きていくうえでも! コトの本質
「コトの本質」という面白そうなタイトルに惹かれて購入した。内容がかなり充実した印象をうけ、読んではまた同じ箇所を読み直すという状態が続き、本書読了には思った以上に時間がかかった。「数値計算よりもアイデアが重要」、「地球学的人間論の構築」、「地球温暖化の抜本的な取り組みのためには地球庁ないしは地球省が必要」、「バックグラウンドを豊かにする無駄の重要性」、そして「問題それ自体をつくる能力が問われていること(そのための教育あり方)」や「一言で表現する能力の育成」など、本書にはいま列挙したものはとどまらない数々の示唆に富む発言が随所に散りばめられている。自然科学を専攻する大学生や院生が読むことはもちろん、それ以外の「生きるとは何か」、「人間とは何か」を考えている人たちにも実に有益な考えが展開されており、本当に興味が尽きなかった。読んでいて思わず「圧倒される」と感じた箇所も少なくなかった。著者である松井先生は世界的に著名な地球物理学者のようだが、彼の専門分野の本を読むよりはこうした類いの本のほうが社会科学の研究をしている私にはとりわけ意味があった。「こういう問題を解けば博士論文、これなら修士論文と、あるいはそれにつながるアイデアを紹介し、何十となく問題をつくるのが我々の仕事なのです」(180頁)、「わかるということは、逆にいえば、わからないことが何なのか、ということがわかることなのです」(185頁)という先生の哲学(?)も大いに参考になる。研究や生きることに少し疲れたときには、また本書に立ち戻ってポジティブな思考を思い返そうかと考えている。正直、自然科学の専門的な話が綴られた部分はほとんど理解できなかったが(当然かもしれないが)、本書に出会ったことそれ自体にある種の幸福感を覚えたのは事実だ。手元に置きながら、また日々の作業に向かっていきたい。本書を是非とも多くの方に推奨したい。
松井先生が自叙伝タッチで「ヒラメキの本質」について語る コトの本質
『人の一生は「問いのレベル」に応じて決まる』(※)と言われます。「問いのレベル」が上がると、自然に「答えのレベル」が上がる訳です。そして「わかること」と「わからないこと」の境目を見極めるべく自問自答と試行錯誤を重ねて「考え抜く習慣」を継続することで、ある日「ヒラメキ」がやってくる。そんな「ヒラメキの本質」について、松井先生が御自身の御体験を基に語っています。「地球(だけ)になぜ現在のような海が存在するのか?」という問いを発して以来、約20年も考え抜いた末にある日ふとアイディアがひらめき、そして一気に視界が開けたというご経験を語っている下りは読み応えアリです。「分かることを急いでいたら、研究者になんかならん方が良い。すぐにはワカランことを考えて、そのうち何とかするのが、研究というものなのだから」(森毅)、研究者にはそのような(地肩ならぬ)【地頭】の強さが求められている訳です。研究者的態度の涵養のために、研究者の卵にお薦めしたい本です。(「若きエンジニアへの手紙」(菊池誠)、「科学者という仕事」(酒井邦嘉)、「生きること学ぶこと」(広中平祐:"知恵の広さ・深さ・強さ")等もお薦め。「素人のように考え、玄人として実行する」(金出武雄)、「決断力」(羽生善治)にも通じるモノもあります。(※)は「答えが見つかるまで考え抜く技術」(表三郎)の名言) 総じて言えば「習慣が人を作る」(日野原重明)わけです。
内容は(理解できれば)抜群に面白いのですが、インタビュアーが松井先生のメッセージを本の形としてうまくまとめきれていません。松井先生の著作/研究について頭が真っ新な読者が最初から順に読んで分かるような構成ではないです。「二元論」「要素還元主義」そして「システム」「人間圏」というキーワードは、それらの初出の処で適宜説明が加えられるべきです。(後の方を読むと「あぁ、そういう意味だったのか」と分かりますが、少し忍耐が要ります) 巻末に語彙リストを付けたり、脚注を付けるなどすればもっと読みやすい本になったはずで、その点が残念(★1つ減)。
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