エディターレビュー
これまで謎だと思っていたものが、意外にも最新の研究によって解明されていることに驚かされる場合が多い。記憶と脳に関する謎を、進化生物学や心理学がどこまで明らかにしたかをまとめた本書は、そんな意外な驚きに満ちている。 解明されているのは、「物忘れ」「不注意」「妨害」「混乱」「暗示」「書き換え」「つきまとい」の「記憶の7つのエラー」。いずれも、ふだん誰もが感じているような記憶にまつわる謎にスポットが当てられている。 たとえば、人の名前を思い出せないといった「物忘れ」では、そのメカニズムに加えて、記憶力と時間の経過、加齢の関係、「情報のコード化」という物忘れを防ぐテクニックなどが解説され、また、約束を忘れたり車の運転中にしばし記憶がとんだりする「不注意」は、心理学の新領域から解明されている。なかでも苦しめられることの多い、嫌な記憶が忘れられない「つきまとい」では、「トラウマは忘れられるか」という興味深い視点が盛り込まれている。 随所に引用されるエピソードもおもしろい。実は物忘れがひどい全米記憶チャンピオン、事故で大脳の一部を損傷し「固有名詞失語症」になった男性、リーグ優勝をかけた試合で失投した記憶がつきまとい自殺した投手などの事例は、それこそ記憶に残るものだ。 最後に著者は「7つのエラー」について、「脳というシステムがもつ欠陥ではなく、むしろ優れた適応性なのではないだろうか」という論を展開している。記憶と脳の謎を通して、人間の深遠に迫る筆致が想像力をかきたててくれる。(棚上 勉)
カスタマーレビュー
思い込みについて謙虚にしてくれる本 The Seven Sins of Memory: How the Mind Forgets and Remembers
記憶に生じる誤りを7つの種類に分け、それぞれについて平易な解説が試みられている。脳の働きについての専門知識が無くても楽しく読めるし、分量も程良い。もうちょっと訳に工夫が欲しいという箇所が幾つか有るが、語り口は概ねテンポが良く、色々な実験結果を紹介しながら展開するので、『特命リサーチ200X』でも見ているかのよう。日本向けを狙ったかのかどうか知らないが、冒頭川端康成の小説の一シーンが紹介されるのも引き込まれる。とにかく読んでみて記憶というものが実は如何にいい加減なものかよく解った。暗示を使えば、現実とは違った記憶を比較的簡単に作り出せるというのは考えると空恐ろしくなる。今後個人的には出来るだけ記録を残して、自分で間違いないと思っている記憶についても時には!謙虚になるべきなのかとも思った。
人間の「記憶」はおもしろい The Seven Sins of Memory: How the Mind Forgets and Remembers
記憶の研究というのは大変に興味深いものだ。自分自身の体験と比べながら考えることが出来るのも、そのおもしろさの一因だろう。本書は広範囲にわたる研究成果を、日常生活と関連付けながら概観でき、翻訳も読みやすい。一般の社会人や大学生の教養書として良書であることは間違いない。 専門の研究者には物足りないだろうが、それでも一読をお勧めする。専門家はとかく視野が狭くなりがちだからだ。 ただ、本文中には指示がないので、読み終えたところで「原注」があるのに気が付く読者も少なくないだろう。
英語版と日本語版の表面的な比較 The Seven Sins of Memory: How the Mind Forgets and Remembers
私は日本語版と英語版を読み比べてみました. そこで気づいた表面的なことをレビューします. ?エッセイ調の軽妙な文体なので飽きずに楽しく読めます. 科学論文の文体ではありません. ただ,逆にそのエッセイ調の文体(ちょっとしたレトリックなど)につまずいたということもありました.(もちろん読めないほどではありません). ?文章中には実験や過去の出来事なんかが多数紹介されていますが,日本語版にはその出典がかかれていません. 英語版では巻末に出典がのっています(文章中での,Schacter,D.L.(1999)というような表記はありませんよ)
読まないと気になる本。 The Seven Sins of Memory: How the Mind Forgets and Remembers
本書は、世界的に有名な記憶研究家である、シャクター博士の英語で書かれた単行本を訳したものである。原著名は、“THE SEVEN SINS OF MEMORY:How the Mind Forgets and Remembers”で、日本語題名は翻訳者が日本人の文化的背景を考えてつけたものであろう。川端康成の小説が導入部分として使われており、日本人としては、読み始めから本書に愛着が湧くように思う。一般の人にもわかりやすく書かれており、一般の人が持っている記憶に対する考え(素人理論)をより専門的な観点から見直させてくれること請け合いである。記憶の良い面悪い面を整理して、より適応的に記憶を使用していきたいものです。
記憶についての7つの性質を解説した本 The Seven Sins of Memory: How the Mind Forgets and Remembers
この本は、私たちの記憶の性質を7つに分類して、わかりやすく解説してあります。記憶を研究している専門家から一般読者まで、幅広い層をターゲットにしていると思います。和訳本は、“なぜ、「あれ」が思い出せなくなるのか”という題名ですでに出版されています。原著の英文と日本語訳を比較しながら読んでみるのも一興かもしれません。原著の作者は、知る人ぞ知る、記憶研究の大家で、最近は、潜在記憶や虚偽の記憶等の研究論文をよく発表しています。この本を読めば、記憶の性質がより理解できることはもちろん、日常の記憶のなぜに解答をあたえてくれるかもしれません。それから、これは余談ですが、この本の冒頭に川端康成の小説が使われているのにはビックリしました。そういえば、著者のシャクターは、他の本にも東洋の昔話を導入として使っていたことを思い出しました。
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