本書は、"Molecular and CellularApproach"とあるように、分子生物・細胞生物学的視点から従来の生理学を再構築しようとした、野心的な生理学書である。英語はやや馴染みのない単語があるが、読みにくくなるほどではない。何より全ページカラーの鮮やかな図には驚かされる。分子生理・細胞生理は現在のトレンドであり、医学部の生理学の授業でもどんどん取り上げられている。本書はそういった場面で力を発揮するだろう。
ただ、教科書としての総合力という点ではいささか疑問符がつく。分子・細胞生理からのアプローチに固執しているあまり、それらのアプローチが十分成功しているとは言い難い個体レベル、統合レベルの記述があっさりしすぎている。しかも残念ながらこの部分にはミスや誤りも散見する。その結果全体のバランスが崩れてしまっていて、安心して薦めるにはやや不安がある。逆に言えば、分子生理の現状と限界を知る上で大いに参考になると言える。
本書はまだ初版が出たばかりであるから、決定的な評価を下すのはまだ早いように思う。思えば"The Cell"の初版も最新論文のアブストラクトをつなけだだけの中途半端な出来であったが、2版、3版と熟成を重ね、最新の4版では文句なしの立派な教科書となった。本書もそのアプローチは高く評価したいが、私の感覚では出るのが15年くらい早いような気がする。今後の改訂に大いに期待したいが、現時点での評価は星3つにとどめておきたい。
Guytonの出版元で有名なSaunders社が昨年初めて出版した医学生理学のテキストです。成書というだけあって、非常にボリュームがありますが、全編フルカラーで文章も平易で読みやすい構成になっています。
Subtitleに"A Cellular and Molecular Approach"とあるように、細胞生物学・分子生物学の視点に立った生理現象の記述がなされていて、up-to-dateと思われる詳しい記述もあります。章立ては比較的細かくなされているため、気になる部分は通読し、それ以外の部分は必要に応じて、リファレンスとして使うこともできるようです。
生理学は専門課程の講義の中ではかなり初めの方で行われるため、いきなり洋書というのはかなり苦しいかと思います。ただ、日本語で読みやすいテキストを1冊持っておいて、外観をつかんでおいてから開いてみると、かなり理解しやすくなっているのではと思います。
本格的に生理を学びたい人にもたえうる、新たなスタンダードになれるだけのポテンシャルを秘めたテキストだと思います。
なお、神経生理についての記述もありますが、分子細胞レベルの記述がほとんどで、現象論的なものや、統合機能レベルの話があまりありません。神経生理もきちんとやりたいという方は、Neuroscienceの本を持っておくといいかと思います(私は生理学の先生の勧めで、From Neuron to Brainを使っています)。